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鯛襲来し子の未来開闢す

 子どもが産まれて100日になるタイミングで、以降の食の多幸を祝う「お食い初め」という儀式をおこなうものらしい。
 ということを、最近知って、きょうそれを執り行った。

 近所の産婦人科の向かいの鮮魚店で、奥さんがあらかじめ祝い鯛を予約していたのだけど、鯛をまるごと買ったのは初めてだ。
 鮮魚店に取りに行った奥さんが持って帰ってきた、大きな袋をのぞき込めば、すっかり焼き上がって湯気すらたちそうなふっくらとした赤い魚鱗ボディ。ヒレに残るかたまりの塩が化粧めいて、プロが手をかけて仕上げた祝祭の贄ということが際立つ。
 それまで鯛に思い入れはなかったけど、これはテンションあがる。祝い鯛スゲー。
 あとは、これも奥さんが前日から用意してた、紅白なます、筑前煮、強い歯祈願の石がわりのたこ、赤飯をそろえて、いざ執行。
 奥さんのひざのうえにちょこんと座った娘のくちもとに、規定の手順で箸をもっていく。

 娘は終始ぽかんとしていたが、我々はめちゃめちゃ楽しかった。
 こういう古くからある形式的な儀式がこんなに楽しいとは。
 こう、色とりどりの食べ物の前に座った娘や、箸をくちもとにもっていく手順をトリガーに、この先いっしょに食卓を囲んでおいしい時間を過ごす未来が脳裡に広がり、むちゃくちゃわくわくした。
 娘はまだ知らないかも知れないが、この世界は食でまわっているといっても過言では無いのだ。人と自然と歴史と技術とアイデアが産み出したもうた無辺の愉悦を、これから知ることになるなんて。うらやましいと同時に、娘といっしょに無垢なおいしい感情を体験しなおせる喜びも感じる。
 これからいっしょに、いろんなものいっぱい食べようね。

 儀式のあとは、夫婦で鯛をついばみました。これってフツウ、親類も呼んで、皆で一気に食べるもんなのかな。それくらいデカイ。鯛。
 ステイせよとの施策が招いたのは、しばらく続く我が家の鯛三昧だった。

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うそめがね
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