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ナルキッソス

平野啓一郎著「ある男」の中に、ナルキッソスの話が出てくるんです。
厳密にいうと、「変身物語」の中のナルキッソスの話で、
今回はじめて知ったことがありました。

ナルキッソスというと、世間一般でもナルシストの語源となったギリシャ神話として知られていますよね。

ナルキッソスは、母親である妖精が、河神に河の流れの中で乱暴されてできた子なんだそうです。

そして、なんとなく今までイメージしていたのは、ナルキッソスが長い間ずっと泉に映る自分の姿を見て恋をしている情景なんですが、
この話の中では、復讐の女神に呪いをかけられて、
「ある日泉を訪れて水面に映った美しい少年に恋をしてしまった」
のだそうです。
それまでは、誰も愛さなかったし、自分というものも知らなかったのですね。

う~ん、なんだか、孤独で、愛に飢えていて、自分のことも実はよくわかっていなかった、とても寂しい少年の姿を思い浮かべました。

ナルシストっていうと、とても自己中ないやなイメージしかないんですが
ナルキッソスは大きな苦悩がある人なんじゃないかとか、考えてしまいました。

自分の出自って誰にとっても大事ですよね。

母親が父親に犯されてできた子だというのは
何かしら人生に影響を及ぼすのではないか。
自分の生そのものを、なかなか受け止められないのではないか。

自分を愛し、他人を愛することは、とても崇高なのだと
あらためて思います。


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