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「未来」湊かなえ~自分の中の汚いものが炙り出される ネタバレあり

イヤミスの女王と呼ばれる湊かなえの小説。

よくもこれだけ酷い人、酷い出来事が次々出てくるもんだと、
ズドンと重い気持ちになる。

しかし、本当に怖いのは読み進むうちに、
自分の中の汚いものが炙り出されること。

一見人の良さそうな登場人物には、実は裏の顔があるんじゃないか、

主人公はさらに辛い経験をするんじゃないか、

それを無意識に期待している自分にゾッとする。

あらすじ

機能不全家族 児童虐待 性的虐待 売春 
DV、、、
少女章子の身近に起こる様々な苦難。

章子、友達、先生、父親、
4人の目線で語られる。

私が1番おもしろいと思ったのは
章子の小学校の担任 篠宮真唯子のエピソード。


篠宮も章子同様複雑な家庭環境で育った。
苦労して育ててくれた祖母の遺産を、
実の母親に巻き上げられ、
学費を稼ぐために、
よく知らずにAVまがいのバイトをし、
それが後々保護者にバレて退職。

ひどい話じゃないですか。

教師になる前のバイトが元で退職になるなんて。

この本の中で、
モンペ(モンスターペアレント)エピソードが
ちょくちょく出てくるんですけど、
親ってほんと面倒くさい生き物です。

子どもの教育に悪い、こどもがかわいそう、
子供の為を思って

そういう言葉を振りかざして
とんでもない正義を通してしまう。

そう言われたら反論できない。

私だって、誰だって、親はモンペになってしまう可能性がある。
伝家の宝刀を抜いてしまう可能性がある。

逆にモンペになりたくないからと
言うべきことが言えなくなることもある。

ひどいエピソードばかりの、
この小説にもちゃんと救いはあります。 

捨てる神あれば拾う神あり

しかも拾ってくれるのは、家族ではなく血の繋がりのない他人なんですよね。

私はまったく追い詰められてなどいなかった。
誰かにひと言相談すればよかっただけ。
自分で自分を追い詰めただけ。
何なんだ。何なんだ。何なんだ。
p365

章子の母親も父親も、子どもの頃の自分の窮状を誰かに相談できていれば、

先入観なく話しを聞いてくれる大人がいれば、

悲劇は起きなかったのではないか。

彼らの親がほんの少し勇気を持って誰かに相談できていたら

先入観なく人を見る目を持っていたら

子どもの変化を見抜く目を持っていたら

と思わずにはいられなかった。

ラストで章子と友達の亜里沙は

「助けを求めよう。世の中にはちゃんと話を聞いてくれるおとながいるんでしょ?」
「叫ぼう。大きな声で。」

そう言って立ち上がる。

章子たちがその後どうなったのかはわからないけど
少しだけ希望を見た気がします。

篠宮が恋人と観た映画が

『グッド・ウィル・ハンティング』

マット・デイモン、ロビン・ウィリアムズ出演の名作映画。


篠宮や章子たちの未来を象徴するような作品。

また観たくなりました。


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