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関東大震災からの立ち直り

 いずれ来るといわれる南海トラフ地震ですが、被害想定は示されているものの、具体的な対策は津波避難タワーとか、一般的な防災訓練、防災対策であって、日常生活が基盤が崩壊し、その環境下でどのように暮らしを維持していくのか、そこからどういった過程を経て、文化的な生活を取り戻し、最低限のインフラを復旧させ、まちを再生させるかといった道筋は、まったく見通せていません。

 先日の能登半島地震は、周辺からの交通アクセスの悪い半島先端が被災したことで、救助や復旧に時間がかかっているという事情はあるものの、人口はそれほど多くなく、地域コミュニティも比較的維持されていた地域であったことで、相互扶助が機能しつつ、支援の拡充に伴い、状況が徐々にですが改善しつつあります。

 支援の拡充と、それ以上に大事な息の長い支援の継続については、支援する側の人的、物的なストックが被災地に比べて十分に大きいことが前提であり、また、災害に伴う廃棄物の保管場所などの用地も確保可能であることも、今後の早期の復旧には欠かせないように思います。
 
 南海トラフ地震、さらには、三地震連動や富士山噴火といったところまで引き起こされると、三大都市圏が壊滅的な被害を受けることになります。
 大都市の場合、大規模停電になれば、高層マンションのエレベーターは停電で機能せず、下水道が破損すると、トイレもできなくなってしまいます。

 過去の震災や、今回の能登の地震でも、最大の悩みはトイレのようです。避難所のトイレは絶対数が不足しているうえに水洗できないため、毎日トイレ掃除しても、水洗とウォシュレットに慣れた人からすると、ひどい状態のトイレであり、使う側もそうしたトイレを使うことにためらい、回数を減らしたり、避難所のトイレを使いたくないために、わざわざ自宅に戻って携帯トイレで済ませたり、自宅で用を足して庭に埋めたりという人も少なくないようです。

 食べ物や水は、普段から使うものなので意識しなくてもストックはありますし、比較的早い段階で支援物資を手にすることはできますが、携帯トイレは災害を意識して購入しないと手元にありませんし、トイレの頻度は馬鹿にならず、家族4人とかだと1週間分でも相当な量になります。
 
 こうした携帯トイレの準備のない人たちが多数の高層マンションに住んでいて、もし震災によりインフラが使えなくなった場合、埋めるような庭もなく、最悪の場合、ベランダに垂れ流すとか、低層階の迷惑を顧みずに無理やりトイレを使うという地獄絵図になりかねません。

 また、当然、救援活動や支援物資の搬入、復旧工事には瓦礫や廃棄物の撤去により、最低限、道路を確保する必要がありますが、土地が十分にない都心部の場合、公園ぐらいしか廃棄物の保管場所はなく、一方で避難所を確保する必要もあるため、地方とは比較にならない密集地域で、大量に発生した廃棄物について、まずは遠くに運び出さないとはじまらないということになりかねません。

 そもそも、これまでに比べ、何百倍、何千倍といった数の被災者を、支援する体制を国内で組むのは不可能に近いような気がします。

 こう考えると、南海トラフ地震については、しばらく公的支援はないものという前提で、自衛の策を確保していく必要があり、また、都心部に住むことは、災害時に孤島状態になり、地獄絵図から逃れようがないということも、覚悟しなければならないように思います。

 ある意味、国の中枢が大打撃を受けた震災は、明治以降は関東大震災ぐらいしかなく、今一度、関東大震災について、単なる歴史上の知識としてだけでなく、どのように復旧・復興したかについて、理解し、それを現在に引き直して、ロングスパンでの復旧・復興において、自分がどこにあるべきかを、個々人が考えておく時期に来ているのではないでしょうか。


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