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【宮崎玲奈・ムニ 連載1回目】ポストコロナ・現代演劇を巡る新潮流vol.3 宮崎玲奈(ムニ・青年団演出部)インタビュー(1)

次世代の演劇作家を取り上げ、紹介する連載「ポストコロナ・現代演劇を巡る新潮流」の第3弾として宮崎玲奈(ムニ・青年団演出部)を取り上げる。宮崎玲奈は青年団演出部所属の劇作家・演出家。初めてその作品を見たのはコロナ禍直前の2020年1月に観劇した青年団若手自主企画vol.81 宮﨑企画「つかの間の道」=写真上=だったが、同棲中の若いカップル間に時折流れる微妙な隙間風を細密画のように描写した場面が秀逸で、劇評に思わず「青年団演出部にまたアンファンテリブル(恐るべき子供たち)が現れた」と書いた注目の新鋭だ。今年11月には前編だけで上演時間4時間半という長編演劇 ムニ「ことばにない 前編」で話題を呼び、いまもっとも旬な演劇界のネクストジェネレーションとしての地位を不動のものとしつつある。
(インタビュアー/文責:中西理)

宮崎玲奈(ムニ・青年団演出部)

中西理(以下中西)最初に演劇とどのように出会ったのかについてお聞きしたいと思います。

宮崎玲奈(以下宮崎)もともと中学、高校と俳句をやっていて、その影響で寺山修司を図書館で読んだりした。なので演劇を最初に知ったのが、寺山の戯曲を読んだのが演劇というものを知ったきっかけでした。それで高校は高知だったんですけど、大学で上京して俳句もやりつつ演劇もやってみようかなと思って演劇サークルに入ったというのが演劇を実践しはじめることのきっかけでした。

中西 大学は明治大学だったんですよね。専攻は演劇と関係あったんですか。

宮崎 文学部で同じ学科のくくりの中に演劇専攻もあって、私は文芸の専攻で演劇専攻ではないけれど、演劇の授業もけっこうかぶってとれるような状況でした。

中西 明治大学も昔はけっこういろんな学生劇団があって、だいぶ世代的にいうと違うので、分からないかもしれないですが、俳優として活動しているマギー六角慎司のいたジョビジョバとかもいた演劇サークル「騒動舎」というのもけっこう有名だった。といっても世代的に分からないですね(笑)。ずっと遡れば唐さん(唐十郎)がいたわけだけど。参加していた学生劇団というのはどういう感じのところだったんでしょうか。

宮崎 唐十郎が明治大学で教えていた時に作った「実験劇場」という演劇サークルで、そこに入っていました。でも、そこは強制的に皆で演劇をやらなきゃいけないというよりはそれぞれのペースでできるよという感じだったから、そんなに無理せずにできるのかなと思って入りました。私が1年生の時の4年生の先輩がコンプソンズになった。

中西 コンプソンズも明治だったんですね。それでは当時そこでやっていた演劇というのは唐さんが発足させたサークルではあったけれど、会話劇的なものだったんですね。

宮崎 唐さんはほぼ関係なくなっているんですけれど、どちらかというとちょっとアングラが好きなタイプの人たちが多かったです。私も青年団を見て、無隣館(こまばアゴラ劇場と青年団により2013年度より新たに設けられた若い演劇人のための育成機関)に入る前は白塗りとかして演劇を作っていて……。

中西 そうなんですね。少し驚きましたが、今でも会話劇の中に変な人というか、人なのかどうなのか分からないもの、この間の赤い獣とかが出てくるのはそういう経歴も関係しているんでしょうか。

宮崎 それは分からないです。そこまで深く考えたことがなかった。でも同じ大学生だったけど平田オリザさんの無隣館に入る前と入った後ではけっこう大きく変わったのかなと思っています。

中西 それでは次の質問。すでに寺山修司さんと平田オリザさんの名前が出てきていますが、演劇をやっていくうえで影響を受けた作家というのは誰かいますか。

宮崎 イプセンとかベケットですかね……。

中西 寺山修司は詩人としての彼に影響を受けた感じでそれほど演劇についてという感じではないんですかね。

宮崎 そうですね。直接の影響はそんなにないもしれないけれど、実験演劇を作った時のやり方とかを著作で読んでいた。

中西 文献などを通じて寺山のやっていた演劇については知ってはいたということなんですね。

宮崎 そうです。それが演劇に興味を持つきっかけにはなっている。

中西 その後、無隣館には大学に在学中に受けて入っているわけですがどういう流れでそうなったのでしょうか。

宮崎 大学2年までは白塗りしたり、踊ったりして大学のサークルでやっていたんですが、何か疲れたのもあって吉祥寺シアターでやっていた「ニッポン・サポート・センター」を見に行ったんです。その時に無隣館のチラシが挟まっていた。青年団について存在は知っていたけど見たことはなかったので「こういう演劇もあるんだ」と驚きました。

中西 平田さんの作品を見たのはその時が最初だったんですか。

宮崎 それが最初で見てからすぐに「無隣館も入ろう」と思って受けることにしたんです。 

中西 それでは最初に見た時にはかなり衝撃を受けたのですね。

宮崎 びっくりしましたね。俳句をやっていたこともあって、生活の中にポエトリーを見出すような作業をしてきていたので、オリザさんの作品の中の日常性を見て、こんなことも演劇でできるんだったらもしかして私が俳句でやってきたこととも接続できるかもと思って無隣館に入ったんです。

中西 俳句というのはもともと中学、高校のサークル始めたということでしたが、大学でもクラブ活動だったんですか。

宮崎 中高の時は部活でやっていて、大学からは同人誌に入ったりしてやっていました。




宮崎玲奈 過去の舞台の劇評

「ことばにない 前編」

「東京の一日」

「つかの間の道」

ムニ/Muni
劇作家・演出家の宮崎玲奈が作品を上演する演劇団体として、カンパニーメンバーを持たない形で 2017 年より活動。宮崎企画の活動は2020年より開始。虚構とリアルの境界を探る創作を行う。

Muni a theatre company founded in 2017 by Rena Miyazaki who writes and directs all Muni production.

Rena started Miyazaki project in2020.The company seek between fiction and reality.

宮崎玲奈(みやざき・れな)/ Rena Miyazaki

ムニ主宰 / 劇作家・演出家。1996年9月、高知県土佐市出身。明治大学文学部文学科在学中に、演劇学校無隣館に通い、2017年ムニを旗揚げ。以降全作品の作・演出を行う。見ること、演じること、について批評的な創作アプローチを続ける。複数のシーンをつなぎ合わせていく、日常会話を基調とした3場以上の空間と時間を同時進行させる演出手法で注目され、第11回せんがわ劇場演劇コンクールにて、ムニ『真昼森を抜ける』で演出家賞受賞。作劇は「小説的」とも評され、大学卒業制作の『須磨浦旅行譚』が令和元年度北海道戯曲賞最終候補。俳句、小説など他ジャンルの創作にも意欲的に取り組む。好きなもの、ハロー!プロジェクト、特にJuice=Juiceの工藤由愛さんを偏愛。

書き物 https://note.com/ririca_m


Director/Playwright
Born in Kochi in 1996. She studied at Meiji University and “Murinkan” where Oriza Hirata taught, and started working for him as a director’ s assistant. In 2017, she established muni while being a student of the Meiji University and started her career as playwright and director for all muni production. I love Hello Project.

今後の予定

「ことばにない 前編」京都公演

11月26日(土) 11:00/17:00
11月27日(日) 12:00
11月28日(月) 14:00

・受付開始は開演の45分前、開場は30分前です。
・上演時間予定4時間25分、途中休憩込。

チケット

[自由席/日時指定/税込]

一般:前売4,000円 当日4,500円

25歳以下:前売3,500円 当日4,000円

18歳以下:前売1,000円 当日1,500円


*未就学児はご入場いただけません。

*25歳以下・18歳以下の方は受付にて証明書をご提示ください。

チケット取り扱い

▽THEATRE E9 KYOTO
チケット購入はこちら

喜界島サンゴ礁科学研究所「ユラウ」 2022年12月20日[火] - 12月22日[木]

作:宮崎玲奈 演出:山下恵実

喜界島サンゴ礁科学研究所と青年団による共同プロジェクト。
2021年より平田オリザ監修のもとプロジェクトが始動。青年団所属の劇作家・宮崎玲奈と演出家・山下恵実が、喜界島サンゴ礁科学研究所のもつ研究データ、喜界島でのフィールドワークの結果をもとに制作した演劇作品「ユラウ」を上演します。

ガジュマルの木の下で、何かを待っている人が一人。
行ってほしくない人、行ってしまう人、忘れる人、忘れたくない人。
待っている人は、今いる場所の話をはじめるが、それは今の話かどうか、定かではない。
こことは一体どこで、わたしたちはどこへ向かっていくのか。


喜界島サンゴ礁科学研究所

喜界島サンゴ礁科学研究所は、世界でも稀少な隆起サンゴ礁で形成された喜界島にある日本で唯一のサンゴ礁研究に特化した研究所です。「100年後に残す」を理念とし、国際的なサンゴ礁研究拠点として、地球規模での気候変動解析と未来予測のために必須である一次記録を次世代に残すための事業を展開しています。また将来の人と地球環境の持続可能な発展を目指し、次世代のグローバルリーダーの育成と、サンゴ礁と社会を結ぶプラットフォームとしての役割を担い活動しています。

共同プロジェクト

2021年9月より青年団との共同プロジェクトを始動。
2022年8月に研究者や演出家、建築家など多様な専門家が喜界島で合同フィールドワークを実施し、島民への聞き取り調査を基に、各分野の視点から島の学術的、文化的価値について議論を重ねました。青年団所属の劇作家・宮崎玲奈、演出家・山下恵実と共にフィールドワークの結果を基に制作した新しい演劇を上演し、観劇者と研究者、様々なステークホルダーと共に未来に向けて対話する場を創造します。


喜界島サンゴ礁科学研究所、2022年『ユラウ』喜界島公演

出演

根本江理、南波圭、林ちゑ、伊藤拓(以上、青年団)

スタッフ

空間設計:渡辺瑞帆(青年団)
照明:中山奈美
音響デザイン:SKANK/スカンク(Nibroll)
舞台監督:鐘築隼
制作:半澤裕彦(青年団)
監修:平田オリザ 

日時

2022年12月20日[火] - 12月22日[木]

12月20日火19:3021日水14:0019:3022日木14:00

受付開始・開場は開演の30分前
上演時間:約70分(喜界島レクチャー15分+演劇『ユラウ』上演55分)


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