清水屋商店ブックページ

そのときどきに思い出した本や魅力的な本をエッセイ形式で紹介しています。

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最近の記事

言葉をあつかう

この本は、まだ読んでいる途中。 ある人に勧められて手にした本で、少し読んでは別の本に手を出したりしてなかなか読み進められていないまま、数か月経っている。 持ち歩くバッグに入れたり、時には机に置いたり、それでもその時々に読まなければいけない本が出てきたり、あらたに買った本に手を伸ばしたりと、この本を途中にしたままになってしまっている。 そういうことは日常茶飯事で、数年越しに読み終えるものや、いまだに1ページも開いてない本もたくさんあるから、それは特別なものではない。 少し違

    • 甲子園

      清水屋商店BOOKS vol.14 (変体本1) 今回は「変態本」という新しい視点で本を紹介します。 変態と書くとどこか卑猥なイメージもしますが、ここでは辞書に忠実な意味合いとして使っています。 ちなみに辞書にはいろいろな意味があるようですが、 ・普通の状態と違うこと。異常な、または病的な状態。 といった解釈があります。 普通じゃないとか、異常な、病的なというと悪い印象もありますが、ときに褒め言葉としても使われもします。ここではそのポジティブな意味を込めて名付けてい

      • 音の感触

        清水屋商店BOOKS vol.13 「レコードという物質は、創造性のある微粒子を圧縮して堅い円盤にしたもので、それをカツブシ削り器を使うように針の先で引っ搔いているからで、そんな原理を頭に浮かべた昔の人は、やっぱり偉い。」 これは植草甚一の『退屈の利用法』(晶文社)という本の一節。 音楽は演奏をその場で聴くかあとで聴くかのふたつ。生演奏を聴くことがいちばん良いことですが、音楽に触れることの大半はあとで聴くというもの。 つまりは記録媒体を介して音楽を再生して聴くということで

        • 街の記憶

          清水屋商店BOOKS vol.12 いま目にしている街の風景。 それは日常であり見慣れた景色であると同時に、その土地の特徴を作り出すおおきな要素です。鳥の目線で言えば、東京はスカイツリーや東京タワーであり、ニューヨークであれば摩天楼、パリは凱旋門といったように象徴となる風景というものがあります。 人の目線では、銀座の中央通り、青山の表参道、浅草の仲見世通りなどその地域を代表するような風景でしょう。 風景の中にはその場所の機能に見合った建造物があり、そこを行き交う人々がいま

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          14本

        記事

          「豆腐はどこで買う?」

          清水屋商店BOOKS vol.11 日本に住んでいて「豆腐」を知らない人はいないでしょう。あの白くて四角く柔らかい食べ物は子どもから老人まで広く食されています。 ひと言で豆腐と言っても、絹ごし、木綿、寄せ、おぼろ、湯葉、油揚げ、豆乳と種類がたくさんあります。料理になれば、冷奴、湯豆腐、マーボー豆腐、田楽、さらには豆腐ハンバーグや豆腐ステーキなんていうものもありますし、みそ汁の具の定番です。 言葉としても「豆腐に鎹(かすがい)」や「豆腐の角に頭ぶつけて死ね」なんて表現があ

          「豆腐はどこで買う?」

          「ひかりの写実」

          清水屋商店BOOKS vol.10 アナログとデジタルの話はこれまでも語られてきましたし、語る側の思いもあるので優劣がつかない状況なのかと思います。そもそも優劣をつける意味がないようにも思いますが、ここ数年はアナログの再評価が目立つ感もあります。 たとえば音楽ではレコードやカセットテープのリバイバルが話題ですし、本も紙の本の売れ行きが良いようです。たしかにちょっと前ならば、電車の中ではスマートフォンを見ている姿しか見受けなかったのですが、最近はその中に交じって文庫本などの

          「雨の日におもうこと」

          清水屋商店BOOKS vol.9 この季節になると、話題はもっぱら雨。もう少しすると、台風の到来が関心ごとになります。 日常の暮らしの中では、雨はやっかいもので降ってしまうのかそれとも持ちこたえてくれるのかという思いで天気予報をみます。いっぽうで、雨が降らないと農作物は育たないしダムに水も溜まらない。それではそもそもの暮らしが成り立ちません。 これはすこしの矛盾をはらむ思い。これが過ぎると、日本には雨は降ってほしいけど、私のまわりや行く先々では降らないでね、というわがままな

          「雨の日におもうこと」

          「ボヘミアンガーデン」

          清水屋商店BOOKS vol.8 僕の生まれた場所は、住宅と田んぼが入り組んだ土地でした。 子どもの頃はそれが当たり前の風景でしたが、いま思えばいちめん田んぼだったところに徐々に家が広がっていったのだと思います。 近くには新幹線が通っていて、住宅に囲まれ、となりを新幹線が通り過ぎる広い田んぼで走り回っていたのは、あの時代特有の景色だったのだと思います。 その場所はいま、すべて住宅地にかわり、遊んでいた田んぼは老人たちがゲートボールを楽しむ公園になっています。変わらないのは

          「ボヘミアンガーデン」

          「きおくときろく」

          清水屋商店BOOKS vol.7 東京は何度目かの緊急事態宣言中。どうやら5月末まで継続されるよう。 ちょうど1年前は、1回目の緊急事態宣言で世の中が初めての状況に遭遇し、だれにも先が見通せず、ちょっとした混乱にありました。マスクが手に入らず、トイレットペーパーなどの日用品が品薄になり、最も有効だと言われる消毒液も石鹸も先を競って買う日常。学校は休校し、仕事も在宅勤務がはじまり、飲み屋に行くどころか外食すら自粛せざるを得ない世の中に。不要不急の意味が掴めず、目線の合わなさに

          「きおくときろく」

          「不思議なはなし」

          清水屋商店BOOKS vol.6本を読むというと、1冊の本を読むことだという人が多いと思います。でも時には複数の本を同時に読むことをやっているという人もいるのではないでしょうか。 僕は本を選ぶ仕事をしているので、複数の本の組み合わせをつくることをやります。 これはなかなか奥が深いところがあって、簡単に言えば正解がないというか、答えがいくつもあるものです。 規模によっても変わるけれど、その組み合わせは無限と言ってもいい。 そして、それをむずかしくさせるものに本の多さということが

          「不思議なはなし」

          「目からと耳からと」

          清水屋商店BOOKS vol.5 最近はいかに情報をキャッチするのかが重要だと言われ、その指南書も出るほどです。 ビジネスでは、インプットとアウトプットという言葉を使って情報処理の手法について語られることもあります。 暮らしの中では、新聞で昨日の世界に何が起きていたのかを知ったり、WEB上でついさっき起こったことを調べたりします。もっと身近なことはSNSやメールで知らせがやって来ます。 これらに共通するのはすべて「ことば」であることです。会話からの情報もそのひとつ。 耳から

          「目からと耳からと」

          「積んどく、または積読」

          清水屋商店ブックページ vol.4 最後に本を買ったのはいつですか? 僕は今日です。 1日おきに本を買っているようなときもあるくらい、本を買ってしまいます。理由はもちろん読みたいから。ただ、それだけの理由で買うところまではいかないわけで、そこにはもう少しだけ複雑な要素があります。 本に関わる仕事をし始めた頃に気づいたことに、書店に並ぶ本は想像以上に新人代謝が激しく、欠品や絶版が多いということがあります。10-20代のころに、文学系の古典や名作を読むことが多かったので、より

          「積んどく、または積読」

          「本を読むひとの姿って、、、」

          清水屋商店ブックページ Vol.3 まだ空気は冷たいですが、近所の桜もだいぶ花をつけ、日差しも春めいてきました。 コロナの流行による緊急事態宣言もあり、家で過ごすことが増えたこの冬。外に出るときはいろいろなことに気を使いながら、自問自答することが多かったように思います。 寒さは体だけではなく心も縮こまらせてしまうもの。 でも気温が上がるとともに、少しずつ少しずつほぐしてくれます。そうなると、体を伸ばして思いっきり外に出かけたくなるもの。 とはいうものの、まだコロナの心配は

          「本を読むひとの姿って、、、」

          「2021.3.11.に思うこと」

          清水屋商店BOOKS 本の紹介 Vol.2 2021年3月11日。東日本大震災から10年目の節目の日です。 僕自身がこの災害に直面したからなのか、大人になってから経験したからなのか、こういった節目の日以外にも、時折あの時のことを思い出します。 特に身近なひとに大きな被害が遭ったわけでないのですが、強い印象を持ち続けています。 亡くなられた方は、今年3月1日時点で1万5899名。行方不明者は2526名。 とても大きな数字ですが、それが僕に強い印象を与えているわけではなさそうで

          「2021.3.11.に思うこと」

          「ねむれない夜には」

          清水屋商店BOOKS 本の紹介 Vol.1 眠れない夜があります。そんな夜は眠ることを諦めてベッドから出てしますこともしばしば。 なぜそうなるのか、ずっと不思議に思ってきましたが、どうやら月の満ち欠けが影響しているようです。 ワシントン大学の研究によると、満月前の数日間は、入眠時間が遅くなり、睡眠時間が短くなるらしいのです。 そもそも体内時計が太陽から強い影響を受けていると考えられていたので、この結果は驚くべき発見とのこと。 僕としては、太陽よりも月の影響のほうがしっくりく

          「ねむれない夜には」