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【文章作成の基本】敬語は使わないで!

 小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で気付いた、文章作成における基本事項を紹介するのが、このシリーズ【文章作成の基本】。

 小論文・作文指導者にとって、夏は繁忙期に当たります。それは夏休みが明けると学校推薦型選抜や総合型選抜(いわゆる以前の推薦入試やAO入試)が控えているからです。そこで問題になるのは志望理由書の作成。ですから、この時期は志望理由書の添削指導がとても多く、夏はとても忙しいのです。

 で、時期柄、小論文では余り見かけないが志望理由書ではよく見かける、「敬語の扱い」の問題について、今回はまとめていきます。


1.原則として、文章では敬語は用いない。

 まず志望理由書では相手(志望先)を意識して書くためか、しばしば敬語が登場するのですが、結論から言うと、志望理由書で敬語を用いる必要はありません。というのは、まず高校生のほとんどが敬語の使用に対して圧倒的に不慣れであるため、むしろ敬語を使うことで文章として誤った、不自然でおかしな表現になることが多いからです。また誤っていなくても、冗長でわかりづらい文になることが多いです。だから、そうなるくらいならむしろ使わない方がいいです。原則、文章では敬語は用いなくていいです。それでも、「志望先の大学や学校に対して失礼に当たるのではないか」、と気になるようでしたら、文末を敬体(デスマス調)に統一してください。これだけで十分失礼にはなりません。

注1 文末が常体(ダデアル調)でも失礼にはなりません。大人はそれを失礼だと思いません。
注2 直接対面する面接では敬語を用いる必要があるため、「敬語が使えなくてもいい」ということではありません。面接試験がある人は、「常識的な敬語の使い方」を知っておく必要はあるでしょう。

2.特に謙譲語は文章では用いない。

 特に謙譲語(自分の行為に対して用いる敬語。自分を一段下げて相手を高める表現。)は使わなくていいです。理由は上記と同様です。大半の生徒の謙譲語の使い方は誤っています(相手の言動に謙譲語を用いるなど)。そのため、おかしな表現になることが多く、むしろ文意が伝わりづらくなっていることが多く見受けられます。またそうした「敬語を使いがちな志望理由書」には、しばしば過剰に敬語が使われています。しかし、生徒のみなさんは「慇懃無礼」という言葉をご存じでしょうか。「うわべだけの過剰な丁寧さはかえって相手に失礼だと感じさせる」というような意味の言葉です。敬語を重ねてもってまわった言い方をすることで、(表面的に敬語で装飾することでかえってその人の本心からの敬意を感じられずに)相手は「人をバカにしているのか?」と思います。謙譲語の多用はこれを助長する傾向があります。謙譲語は用いる必要はありません。

3.尊敬の助動詞「れる」・「られる」は使わない。

 尊敬の意味で「れる」・「られる」は使わない方がよいです。というのは、ここでくり返し言っている「敬語は基本使わない」ということももちろんそうですが、この「れる」・「られる」にはもう一つ問題があるからです。それは、この助動詞には「受身」・「可能」・「自発」・「尊敬」と四つの意味があることです。そのため、文中でどの意味で「れる」・「られる」と言っているのかがわかりづらくなることがあるため、用いない方が無難というわけです。

まとめ

 きつい言い方ですが、「使えない敬語なら使わない方がよい!」。これに尽きます。また生徒のみなさんがこだわっている程、大人は敬語を気にしていません。社会人経験が全くない高校生が巧みに敬語を操るとは、大人は全く思っていません。常識的に、丁寧な言い方や表現をしていれば、相手は失礼だとは思いませんし、それだけで合否が決まるのでもありません。それよりも敬語を気にして書くが余り、不自然な表現になり何を言いたいのかわからない文章になってしまうことの方が問題です。

 ですから、敬語は使わなくてよいです。誤った敬語を多用して伝えたいことが何かがわからない志望理由書を多く目にしますので、今回はこういう記事を書きました。

 
 

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