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R5司法試験・成績の話(終章)

 こんにちは。成績が届いたので,最後に公表と,より詳細な勉強法を記載して本ブログを締めようと思います。
 私はXやってないし,このブログの著者として司法研修所?に特定されて不都合な事実も特にないので余りぼかさず掲載しますね。

公法系 122点 AC
民事系 181点 BAA
刑事系 114点 AD
選択科目(国際私法)66点
合計 484点,328位。短答が145点で総合993点,総合306位

・・・という結果でした。普通に1000位くらいだと思っていたのでめくった瞬間ビビりました。就活終わった身分で任官検意欲0右衛門なので,順位など本当にどうでも良いのですが,予備や上位ロー生だけで700人くらいいるであろう今年でこの順位なのは実務に出る自信に繋がりますね。大健闘です。


はじめに:主観との相違

 主観について,合格発表前の皮算用記事から引用してみましょう。

公法系 55+50=105
民事系 45+50+55=150
刑事系 45+35=80
選 択 45
総合 380=換算665+短答145=810(今年の結果だと1462位)
ということでした。・・・全然ちげえじゃねえか!!!!
 
総合すれば上振れていますが,行政法に関しては下触れています。その辺りは,しめじの司法試験戦記の最終章ですし,科目ごとに詳しく分析していきましょう。
 総合的なことを言うと,この上振れは「60点以上なんかつきようもない」として皮算用段階でも上限を55点,A下位くらいにとどめていたことが原因だと考えられます。以下に書いているように,60点台,なんなら70点以上もつく時はつくんですね。皮算用でここら辺の高得点を見積もるのは,「これ60点超えたわ!」となるほど手応えある科目を作るのが難しい試験である以上,至難の業なので嬉しい誤算です。


科目ごとの分析

・国際私法(66点,10位くらい)

 成績表とは順番が前後しますが,受験科目順ということで選択科目から見ていきます。66.66点で,分布表によると6位〜15位のどっか。(292人中)。

点数大当たりやん

 シンプルに大健闘!当時,45点としていたのは「別に爆死はせずに書きはしたけどそんなすごい貯金作れるほど特段自信あるわけでもないよ」という理由でしたが,国際私法についてはおとなしく正解ルートに乗っていれば1桁順位も十分視野に入れられるということが読み取れます。

 大外しすることなく,第1問で債権質の判例との異動を潤沢に論じたり,相殺の準拠法について3説くらい出しながら自説に持って行ったりした部分が跳ねたのかなと思います。

 使用した教材としては,アガルートの3点セット(総合講義,過去問,論招集)です。マジでこれのみ。他科目は全部ローの授業と市販教材だけでやりきりましたが,選択は流石に課金しちゃいました。して良かったです。
 リークエは買いこそしたものの総合講義で十分だなと開いてすらないまま終わり,百選も一応買いましたが,ご存知のとおり国際私法の百選って読みづらいことこの上ないのであまり役に立てられませんでした。

 対策としてやって良かったなと思うことは,4月頃に毎朝過去問起案(第1問,2問で分割して復習込みで2時間程度使って手書きで書く×平成18年以降15年分の30日)をしたことです。他科目との関係でも筆力や日本語の表現力を落とさないメンテナンスになりましたし,所詮1問分なので始めるのにそこまで気合を入れる必要もなく,また過去問からの再度出題も多い科目なので書き方フレームの勉強としても有用でした。これは他の選択科目でも役にたつ話かもしれませんので,ここに供養しておきます。
 実際,今年は「認知無効について,認められるすべての法で無効が認められなければならない」という論証集記載の論点が出題されましたが,過去にも出ているものにも関わらず対策が回っていないため書けていない再現答案も多く,過去問全年をやっているだけで浮くことができたものと推測できます。人事訴訟法,家事事件手続法の条文操作も過去に出ていますが,民訴法オンリーで論述する答案も多く,ここも過去問をやりさえすれば跳ねるポイントだと思いました。

 国際私法はよく「暗記が少ない科目」と言われますが,これは事実でした。覚えること自体はとても少ない。ただ,「楽な科目」かは諸説あると思っていて,覚えることが少ないということは現場で補う部分が多いということを意味するので,現場思考のミスによる爆死リスクは高い科目なんだろうとも言えます。確かに,過去問を回しながらアガルートの模範解答を参照して書き方を徹底的に叩き込めばインプットはそれで終わりという科目なので,変に色々な教材に手を出したりせずやるべきルートが明確になっているという点では楽なのかもしれません。


・憲法(A,74点くらい)

 点数については個別の点数が公表されていないので推測するしかありませんが,公法系民事系刑事系で点数分布に特に差が見られないことからすれば,それぞれ科目ごとの点数も,単純に順位を2(or3)で割ればある程度近い値にはなるんだと推測できます(この計算法があっている保証は全くありませんが,便宜上以下の科目はこれで出してみます)。
 そうすると,行政法がCで,1500〜2000位が88点〜96点ということからすれば,おそらく44点〜48点なので,憲法は74〜78点くらいだろうと見積もれます。順位だと20位〜30位とかそんくらいなんでしょうね。

 え?良すぎん?何があった?確かに憲法は法哲学が好きな兼ね合いで一番勉強してて面白かった科目ではあったけど,得意と思ったことはないぞ?何が判例で何が学説かすら良くわかってないから判例名一個も明示せずに「〜という説がある」みたいな書き方にしたけどそれで良かったのね。問題文の事実拾いながら適宜自分の言葉で講釈を垂れたのが委員のツボに入ったみたい。

 細かい記載内容は見ていただいたらわかるんですが,反論と私見が空中戦になっていそうな雰囲気が出ていますし,合格発表後も良くてBくらいかな,貯金にはならないかなと思っていました。ただ,事実は使い切った記憶があるので,事実をちゃんと使った地上戦をやった後での空中戦ということだった分,跳ねたんだろうなという感想です。また,設問1でフルスケールでしっかり書き,設問2はピンポイントに反論と私見を置けばそれで良いという点も驚きです。というのも,私は反論のうち生存権を除いた平等の部分は,記事を読めばわかるのですが反論説を出す,私見で否定というそれ以上に何もしておらず,他の方の再現答案で散見される「改めて審査基準を緩めるなり定立→目的手段に当てはめ」という工程を一切経ておりません。流石に生存権の部分は裁量を緩めて当てはめし直しましたが。

 使用教材は個別記事に記載していますが,今回の成績を受けて変に基本書・演習書に手を出す必要は本当にないなと確信しました。判例知識を短答学習で入れつつ,趣旨規範ハンドブックに書いてある程度のことのみ抑え,分析本上位答案の猿真似ができるようになればそれで良いのでしょう。

 余談ですが,studywebに記載あるとおり,近年「効果的で過度でない」基準がクソミソに叩かれて使えなくなる一方,中間審査基準という名前のもとで実効性と相当性(過剰性)を手段審査で検討する答案は良いのかどうか議論になっております。studywebさんは否定的なようですが,私はまんま実効性過剰性で検討したので,現段階ではまだ全く問題なく許されるというのが所感です。


・行政法(C,48点くらい)

 先ほどの計算法だと48点程度です(流石に体感ABの狭間だったから,C上位だろうという希望的観測とこれ以上憲法の点が高いとなるとすごい事になるため)。

 「ん〜,Bは少なくともあると思ったんだけどなぁ」だったので,正直ショックです。しかし,思い当たる節はあります。2問目の原告適格の問題で,問題文に挙げられている判例名だけからどのような事案なのかを(ヤマカンで)でっち上げた上でその異動を論じるという答案を作りましたが,これが全部嘘ばかりだったためです。評議員?になれなくなる条文自体はあげましたが,それ以上に何も書いていないに等しい。原告適格の問題は25点と配点も大きく,ここで沈んでしまったのでしょう。Cは例年なら不合格ですが,今年に限れば半分くらいまでは合格水準という事に鑑みれば,行政法のみを取り上げて評価すればまぁ妥当なのかな,と思わなくもないです。もっとも,他の科目の評価と比べればもっと良くても良いのでは・・・
 レベルが高かったのでしょう。司法試験が相対評価というのは,こういう事なのかもしれません。

 正直合格水準にあると確信していた科目だったくらいには原告適格のミス差し置いても手応えがあり,対策にこれ以上の要素を必要と感じなかったので,行政法のAの取り方が一番わからない。憲法と違うんだろうか。
 

・民法(B,50点くらい)

「あ,損害論あれでちゃんと採点してくれたのね」というそれ以上でも以下でもありません。個別記事記載のとおり,純正京大産の弊害が全部出た設問がありましたので,どのように点がつくのかブラックボックスすぎて民法については予測が立ちませんでした。読みづらいクソみたいな内容だったんだろうけど他でカバーできる範囲で止まって総合Bで良かった,上等上等。

 閑話休題ですが,合格後に当時の問題用紙を「当時どのようにマーカー引いたのかなぁ」という気持ちで開いてみたところ,設問1に「1317条」って書いてました。正しくは1037条です。試験のプレッシャーは人をして漢数字すらまともに読めなくさせるんですね,恐ろしい(これで1点は減ってそう)。


・商法(A,60点〜65点程度?)

 民法を50点と仮定したとき商法民訴で131点であり,経営判断原則の適用をした(本来全く関係なかった),記事記載のとおりえげつねえ途中答案をかました点で民訴よりは低いのではないとふみ,60点強くらいと予想しておきます。

 「は?A?」です。本案書いていないんすよ?瑕疵の内容については確かに原告適格の部分で書きはしたけど,原告適格がわかって気持ちよくなって設問を読み飛ばした。つまり請求が認められるか否かについては問いに答えてすらいない。

 司法試験委員はその辺柔軟なようですね。どっかしらで書いていればちゃんと読み飛ばした馬鹿タレを汲んでくださる。ありがたい。サンキューな!

 会社法については予備の過去問も見ておく(できれば解いておく)というのがマストだと感じました。今年の場合,特に設問2は予備からそのまんま出た気がします。基本方針は分析本や趣旨規範,授業(会社法事例演習教材)で結果良かったですが,予備は全年分回せていなかったので,ラッキーという面が強いです。再現性を持たせるためには予備も過去問は全て見ておくことを推奨します。


・民事訴訟法(A,65点〜70点程度?)

 大健闘!一番手応えあった科目なので,ちゃんとブッ跳ねてくれた点には今後の修習及び実務への自信につながります。相殺に既判力を認めないのはどうやら通説ではないようですが(出題趣旨参照),ちゃんと理由づけをしっっっかり0.8ページ程度書いたら許していただけるようです。

 民訴法は,趣旨から考える。これに尽きると思います。初見の論点ばかりだったので,とにかく趣旨から出発してそれっぽいことを導くことのみに注力しました。

 対策としては趣旨規範ハンドブックと授業を用いましたが,今年の問題についてあまり役に立ったかは微妙です。


・刑法(A,71点くらい)

・・・?は?
 成績通知書を見たとき,最初は何も考えず「お,掲示計114点は結構良いじゃん」と思いました。しかし,刑訴がDなんです。今年,Dは38点〜43点のライン。仮に43点だとしても,刑法は70点を超えている事になります。

 甲の検討が半ページ程度でアホほど薄いのにも関わらず,です。他は確かに全部正解を書いているとは思いますが,こんなに取れているとは思いませんでした。
 設問1をしっかり書いたのがどうやら跳ねたものだと予想できます。YSTK教授が作ったであろう問題であることは読んだ瞬間にわかったので,彼が授業で2年ほど前のはるか昔に解説していたようなことを書き殴ったのが功を奏したようです。ちょっとずるいけど。


・刑訴法(D ,43点くらい)

 思ったとおりクソゴミでした。伝聞が全部違うし領置もフレームめちゃくちゃ。当てはめ力に自信がある(刑法のように)科目だからこそ,基本的な理解を疎かにしてしまっていたのだと思います。ただ強制任意を検討させるだけの年の方が多いですし,当てはめ頑張ればいっか〜くらいに軽く見積りすぎていたところ痛い点をつかれたようです。この科目については偉そうに物申せることなど何もありません。不合格レベルなのですから。

 ・・・収集までに復習します。

・短答(憲41民61刑43点の145点)

これについては別記事に全て委ねます。とにかく過去問を回し,憲法は百選の通読,民法は逐条を読む。これで140は超えられますし,司法試験はとにかく合否ラインを分けるのは短答の点数です。素点をそのまんま足されるんですから。


戦略総括

 以上の評価を受けて,私は「短答と選択で稼げ!基本書なんか要らん!」を司法試験の基本戦略の結論といたします。

 短答については,対策を入念にしさえすればそれなりのラインで安定する。そして偏差値換算されない分凄まじいアドバンテージになる。試しに,私の今年の点数で換算したところ,最低点770に必要な論文点は358点,順位換算して1948位です。
 つまり,短答をやっていればボーダー付近においては160人以上抜けることがわかります。この破壊力は試験慣れしている人間であれば十分理解できるでしょう。それに,短答をしっかり対策していれば,今年の配偶者短期のように「え?そんな辺境の条文知らないよぉ」問題が出題された時でも,あまり焦らずに解くことができる(漢数字が読めない人間でも)。因果関係の判例オマージュに過ぎないことに気づき,強盗の機会など発想から湧いてこない。論文に対してもアドバンテージを得ることができるのです。

 次に,選択について。選択科目はとにかく相対的なレベルが低いです。つまり,偏差値が得点になる以上,ちょっと気合い入れて頑張れば点数の上がり幅が他の7法よりも凄まじい美味しい科目なのです。国際私法については,やるべき内容も少ないときている。ここで貯金を作れるか,爆死しないかはその後の科目の精神的な安定にも関わってくる事情ですし,力を入れるべきポイントなのだろうと思います。

 最後に。基本書は要らん!!!!全部捨てろ!!
 ロー入学以降ローの予習以外で使用した基本書(?)は以下のとおりです。
・基本刑法
・基本行政法

 以上。あとは全部授業と趣旨規範と分析本。司法試験は資格試験です。学問的なことは合格後にやれば良いんでしょう。判例学習はとても重要ですが,そんなものは分厚い基本書を読まずとも授業で扱ったり百選読んだりすることで代用可能です。

付随して司法試験で実践して良かったこと
・答案構成はマジの大枠を作る以外しない。そんな時間があれば一つでも問題文の事情を書き写す。
・「したがって」が時間かかって面倒くさいので「故に」で繋いでいく(超オススメ)。「もっとも」も「尤も」の方が早く,「ほとんど」も「殆ど」の方が多分早い。


しめじの司法試験戦記・エピローグ


 これにて,私の司法試験戦記は完結です!この投稿をもって,自分から司法試験の話は天地神明に誓って2度としませんが,質問や相談等コメントいただければ普段使うメアドに届くようにはなっておりますので,気づき次第返信させていただきます。
 ここまで拙稿まみれでしたが,お読みいただきありがとうございました。令和6年以降に受験する誰かの役に立っていれば嬉しいです。

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