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R5司法試験・商法の話

 こんにちは。「連鎖」ならやっぱりコレでしょう笑
 今日は商法について書きます。試験終了直後最も自信があった科目であり,同時に今現在最も何点くるかわからない大やらかしが発覚した科目でもあります。司法試験のみならず,今後全てのお受験をする方々に反面教師としていただきたい大ミスです。では,参りましょう!


〜試験開始前〜

 「会社法はローで唯一Cをつけた科目(前期A後期C,後期は組織再編メインで何も対策しなかった結果設問の2/3が全くわからない沼にハマりました。)だし,組織再編とかが出てドボン食らうのだけは避けないと・・・。簡単であってくれ・・・!」

〜試験中〜

設問1

 「小問1・・・何だこれ?代表権の濫用は書いてくる人もいそうだけど違うよな・・・。論点らしい論点はなさそうだし,落ち着いて処理するタイプの問題だろうな。」

 「間接取引か?確か定義は『会社と第三者の取引で,客観的外形的に会社の犠牲において取締役に利益が生じるもの』(若干違うかもしれないが当時は正確に覚えてました。)だったよな,取締役の横の土地を買うのは主観的利益はあっても客観的にはなさそう,事実引用して当てはめて否定!」
 「んで,一般論としての善管注意義務違反の検討。土地の購入は業務執行上の判断なんだから経営判断原則の適用あり!でも(写経して)クソ不合理,違反あり。」
 「反論・・・?(経営判断原則の適用があるっていうそのものが反論になりうるという視点は私には全くありませんでした。何故でしょうね笑)んーっと,請求者が株主になったのは行為より後にわざわざしてあるのが気持ち悪いから多分この事情を使うんだろうけど,何だ?時間ねえし,そのまま『行為時より後で請求できない』と主張するって反論構成して423は別にそんな制限ないし会社の適正な運営をも趣旨としているから失当,でいいや。何も書かんよりはマシやろ。」

1人会社だったらしいですね。確かに言われてみればそうですし,気持ち悪さを感じる事案分析視点も間違ってはなかったのですが,もう一歩知識不足でした。でも,何も書いてないよりはマシなんじゃないか・・・?


 「小問2もよおわからんな。論点らしき論点は軽く非株主なら間接損害でおkってのを貼り付ける程度はするけど,核は因果関係か?『社会通念上相当』みたいな適当な規範明示して,事実バカ丁寧に引用してこの金は実質予備費として運用してたんだからそれ使い込んで予備費から補填できなくなったことによる損害には社会通念上相当の因果関係あるだろ!」


設問2

 「絶対この原告適格わからん人が大半でしょ!何年前かは忘れたけど,予備で一回出てたはずなのに何の論証集でも見たことない,現場思考じゃ到底思いつかない論点じゃん!!臭いと踏んで頭入れといて良かった!!」

 「えーーっと,まず原則は提訴も管理行為だから過半数の同意が要りますよ,ないから認められなさそうですね。」
 「尤も,禁反言の原理から信義則上会社に原告適格を否定主張を封じるべきときは例外的にOK。本件では,106条のただし書論証〜の下において,本来定足数に達していない決議を成立させている。それなのに同様の過半数の同意ないという瑕疵を主張して原告適格を否定するのは禁反言の原理から封じるべきである。よって例外的に原告適格が認められる!」

 「訴えの利益?あぁ,瑕疵連鎖説のもとで丁寧に書いて小問2でそれが治癒されてるっていう話ね。小問1はそのまま処理すればいいとして,小問2は権利義務取締役で招集の瑕疵は無くなってて,かつ全員総会じゃないけど別にこいつらは本件の事実の元ではいなくても問題ない人間のはずだからこの点も治癒されるでいいか。」

 「なんか5分余ったな。代表権の濫用やっぱ最初書くか??いや,試験中に降ってくる神は死神って相場が決まってるんだ,やめとこう。」


〜感想〜


 お分かりいただけただろうか。設問2の⑴が問うていることは3つ,原告適格,訴えの利益,請求の当否。私は,「請求の当否」について何も書いてないのです。
 何も書く時間がなかった訳ではありません。私は基本的に一般的な答案構成を学部の期末試験の時から一度もしたことがない(正確には,2時間の試験で30分構成に充てるといった時間の使い方をせず,最初に3分程度で大まかな構成を決めた上で,適宜時間調整をしつつ何も考えずに書ける規範書きながら当てはめの内容などを考えたりしている)のですが,他7科目は全て残り1分以内に(行政法はわからなすぎて無理やり終わらせた感があったが)書き終わるように調整できていたにもかかわらず会社法だけは5分も余りました。

 では,何故気づかなかったか。1つは,「原告適格」というマイナー論点で優位に立てることが半ば確定して気持ちよくなって,問題文を最後まで読まなかったことがあるでしょう。しかし,それ以上に挙げられるのが,「そこで問われている論点自体は別のところで書いた」からだと思います。

 本案上の取消事由は,会社法106条但し書きの性質の問題,即ち,会社が同意しているからといって直ちにその議決権行使は適法にはならない点にあります。そう,私はこれを原告適格の例外検討の中で既に書いて「しまって」いたのです。会社は取消事由をシカトしておきながら,同じ理由で原告適格ないよね!との主張を許すことは禁反言原理から妥当ではないという点に原告適格を例外的に認める根拠があるという筋で書いている以上,論述の中で取消事由の存在に触れる必要がありました。
 すると,請求の当否を仮に書くとしても,「瑕疵は前述のとおり(831条に当てはめ)認められる。裁量棄却は〜」くらいしか書くことがなくなります。論点主義的な発想で試験問題を見る癖があると,こういう時に脳が危険信号を発してくれなくなってしまうのでしょう。不幸中の幸いなのは,このやらかしに気づいたのが試験後再現答案を書いている時だったことです。終了直後に気づいていたら多分メンタル終わってましたし,その意味では運がいいのかもしれません笑


 設問1は1人会社を落としはしましたが,これは書けている人間の方が圧倒的に少ないと踏んでいるので全く何も思いません。むしろ,点が入るのかは知りませんが,問題の所在に気づこうとした悩みは答案に落とせたのではないでしょうか。間接取引肯定構成と善管注意義務違反構成の両論があるようですが,どちらにも触れつつ意見を貫けたのは満足です。小問2は因果関係が核だと思ったのですが,どうなんでしょうね。知る限り皆似たような作文を書いている印象です。

 設問2は,↑の大やらかし以外は満足です。請求の当否こそ何も書いてないので結論や裁量棄却分の点数はないでしょうが,取消事由についてはしっかり事実拾って触れていること,それなりにわからない人が多いと踏んでいる原告適格と訴えの利益は満足に書けたことからすれば,上位こそ逃せども決して沈んではいないと考えています。何点来るかは本当に未知数ですが。

 会社法は,ローの会社法事例演習教材で9割程度カバーできると考えたので,とにかくその復習をしながら,残り1割を拾うために予備試験の過去問に少々手を出したり,趣旨規範に載っているカバーできていない範囲について抑えたりしました。結果,今年については知識面では困ることはなかったです。

 ご覧いただきありがとうございました!次回は,多くの受験生を震撼させた民訴法についてお話します。

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