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R5司法試験・民訴法の話

 こんにちは。今日は新幹線で書いています。今年の民訴法は問題を見ていただいたらわかるとおり,相対評価で何点来るのか正直一番読めないです。画像は設問2を解いててなんか遊戯王のチェーンみたいだなぁとか思ったので「デモンズ・チェーン」です。


 前回の商法でお話しし損ねていたのでここで追記しますが,よく司法試験の前日くらいに「明日から司法試験,頑張ってください!私は〜(以下壮大な自分語り)でも合格できました!」っていう気色悪いツイート増えるじゃないですか。その中に「設問を読み飛ばした」っていうミスがしばしばあると思うんですよね。この類のを見ても,「いや事実読み飛ばすとかならわかるけど設問読み飛ばすなんてやる訳ないやんどういうことやねん」って思っていました。しかし,経歴からわかるとおり私はどちらかといえば少年期からペーパーテスト慣れしている方であるにも関わらず,それでも同じミスをしました。ついては今後試験前に同様の自分語りをしたくないのでここで警鐘を鳴らしておきます。「問題文は穴が開くまで読め!」


〜試験開始前〜

 「民訴は得意科目!(ローの成績は2つともAで,完全実力テストの民事法文書作成でも良い評価を貰えていました。)判例とか細かい知識は正直ないけど,論理構成で何とか差をつけてAを狙いたい。趣旨規範ハンドブックにあるレベルの論点は全て抑えたはず・・・。」


〜試験中〜

設問1

 「・・・・・?知らんなぁ。私が知らんってことは多分知らんでも合否には影響しないんだろうけど,根拠条文,何だろう。多分配点的にも他の問題から処理した方が良さそうだし,最後に解こう。」


 設問2・3終了後
 「とりあえず信義則2条が問題になりそうなのはわかるんだけど,これ多分信義則だけを根拠条文に挙げたら令和元年の採点実感みたいに『すぐ信義則などの一般条項に頼るのは条文に則して考える法律家の基本的な資質を欠いていると言わざるを得ない』とか書かれるんだろうなぁ,何か無いか・・・」

 「ドンピシャなのは無いし,そもそも証拠採用できるかどうかって話だから自由心証以前の話だしこれも違う。問題文から逆算して考える限り,最後は比較衡量して事実拾いやすい規範を作り上げるのが沈まない守りの答案になるんだろうけど。文書提出義務から展開して,『そもそも文書提出義務が認められるものについては収集手段が不当でもそれのみを理由に否定すべきではないが,認められないものについては,証拠の必要性,手段の不当性等を比較衡量して信義則上証拠として認めることが許容されるか否かで決すべき』とかでいいや。あとは引用引用!」

設問2

 「これもきっしょいところから出すなぁ・・・。帰結は不利益変更禁止が絡むのはわかるけど,そもそも相殺に対して発動した別の債権使った相殺に2項の既判力って付くの?」
 「訴訟内で再度相殺するのは確か争点を無題拡大させて混乱するからみたいな理由で認められないんだよな。これは趣旨規範にあった。こっから論理をスタートさせるんであれば,訴訟外で相殺する行為は問題文にあるように認められるんだとしても,そこに既判力を認めるなら↑の弊害って何にも除去されないし,既判力は生じないって考える方が普通だと思うなぁ。」

 「だけど,そしたら1〜3全部❌で話にならないゴミ問題が出来上がるだけなんだよな。そうしといてその上で3だけ『仮に既判力が生じているのであれば〜』で⭕️になる筋も書きつつ,尤も前述のとおり〜で済ますか。そもそもこんなのまともに理解した上で完答できてる人ほとんどおらんやろ,仕方ない。」


設問3

 「多分配点と前2問のキモさ的にこの問題を処理できるかどうかで点数差は開くんだろうな。課題1は何らかの効力?何そのきしょい問い方・・・。」

 「とりあえず参加的効力は趣旨から生じ得ないことには軽く触れて,アレ・・・既判力ってこいつに原則生じるんだっけ・・・?(超基本的なことで3分くらい悩む)」
 「何らかの効力なんて気持ち悪い問い方してくる時点で各号にない以上生じないってした上で反射効について触れてほしいんだろう!一世一代の運ゲー,原則生じない!!」

 「例外的に既判力の拡張を受けるか,反射効という名でこの拡張を一般化する見解があるが,判例上認められておらず,そもそも115条が各号以外に認めない趣旨であること及び訴訟を無駄に複雑化させる恐れからは認めるべきではない(反射効について唯一知ってることを連ねて誤魔化す。)」
 「尤も,別途信義則上の主観的拡張はありうる。既判力の趣旨は〜(以下略)。まあこんだけ書いていれば十分でしょ。今年の民事系,全科目で信義則書いてる気がするんだけど何かとんでもないことしてそうで怖いわ笑」

 
 「んで,課題2は・・・。とりあえず原則的には趣旨からすれば生じるよな,こんな聞き方してるくらいだから当該条文になんかあるんだろうけど,この2号または3号のどっちかに当たるから認められないんじゃない?って問題意識か。はじめて見たなあ(予備受けたことないから条文知識が無さすぎることが露呈)。」
 「まあ,この各号の趣旨って多分参加人が敗訴責任を負うべきでない時に除外する点にあるんだろうし,わざわざご自分からそれでもいいっつってんなら良いでしょ。問題文にある通り『珍しい』ケースだからわざわざそんな場合に参加人がこの適用を排除できることが条文化されてないだけで。多分正解筋なはずだし,設問3はAレベルでしょ!」


〜感想〜

 絶対的には決してできたとは言い難いのですが,相対的には逃げ切れたんじゃないかなという印象です。試験委員の「予備校ロンパ死ね!」という強い憎悪が伝わってきた気がします。かといって,在学中受験者にこんなもんが解けるとは到底思えないのですが・・・。設問3なんか,参加的効力の趣旨だけ書いてあと作文みたいな答案も多いのではないでしょうか。

 民訴法は,他の科目同様にローの授業の復習をしまくった上で趣旨規範を叩き込みました。京大ローの民訴の授業はレベル高く,「試験委員が本来受験生にこんくらいわかっておいてほしいこと」を無理やり叩き込まれているという印象で,実際に応用問題としてローで取り扱ったことが出題されていることも多かったので何とか消化した上で本番に臨もうと思っていました。まぁ,結局違法収集証拠も参加的効力のこんな話も再相殺も全く見たことなかったんですけどね笑

 自信がある科目だったこともありますが,今年の問題を一通り読んだ瞬間「あ,全部現場思考ね」と切り替えられて落ち着いて臨めたのは良かったと思います。斜め後ろの席から結構大きめの舌打ちが聞こえてきたので「あ,やっぱそう(難しい)よね」と妙に安心したのを覚えています。

 ご覧いただきありがとうございました!次回からは刑事系に入ります。



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