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おいしい思い出①母から唯一無二の合格祝い

食べることが大好きです。

なぜなら、食べものには美味しい思い出が宿り、心がほっこり温まるから。


大学入試の話題が多くなるこの時期になると、遠い記憶になりつつある大学受験の合格発表の日を思い出します。

大学生活を夢見て、受験後に合否を待つ、現実味のないふわふわした日々。

そんな毎日が続いたある日、家に帰ると大学から封筒が届いていました。

他の大学は受験せず、その大学一本に絞っていた私にとって、人生を左右する重大な封筒。

恐る恐る開けてみると…

そこには「合格」の2文字がありました!

早く母に伝えたいのに、その頃は携帯電話を持っておらず、母の帰りをそわそわしながら待っていました。

こたつにもぐって、テレビの音が右から左に流れる心ここに在らずの時間を過ごしていると、門から「ガチャ」と開く音が聞こえてきました。

慌てて玄関まで走っていくと、ちょうど母が入ってきました。母の顔を見るや否や、喜びを爆発させた私に、母も安心したようすで大喜びしてくれました。

母は帰ったばかりなのに
「ちょっと買い物行ってくるわ!」
と言って、バタバタと買い物にでかけていきました。

しばらくして帰ってきた母の手には、立派な鯛と小豆が。

その日、夕飯の主役を飾ったのは、「鯛の塩焼き」と「お赤飯」でした。
手料理が得意な母からの、唯一無二のお祝いでした。どちらも最高に美味しかったことは言うまでもありません。

今でもこの時期になると思い出す、合格の喜びと祝福の味です。


あれから約20年たち、昨年私は結婚しました。

新居に引越してきた日、夕飯を作る元気も時間もなく夫と近所のスーパーへ向かいました。

お惣菜コーナーで何にしようか迷っていると、夫が「新生活が始まるお祝いにお赤飯はどう?」と。私も大賛成でお赤飯を買い物カゴへ。

新居に戻り、まだ段ボール箱が重なるリビングで、お皿も出せずパックのまま二人で食べたお赤飯。
よく動いてお腹が空いていたので美味しくて、あっという間にたいらげました。

こうしてお赤飯の思い出が、またひとつ増えました。