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料理上手な職場のお母さん。いよいよ卒業のとき。

私が憧れる料理上手なお母さん。

その人は、私が新入社員時代の先輩で、3人の子どもを育てるお母さんでした。

右も左も分からない私を、ときに厳しくときに優しく、温かく指導してくれました。

当時、一人暮らしの私の食生活を心配して、ときどき晩ごはんのおかずをタッパーに詰めて持ってきてくれました。

サーモンとキノコのキッシュ
豚肉のトマト煮込み
スペアリブと夏野菜の煮込み
野菜いっぱいカレー
ミックスきのこペースト
フルーツタルト
ハーブミックス…

特に、煮込み料理がお得意で、スパイス使いが魔法のようで、もう何をどうすればこんなに複雑な味になるのかと、その美味しさに感動しました。

3人の息子さんたちは、毎日こんなに美味しいごはんを食べてるのかと思うと羨ましくて。

ただ、息子さんたちの奥さんになる人は、料理のハードルが上がることに、他人ながら勝手に心配しています。


その後、私が異動になり、なかなか会えなくなってしまいました。
「もうあの料理が食べられないのか…」
と思っていたところに、内線電話がかかってきました。

懐かしい声の主は職場のお母さん!
「〇〇ちゃん、今日おかずあるけどいる?」

「いります!」と、もちろん即答。

前の部署へ行くと、懐かしいお母さんの顔が。
紙袋の中におかずのタッパーと、食べ方のメモを入れてくれていました。

「煮込みすぎてお肉が小さくなっちゃった。」

と渡してくれた、豚肉と野菜のトマト煮込み。

仕事から帰って、わくわくしながらタッパーを開けると、お肉も野菜もゴロゴロ入ってて、ボリューム満点!
レンジで温めて、添えてある生クリームをかけたら、レストランさながらのお母さんの手料理が完成!

もちろん美味しいことは言うまでもなく、あっという間に完食です。

タッパーはキレイに洗って、お礼のメモとちょっとしたお菓子を添えて返却。

そんな繰り返しが14年続いた昨年。
夫を連れて結婚の報告をしに行くと、実のお母さんのように喜んでくれました。

それから数日後、「二人分入れといたよ!」と大きなタッパーにスペアリブの煮込みとポテトサラダを詰めてきてくれました。

そんな日々がずっと続くと思っていたのに…


先日ハーブミックスをもらいに行くと
「来月で定年退職なんよ。」と。

若々しくて、もう定年だなんて夢にも思っていなかったので、青天の霹靂でした。


職場のお母さんの最終出勤日。
お礼の品を持って挨拶へ行きました。

「旦那さんと仲良くね!」

私「〇〇さんのように、美味しいごはんを作れるように頑張ります!」

「頑張らんでいいんよ!頑張ったら長続きせんからね。」


どうやら、長続きさせるコツは、頑張りすぎず、できるときにすることのようです。

確かに、疲れているのに頑張ってイライラしながら作った料理は、きっと美味しくないですもんね。

大切なことは、頑張って作ることではなく、楽しく食卓を囲むことだと教えてもらいました。


私も職場のお母さんのように、美味しい料理で家族の笑顔を守っていきたいです。

15年間、本当にお世話になりました。