2泊3日の「槍ヶ岳」登山記録 -あの鋭く尖った山容に憧れて-
片道約18km、上高地-槍沢ロッジ-槍ヶ岳ルート
飛騨山脈南部にあり、天空に穴を開けんばかりの勢いで鋭くそびえ立つ標高3180mは日本で5番目に高い山「槍ヶ岳」である。
普段、長野県の山々を登ると多くの場合に遠くの方に一際尖った山があり、数ある山の中でもその存在感を異様なまでに主張している。登山をする人々の中では、槍ヶ岳は憧れの山で「あの尖った山頂の上に立ちたい」と思う人は多く、自分もその1人である。
今回は、槍ヶ岳に臨む登山者の多くの選ぶ「上高地-槍沢ロッジ-槍ヶ岳」ルートを選択し、2泊3日かけて槍ヶ岳に登頂してきたのでその記録である。
気分は上々、槍沢ロッジまで上高地の川沿いを歩く
1日目は上高地から4~5時間ほどの場所にある槍沢ロッジを目指す。上高地の川沿いに広がる穂高連峰を横目に歩いていく。辛い部分は一切なく、自然と早足になるほど歩きやすい道が続く。
正午前には槍沢ロッジに辿り着き、「まだまだ登れるんじゃないか」という慢心を抑えつつ、カロリー摂取、睡眠と明日に備えて体を休ませる。槍沢ロッジには入浴時間は決まっているもののお風呂があるので、汗だくな体を清潔にできる。
芥川龍之介も挑んだ、歴史を感じる登山道
2日目、早朝からヘッドライトをつけて槍ヶ岳への登坂をスタートする。実は槍ヶ岳の歴史は深く、初登頂は江戸時代の修行僧が開山し、あの芥川龍之介でさえも挑んでいる。このルートでは修行僧が修行のために利用した岩の窪みや芥川龍之介の手記に書かれている古来よりビバークに利用される巨岩を目にすることができる。
硬く踏み固められた登山道には、人間が山に向き合い続けた歴史が凝縮されているのだと再認識させるとともに、「頑張れよ」と背中を押されるような雰囲気を感じた。
急登連続、眼前に広がる槍ヶ岳の胸に飛び込む
槍沢ロッジを出ると、緩やかに傾斜をあげていくグリーンバンドと呼ばれる場所に出る。谷間を這う早朝の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込みながら進んでいく
グリーンバンドをしばらく登ると、一気に視界が開け目の前に槍ヶ岳が現れる。まさに槍ヶ岳の胸に飛び込んだわけだが標高が高くなるにつれて更に斜度も増し、山頂までは近くて遠い。
槍ヶ岳山荘まで登りきって、ふと下を見るととんでもなく急な斜面を登ってきたのだと実感させられる。槍沢ロッジから槍ヶ岳山荘までは4時間ほどかかっていた、午後になるにつれて山頂には雲がかかりやすくなるので、アタックザックに切り替え山頂を目指した。
鎖と梯子の洗礼、高さ100mの岩場を直登
標高3080mにある槍ヶ岳山荘から槍ヶ岳山頂の標高3180mまで100m、ここからは鎖と梯子の連続する険しい岩場を直登することになる。一挙手一投足、体の全神経を集中させて一歩一歩確実に登っていく。足の置き場はあるか、足を置いた場所は不安定ではないか、瞬時に様々な判断を下しながら登っていく必要がある。
山頂のスペースは極狭で、後続の登山者のためにゆっくりしている暇は全くなく、記念撮影をサッと済ませて来た道を引き返しす、不思議と登りより下の方が恐怖感はなかった。槍ヶ岳山頂は絶景を楽しむと言うより、登りきったという達成感と自分の登山スキルを確認するチェックポイントであると感じた。
まるで天空にそびえ立つ要塞「槍ヶ岳山荘」
槍ヶ岳山頂から宿泊予定の槍ヶ岳山荘を見ると、その規模の大きさに驚かされる。狭い空間を有効活用するかのようにビッチリと敷き詰められた建物は天空にそびえ立つ要塞のようである。横方向だけでなく、縦方向にも空間が有効活用されているので、中を歩き回ると息が切れてしまった。
食欲底なし沼、干からびた体に栄養摂取を
山頂まで行って戻ってくる腹からはグーグーと轟音、すっかり体は干からびてしまっていてカロリーを求めていた。幸い槍ヶ岳山荘には美味いものがたくさんある。しっかり栄養摂取をして体を労ろう!
満天の星空を眺めつつ、再訪を誓う
台風の来訪が1~2日後に控えた槍ヶ岳では、午後になればなるほど山頂付近は雲に覆われ始めた。その最中、たった一瞬だけ雲が途切れ、槍ヶ岳の山頂に降り注ぐ満天の星空が現れ、今までの苦労を労ってくれているかの様だった。
今回は、上高地スタートの初心者向けの王道ルートを利用したが、槍ヶ岳に向かう道は1つではない。次はどのルートから槍ヶ岳に登ろうかと自然と再訪を誓っていた。
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