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母短歌:励ましだったらしい

歩く 滑る 歩けば滑る また歩く 「滑り慣れとけ」 わたしじゅうはち/銀猫
あるく すべる あるけばすべる またあるく 「すべりなれとけ」 わたしじゅうはち

 受験生の方の目に触れたのだとしたら、申し訳ございません。先に謝りますね。

 これは、わたしの遠い遠い記憶の中にあるできごとです。
 受験が差し迫った冬、わたしの不思議な母はわたしにこういったのです。

「落ちてショックを受けないように、雪道でたくさん滑っておいたらどう? 慣れて平気になると思うよ」と。

 十八年付き合っている実の母の考え方が、かなり奇妙なことはわかっていました。が、当時のわたし、これは堪えました。

 子どものころも、その後も、現在に至るまで、わたしは母に何かを応援してもらった記憶がありません。しかし、どうやらこのときのこの言葉は、母は励ましや応援のつもりで言っていたらしいと、あとから知りました。

 理解できるかよ、そんなこと。

 面と向かって言い返せなかった自分の子ども時代が、せつなく感じられます。

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