11.今の私のp《ピアノ》
エレクトーンに加え
ピアノも習い始めた 私は
pで弾くのが 苦手だ。
先生からは
「今は気にせず 好きに弾きな」
と 言われている。
レッスンで 曲を頭から弾いたら
先生に すぐにとめられた。
「最初はもっと小さくって 言ったよね」
途中で とめられるなんて
何年ぶりだろう。
先生は
私が弾きたいところから 弾きたいところまで
何回でも 弾かせてくれる
私の前後には
他の人のレッスンは 入っていない。
「その弾き方じゃあ
どこまでが前奏か 分からないでしょ」
しかも先生は ちょっと怒っている。
怒られるのも 久々だ。
私は 何回か前のレッスンから
「曲が通ったら 強弱をつけてね」
と言われていた。
pで静かに 始まって
徐々に盛り上がり
pで静かに 終わる曲だ。
けれど
盛り上がるところで つっかえる演奏を
私は「最後まで 通っていない」
と 認識していた。
だから
「強弱をつけて」と何回言われても
つけようとは しなかった。
抑揚をつけるのなんて まだムリだ。
そもそも pでなんて弾けないし。
それを どうやら先生は
「曲は 通っている」と
とっくに認識していたらしい。
仕方がない。
やる気くらいは 見せないと。
私は 最初から弾き直した。
初めの音を そおっと押さえてみる。
思っていたより 小さい音が出た。
しかも 左が。
カスカスも していない。
弾き続ける。
まだ 安定はしていないけれど
何回か弾けば
今の私のpが 見つかりそうだ。
前奏が終わって少しだけ大きく
ダル・セーニョで戻ってきたところで
いつもの大きさにする。
私にしては レンジが広い。
弾き終わって 驚きを隠せないまま
先生に言った。
「小さく弾けるように なったかも」
先生は言った。
「上手になったと 思うよ」
褒められたのも 久々だった。
いや 先生はよく褒めてくれる。
私は うまく弾けたと思ったときは
ドヤ顔をして 先生を見る。
すると先生は
「よかったよ」と言ってくれる。
もう 20年の付き合いだ。
私は先生が どういうときに褒めてくれるのか
ちゃんと 分かっている。
でも今回は いつもと違う。
私が 予想していなかったところで
褒められた。
久々だった。
てっきり できないと思ってた。
でも 先生には 今の私ならできる
と分かるのだ。
ちょっと 待って。
pで静かに 始まって
徐々に盛り上がり
pで静かに 終わる曲。
最後のpは
前から 弾けてた気がする。
大好きで何周もしている テレビの曲だ。
静かに終わらないと 明らかにおかしい。
そりゃあ 怒られも するだろう。
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