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初めての繭を、収繭した話

朝晩の気温がグッと下がり、いよいよ秋本番。

岐阜県美濃加茂市の「かいこの家」では、9月末に養蚕が終わり、10月上旬に蚕糸協会へできた繭を持ち込みました。

その時の様子をレポートします。

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9月下旬ごろからお蚕さんが繭づくり(営繭)を始め、10月に入る頃にはほぼすべてのお蚕さんが繭を作り終えました。

お部屋の中でひとつずつ立派な繭ができました!

小さい繭もところどころに見えましたが、ほとんどが同じような大きさのしっかりとした繭を作っていました。爪先ぐらいの小ささだったお蚕さんがこんな立派な繭を作るまでに成長するなんて、感動ものです。

ちなみに、お蚕さんが繭をつくるこのお蚕マンションは回転蔟(かいてんまぶし)と言われる養蚕道具です。繭を作る時の足場の役目を果たします。
お蚕さんは繭を作る時上へのぼる習性があります。この習性を利用して、上にのぼったお蚕さんの重みで蔟が回転し、空いたお部屋にお蚕さんが自然に入るようになっているのです。

さて、庭の柿の木が橙色に染まり始めた頃、蔟から繭を取り外す「収繭(しゅうけん)」作業を行いました。

繭掻き棒で繭を押し出しています

蔟を繭掻き用の箱枠にはめて、繭掻き棒を使って1列ずつ繭を押し出していきます。
押し出した繭を集めて汚れを取ると、繊細な繭の繊維が光をこまかく反射して、やさしく輝いているように見えました。
できた繭は抱えられるくらいの量しかないですが、ここまでやり遂げられたことがとても嬉しかったです。

光をまとった美しい繭たち

できた繭を持って、岐阜県蚕糸協会を訪ねました。
まず、電動の毛羽取器で繭の毛羽を取り除きます。毛羽とは、お蚕さんが繭を作る時の土台となる最初に吐く柔らかい糸のことで、繭の外側に薄く付いているものです。生糸にはならないため取り除く必要があります。

段ボールに入っているのが毛羽を取った繭で、機械の間から見えるのが繭から取れた毛羽

取り除いた繭毛羽は通常捨ててしまいますが、この繭毛羽を使ったワークショップをやりたいと思っています。もし何か良いアイディアがありましたら教えてください!

次は選繭台で、商品になる繭とならない繭に分けます。
「これは玉ちゃんやね」と指導員さん。
玉ちゃん?
「玉繭って言って、一つの繭の中に2頭のお蚕さんが入ってるんですよ。普通の繭より形が丸いでしょ。2頭が吐き出す糸が絡み合っているから生糸にしにくいんです」

2頭のお蚕さんが入った玉繭

次に渡された繭。「これ、耳元で振ってみて」と言われ、耳元で振ってみるとコロコロと中の蛹が転がる音がします。
「次はこれ」と、同じように耳元で振ってみる。中の蛹が転がる音がするけど、さっきのより音が固いような気がします。

「この中の蛹は硬化病にかかってるね」と指導員さん。
硬化病とは、糸状菌という一般的にカビと言われる菌が寄生したことによって起こる病気。死後、体が硬くなることから硬化病と言われているそう。

なるほど。指導員さんのお話にはいつも学ぶところがたくさんあって、とても有難いです。

繭の選別が終わったら、商品になる繭の重さを測ります。
初回は680.8g!そのうち納めるのは約500gで、残りの約180gは養蚕を始めて最初の繭、ということで記念に残して置くことにしました。

初回は約680gの繭ができました

500gは繭いくつになるのか、1粒(りゅう)ずつ入る枠に入れて数えます。
結果は315粒でした!

ちなみに、着物1反に使う繭の数は約2,200~3,000粒だそうです。
全然足りないですね(笑)。

100粒の繭が入る枠が3枚と、飛び出た繭15粒で合計315粒!

繭の中の蛹はまだ生きている(生繭と言います)ので、約680gすべてを蚕糸協会で冷凍して殺蛹(さつよう)後、天日干しにして乾燥してもらいます。この時点で中の蛹は天に召されます。

ちなみに玉繭や規格外の繭は殺蛹せずにそのままお持ち帰り。会社でしばらく様子を見ていたら羽化しましたが、その話はまた改めて。

初めての養蚕はこれでいったん終わり。
次は春にまたお蚕さんを飼い始めます。今回は500頭でしたが、徐々に頭数を増やしていきます。頭数が増えると飼い方や道具も変わってきますので、ひとつずつ経験してノウハウや知識を蓄積していきたいと思います。
春にはまた『かいこの家』でお蚕さんに会えますので、ぜひ遊びに来てくださいね!

ちなみに、いま「かいこの家」は秋冬仕様にデコられています(11月現在)