北上-盛岡 300km ナイトラン
秋田→北上→盛岡ルートをロングライドしたら地獄を見た…
というお話
1.事前準備
秋田の気温が大変なことになっている.
昨日,一昨日と東京,大阪よりも3℃以上も高い熱波に襲われているのである.本日8月25日は少しマシになったが,熱中症警戒アラートが「危険」領域であることは変わりなく,明日26日(土曜日)も同様との予報である.
ちなみに,熱中症警戒アラートの「危険」とは,どのような状態かというと,
そろそろ 一人ブルベ:400kmコース にでもチャレンジしようかな…
と思っているのだが,この状況では無理だろう.
趣味のロードバイクが「特別の場合」に該当しないことは明らかである.
しかし,私は9月の週末は予定がいろいろと入っており,走れる日が少ない.できれば,今のうちにどこかに走りに行っておきたい…
だが,こんなに気温の高い条件でロングライドなどできる訳が無い.
悶々とした思いを抱えながら,私はいつもよりも少し早い18:00に職場から帰宅し,気が付いた時には Garmin Connect で 北上-盛岡 300kmコース のルートを入力していた.
こんな気温の中走れる訳が無いし,絶対に後悔するに決まっている
私の中のもうひとりの自分がそのように忠告する.
しかし,晩飯を作って食べ,早めのシャワーに入った後,無意識のうちにロードバイクのタイヤに空気を入れ,私の体は近所のスーパーに向かっていた
無理だ,絶対に無理だからやめておけって…
補給食を選びながら,私の中のもうひとりの自分がそのように叫ぶ
頭の中では分かってはいるが,体が勝手に動いてしまうのである.
というわけで,セカンドバイクのLOOK565にまたがり, 21時15分に自宅を出発した.
2.秋田→横手
23時29分,52km地点,大曲通過
真夜中の国道13号を南下する.道路表示の温度計は27℃
日中に比べればマシにはなったが,湿度が高く蒸し暑い.巡航速度25-30km/hくらいの一定のペースでのんびりと走る.
タイムは特に気にしないが,300kmブルベの制限時間である20時間はクリアしたい.2ヶ月前の酒田-新庄ルートでは311kmを15時間41分で走っているし,まあ20時間クリアは余裕だろう (… とこのときは思っていた)
8月26日(土)
0時39分,75km地点,セブンイレブン 横手松原町店で最初の休憩
パンとコーヒーで補給,1Lのポカリを買ってボトルに入れる.
このペースで走れば午前4時には北上に着きそうだ.
15分後に出発
3.横手→北上
横手から北上にかけては国道107号で山の中を走る.
気温は25-21℃でだいぶ走りやすくなった.
しかし,明日の日中には今よりも10℃も気温が高くなるのかと思うとゾッとする.
タヌキ,イタチ,アナグマのどれかだと思うけど,小動物を何度もみかけた
上空は満天の星空.
やっぱり,ナイトランは楽しい.
2時45分,105km地点
国道脇でトンネルの掘削工事をしていた.
24時間体制で工事をしているらしく,こんな真夜中なのにダンプトラックが頻繁に行き交っていた.
ナイトランをしていると不思議な感じがしてくる.
道の先の様子や周囲の景色は見えない.
ヘッドライトで照らされる目の前の舗装路だけを見つめながらクランクを回す.
風の感触と路面の振動を感じ,星空の下,虫の音を聴きながら,淡々とペダルを漕いでいると,すごくリアルな3本ローラーにでも乗っているかのような気分になる.
4.北上→盛岡
3時56分,134km地点,北上市の国道107号と国道4号の交差点に到着
4時9分,138km地点,ファミリーマート 北上4号バイパス店にて休憩
おにぎりを買って食べる.
この間に東の空がすこしずつ明るくなる.
15分ほど休憩したのち出発.
私は普段ソロで走っているから,自分が走っている様子を記録したものは1枚もない.
無伴走単独長距離走のスペシャリスト 戸田真人氏は多くの伝説を残しているが,そのうちのひとつに「走行中の様子をすべてカメラのセルフタイマーで記録した」というのがある (もちろんフィルムカメラの時代).日本縦断2664kmでは.タイムトライアル中であるにも関わらず計300枚撮影し,多い時には1シーンで6度も取り直したりしたそうである.
そのことを思い出して,今回,上の写真の跨線橋の場所で自分もセルフタイマー撮影やってみることにした.
ところが,これがなかなかうまくいかない.
タイマー設定でシャッターボタンを押し,ロードバイクまで戻って跨って走り出そうとしたところで10秒経過でシャッターが切れてしまい,普通に走っている様子の撮影など,どう考えても無理なのである.
戸田氏の偉大さを改めて実感したのであった.
それにしても,このあたりの国道4号線は路面が悪い.
舗装がひび割れだらけでガタガタ,ところどころで上から補修していて段差がありガタガタ.これが北上から盛岡まで延々と続くのである.
タイヤが明らかに路面を捉え切れずに跳ねており,やたらと振動が伝わってくる.やはり,こういうところでクリンチャータイヤの限界を感じてしまう.
6時47分,185km地点,盛岡駅に到着
写真だけ撮ってすぐに出発.
ここまでの走行速度はグロスで19.4km/h,ネットで23.4km/h
まずまずのペースである.
7時30分,195km地点,ローソン 滝沢 大釜千が窪店にて3回目の休憩
買ったのはフランクロール,バナナとコーラ
20分ほど休憩してから出発.
5.盛岡→協和
ここからは仙岩トンネルまでヒルクライムである.
幸い空には雲がかかっており,気温はまだ29℃
しかし,盛岡までは順調だったのだが,ヒルクライムが始まってから急に疲れが出始めた.前回の酒田-新庄ルートでもそうだったが,やはり今の自分は200kmを超えてくるとスタミナ切れになってしまうようだ.
途中の道の駅「雫石あねっこ」にて20分休憩をする.
再出発をして,GarminのClimbProを頼りに,いまにも止まりそうな速度でヘロヘロになりながら登っていく.
しかし,ClimbProの感じがなんだかおかしい…
表示される傾斜と実際の傾斜が合っていないような感じがするのである.それでも,ClimbProを信じて登り続ける.
すると,なんと,ClimbPro中の最大の激坂の中間地点に到達したところで,突然仙岩トンネルの入り口(標高537m)が現れた.どうやら,ClimbProの位置表示が間違っていたらしい.
まだまだ坂が続くと思っていたところで突然到着したので,これは嬉しい誤算(誤表示)であった (笑)
しかし,あとで原因究明をしなければならない.高度補正がうまくできていなかったのであろうか?
国道46号の秋田側ルートはなかなか景色がよい.紅葉の時期に来ると良さそうだ.
しかし,空はカンカン照りの晴天 (泣)
ダウンヒル中に急速に気温が上がる.
加えて,路面は,先ほどの国道4号線以上に状態が悪かった.あまりの振動の酷さでフレームに取り付けた携帯ポンプを途中で落としてしまい,取りに戻った.
時速50km/hでダウンヒルをしているとハンドルとサドルから振動が激しく伝わってくる.
これだからクリンチャーは… (以下省略)
途中でババヘラポイントがあったが,惜しげも無く通過する.
私は今,エアコンの効いたイートインコーナーでコンビニアイスを補給することを所望している.既にボトルも空っぽだ.
しかし,なかなかコンビニが見つからない.
田沢湖入り口にコンビニがあったが,反対車線だったので通過してしまったのは失敗であった.
道路の温度表示は35℃.つらい走りが続く.
11時20分,242km地点,ファミリーマート 仙北田沢湖真崎店にようやく到着.イートインコーナーもある!
アイスを食べ,麦茶とロックアイスを買ってボトルに入れる.
20分ほど休憩してから出発.
しかし,ここからが大変であった.
頭がクラクラしてまともに走れない.
ただの平地なのに,クランクを回せなくなって,途中で立ち止まってしまうのである.
10分走ったのち15分日陰で休憩して息を整える… こんな感じの走りを繰り返しながら,なんとか前進する.
12時31分,253km地点,角館のオアシス「雲沢観光ドライブイン」に到着.
しかし,店内はまさかのエアコン無し
私は今,とても後悔している.
あぁ,やっぱり来るんじゃ無かった
こんな日に走れるわけがないじゃないか
だから無理だと言ったのに …
エアコンのない店内で,椅子にすわりながらそんなことをボンヤリと考えているうちに,3人の客がここの名物「自販機うどん」を食べて出て行った.
だが,私はもはや何かを食べたり飲んだりする気力すらない.
とにかく,はやく帰って,エアコンの効いた部屋でゆっくりしたい.
もしも輪行袋があったなら,角館駅でDNFしてしまったかもしれない.
しかし,私は昔から,自宅発着のツーリングやロングライドにおいては輪行袋を持たないことを自分の中での基本的なルールとしている.
荷物を減らしたいというのもあるが,どんなに時間がかかってもよいから,とにかく何がなんでも自走して帰ってくるのだ… という覚悟を持って走りたいからある.
(ちなみに,手に負えないメカトラなどで自走できなくなったときには,タクシーかレンタカーを使うつもりである)
ぼんやりしていても仕方がないので,ゆっくりと走って帰ろう.少なくとも300kmブルベの制限時間,20時間には間に合うだろう…
フラフラになりながら走って,
14時56分,272km地点,道の駅 協和に到着.
ここのドライバー向けの休憩室はエアコンがガンガンに効いていて気持ちがよく,冷水機もあり,少し生き返ることができた.
しかし,時計を見ずに畳コーナーで横になって休憩していたところ,あまりの快適さに,ついのんびりし過ぎて,気がついたら40分も経過していた.
このままでは20時間に間に合わない可能性が出てきたので,急いで出発をする.
出発はしたものの,やはり力が出ない.
再びフラフラになりながら走って,16時12分,275km地点,国道46号と13号の 協和の交差点に到着
ブルベ基準の20時間以内に走るためには,あと1時間で残り25kmを走らなければならない.普段の自分なら可能だが,今はどう考えても無理だ…
この時点で20時間は諦めることにした.
ちなみに,昨日の出発からここまで,道路上ですれ違ったサイクリストはゼロ.やはり こんな日にロードバイクに乗るバカは私だけ だったようだ…
6.久しぶりの出会い
20時間も諦めたのでトボトボ走って,
16時30分,279km地点,ローソン 大仙協和船岡店にて休憩
普段ならこんなところで休憩はしないが,今日はもう限界なのである.
ここはイートインがないので,店舗の外でかき氷を食べていたところ,2台のロードバイクがやってきた.
オヤ? 俺だけじゃ無かったんだ
同じバカ同士ということで,こちらから挨拶をしようとしたところ,向こうから先に声をかけられた…
「あれっ,◯◯先生ではないですか?」
「お久しぶりです,S です!」
私:「なんだ,S君か」
実は,私は某教育機関に勤務している.
いまからちょうど4年前,2019年の夏だったと思うが,私が担当する必修講義を受講していた当時1年生のS君とB君が私の部屋を訪ねてきたことがあった.
S君は自転車部に所属するローディーであり,最近水泳も始めた
B君はもともと水泳が専門だが,最近ロードバイクを買ったとのこと
ついては,トライアスロン部を立ち上げたいので,顧問になってくれないか… とのことであった.
私の専門はロードだが,実は過去に一度だけトライアスロンの大会に出たことがある (成績は散々だったが).だから一応 ”経験者” ではあるのだ (笑).
ということで,二つ返事でOKした.
ただし,いきなり部を設立するのはハードルが高いから,最初は同好会から始めてみてはどうか,とアドバイスをし,その日は楽しい自転車談義をして終わった.
ところがその後,2020年からのコロナ禍により,結局何も活動をすることができずに,トライアスロン同好会の話は立ち消えとなってしまった.
S君に近況を聞いたところ,院に進学したとのことであった.
もう一人のローディーはS君の後輩の学部生である.
二人は私とは逆方向に走っており,これから大曲の花火を見に行くのだという.「あぁ,今日だったか」と思い出した.
S君は先月の矢島カップの鳥海山ヒルクライムにも出たそうで,本格的に走っているようである.乗るのはリムブレーキ仕様のKUOTA,コンポはアルテグラ,ホイールは中華カーボンディープリムのチューブラー
S君が自分で比較検討して考えたベストな仕様が,リムブレーキ&チューブラー ホイールだったとのこと.
さすが私の教え子である (笑)
(ちなみに私は何もアドバイスはしていない)
他にも彼のバイクには随所に彼なりのコダワリが見えて,ロードバイクのことをよく勉強している様子であった.
なお,S君から最近のロードパーツに関して,いくつか興味深い情報を得た.少し長くなるので,本レポートの最後にまとめて記すことにする.
コンビニにて,S君たちと20分ほど楽しい自転車談義をしたのち出発.
この後の小さなピークは楽に登れたが,ダウンヒル中に力が抜けてしまい,再びフラフラになりながら走る.
18時33分,自宅到着
走行距離 302km
所要時間 21時間18分,走行時間13時間25分
グロス平均速度 14.2km/h,ネット平均速度 22.5km/h
やっと帰ってこれた.
ちなみに,フラフラになり始めた仙北のコンビニから自宅まで60.2kmの走行に7時間12分を要した.この区間のグロス速度は8.3km/hである.
今回の走行中のGarminの温度をみると,やはり最後の60kmで気温が急に高く(35-40℃) なっていた.
7.まとめ
・ やはり最初に感じた違和感.金曜日のもうひとりの自分は正しかった.
(でも,キツイと分かると,またやってしまいそうな自分が怖い)
・ 盛岡までのナイトランはとても楽しかった.
・ 今回のコースについては,もうすこし涼しくなってから再挑戦したい.
・ 20時間は切れなかったが,道の駅で休憩しすぎたお陰で S君たちと偶然会えたのは収穫であった.
終わり
これまでnoteに,ロードパーツに関する私の独断と偏見的意見を書き連ねてきたが(例えば,この記事とかこの記事),S君から興味深い体験談を聞いたので,ここに記しておく
(1) 油圧ディスクブレーキの特性について
S君はいまのロードフレームを買う前に,油圧ディスクブレーキ仕様も試乗して徹底的に調べたらしい.ところが,ダンシングでバイクを強く振るとディスクブレーキから擦れる音がすることがわかり,それを受け入れることができずにリムブレーキを選択したそうである.
おそらく,ホイールかフレームのどちらか,または両方の剛性不足が原因なのだろう.
ディスクブレーキの音鳴り…
実は私が気になっている最大の欠点がそこ
いくら引きが軽いとか雨天でも制動力が高いとか言われても,原因不明の音鳴りがして,その調整も難しいなんて,絶対に受け入れられない.
CBN blogには,音鳴りは解消方法が無いので「あきらめる・悟りをひらく」と書いてあった.… っていうか,機械部品として欠陥品だろ そんなの.(チューブレスタイヤと同様,こんな欠陥商品が普通に普及してしまっている自転車業界に呆れている)
(2) GP5000とVittoria STRADAチューブラー の違いについて
S君は以前はクリンチャータイヤの定番,コンチネンタルのGP5000を使っていたらしい.しかし,Vittoria STRADAに変えたところ,チューブラーの方がやはり振動吸収性が高く,乗り心地が良いとのことであった.
実は私もその点が気になっていた.
Vittoria STRADAは,いわゆる”練習用”と呼ばれる安価なチューブラーである.チューブラータイヤの価格はそのまま乗り心地に比例する(と私は昔から思っている)ので,高いクリンチャータイヤと安いチューブラータイヤはどちらがよいのだろう? と気になっていたのである.
Vittoria STRADAクラスでもGP5000より良いというのは,興味深い情報である.今度自分でもSTRADAを試してみようと思う.
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