「我々は消費者だ。ライフ・スタイルに仕える奴隷だ」
ナッジについて、Wikiにはこう書いてある。
ナッジは、行動科学の一概念。人々の行動や意思決定に影響を与える。陽性強化と諷喩。
小難しい言葉で嫌だね。
陽性強化:褒めたり褒美を与えたりして、ある行動をさせること
諷喩:それとなく導くこと
行動経済学者セイラー氏と、法学者サンスティーン氏が、広めた概念だ。
ナッジ・ユニットは、世界中に存在する。
環境省による説明(PDF資料)の一部 ↓
生活とは、選択の連続である。
松:竹:梅 は 2:5:3の割合で購入される。安すぎも高すぎも嫌がる、極端性の回避という心理からだ。
これは、ゴルディロックス効果と呼ばれている。
英国童話『ゴルディロックスと3匹のくま』。ゴルディロックスちゃんは、くまさんのお家で、熱すぎず冷たすぎないスープを飲む。
これをさらに操作的にすると、デコイ効果(おとり効果)になる。
ある物やサービスの売れゆきが悪い時、わざと質の悪いものを用意して並べると、前より売れるようになる。
・階段が使われるよう、見つかりにくい場所に設置されたエレベーター
・誘導したい先へ向かって床に描かれた、足跡マーク
・「〇名がこの宿を予約しました」という、真偽不明の表示
・損失回避の感情を起こさせるため、商品を一旦入れさせる、仮想ショッピング・カート
効果にはそれぞれ名前がつけられ、小分類は数えきれない程ある。
世の中は、右も左も、ナッジだらけだ。
ナッジはそんなに悪いものではないーー
ナッジは悪いものであってはならないーー
こういった注釈とセットで、流布されている。
企業による使用はもちろんのこと、政府やWHOなどの組織も。行動変容の方法として、みんな、ナッジを推奨している。
ナッジへの投資も莫大である。
ナッジの “勝利” を示すために、結果は、選別されている。
なぜなら、ナッジが「効かないこと」を見い出した研究は、注目どころか発表もされないからだ。注目されないから発表されない。(出版バイアス)
それでも、一部の学者たちは、ナッジの有効性を真剣に疑問視してきた。ナッジングの「正しくなさ」について、コメントしてきた。
それらは、ほとんど無視され続けている。
一般大衆は、ナッジのことをこう思っている。しょせん、酒を飲む量を減らそうとするだとか、些細なことだろうと。ナッジの暗黒面について、大して考えていない。
ナッジングがターゲットにしているのは、私たちの、無意識に近い決断だ。比較的コントロールの難しい、本能や衝動の類だ。
企業は、わずかなコストで・気付かれもせず・いとも簡単に、私たちの選択に影響を与えることができると、確信している。
そして、こう言うのだ。「これは、君たちのためにも、良いことなんだよ」
このような商品をおもしろグッズや便利グッズと呼んで、歓迎してあげたい気持ちは、なくはないのだが……。はたして、これらは、本当に必要な物なのだろうか。
ナッジ理論の生みの親として、セイラー博士は、ノーベル経済学賞を受賞した。メディアからは、大賛辞がおくられた。
ナッジに賞を与えるということは、「ナッジは優れたものである」と、世間にナッジングしたようなものだ。
セイラー氏の研究は、「人間は合理的な生き物ではない」という考えを軸に、展開されている。同じく人間であるナッジャーたちが、そんな私たちを、代わりに導いてくれるそうだ。
なんとも、滑稽な話である。
ハンナ・アーレントの墓にでも行き、ナッジ理論にノーベル経済学賞が与えられたと囁けば、さぞ嘆くことだろう。
そういうことを繰り返してると、自分が選挙で誰に投票したいのかも、わからなくなるのよ!とでも聞こえてきそうだ。
参考文献https://www.membershipinnovation.com/insights-and-ideas/an-overview-of-the-various-types-of-nudges
https://uk.news.yahoo.com/nudge-theory-doesnt-says-evidence-145037529.html