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【蛇足更新】クスノキ精油のアロマレビュー

いや〜〜〜平成林業。の執筆書き溜めリストにはラベンダー精油の官能評価やら蒸留日記の整理やら24年度営農計画やらいろいろ記事を書き進めていかねばならないんですが、いかんせん手が抜けない内容なので時間がかかってる次第です(ノД`)
口が裂けても1,2ヶ月遅滞させてるだなんて言えない…(言わず書いた人)

さて!
チカゴロの息抜き記事といいますか、そのくらいのひとくち更新のつもりで書いていきまっす。

今日のテーマは香り、アロマ分野で思ったこと発見したことをつらつらと書き綴ってみる回としまして、、、

クスノキ系精油についてのテーマでっす!

クスノキ精油といえば、ラベンダー精油をこよなく愛する側の人間からしたら、ラベンダーの特徴的アロマ成分であるリナロールをなんと90%近く含み、ほぼリナロールの塊!ともいえる位置付けのエッセンシャルオイルなんです。サクッと述べると!

「リナロールという芳香分子を主に含んでいる」という点で言えばラベンダー精油と共通する部類の精油なんですよ〜。
ちなみに前置きしておきますが、ラベンダーと同じ香りはまったくしません(笑)

普段からアロマを楽しまれている方々にはクスノキ系樹木精油をどのように捉えて扱っているのかは未知で、実際のところを伺ってみたいところなんですが。。。

とり急ぎ、エフゲニーマエダとしては香りトレーニングの一環としてどんな香りなのか?を主題にレビューしていきたいと思います。


■about Camphor tree/クスノキ/楠。

クスノキ/楠は学名Cinnamomum camphoraというクスノキ科樹木で、学名のラテン語"シナモマム"が読める人はお気づきでしょうが、甘い香辛料シナモンと近縁の植物/樹木ですね!
ということは、香料が採れる香木の類となります。
(楠をHo woodと英読みするのはあくまで精油業界からの俗名のようです)

どんな香料が採れるかというと、種小名にカンフォラとある通り、樟脳/カンファーが採れる!というのが通説ですよね。
クスノキの木材はその優れた防虫効果を発揮するカンファーを含んでいて、着物類を虫食いから守るクスノキタンスなんかは有名ですね。
(残念ながら食利用できる系のスパイス香木ではない…笑)

補足ですが、クスノキ(Cinnamomum camphora)は北海道には
生えておりません!せいぜい植物園の温室で見られるくらいです!

岩見沢市バラ園の付属南国植物園で見られたよ!

主に日本や各国で見られる花の香りをテーマとしている国産香水メーカーである武蔵野ワークスさんのブログ記事で発見した情報なのですが、、、

このクスノキはタネから発芽させて苗を育てると、うち何割かの苗木がカンファーを全く作らずリナロールばかりを作るケモタイプ個体に生まれる性質があるそうで、それを芳樟(Ho-sho)と呼ぶそうです。
分類学的に見ると、クスノキの変種であるC. camphora var. glaucescensで学名が設けられているのも確認できます。

これ、植物のゲノムや香りの生産を学ぶおいらにとってみてもすげーおもしろいな〜と思った部分で、そのクスノキが作る香り系統?成分を大きく二分する性質によって天然樟脳および天然リナロールの生産が支えられていたりします。

植物分類学の世界。英国Kew植物園での見解だと…

世界的生物研究の権威である英国のキューボタニカルガーデンでの情報だと、シナモンと近縁種であるとして設けられた学名のCinnamomum camphoraはシノニム(旧名)扱いされているようでした!

Kew Botanical Gardenのレコードリストでは楠と芳樟の2種どちらとも存在しているようで、それぞれ
クスノキ:Camphora officinarum var. officinarum
芳樟:Camphora officinarum var. nominale
と呼び分けられていました!

クスノキは欧米圏の方々からすると、ローレル(月桂樹)の仲間だとするイメージが強いようです。

何種類か存在するクスノキ精油たち。

厳密にはそれぞれ似たり寄ったりでモノはかなり違っているクスノキ精油たち(例外あり)

去年のお話で、ラベンダー精油の主要構成成分のひとつであるリナロールは単体だとはたしてどんな香りがするのか?という大いなるナゾを解き明かすために、リナロールの塊!と言えそうな市販精油をいくらか探して回りました。
クスノキ(C. camphora)にこだわらず「リナロール+精油」などでググってみると、市販で上記のようなメーカーの精油たちが比較的カンタンに入手できます、できました。
みんなそれほど値の張る精油/香料ではないようです。

結果的に、①ローズウッド精油 ②ホーウッド精油 ③ホーリーフ精油
という精油タイプにたどり着きました。
なんでも、彼ら3つの精油は精油成分のデータ内訳がLinalool含有量が約90%を占めるリナロールの塊っぷりを誇る精油なのです。

植物学サイドからそれぞれ精油を解説してみる。

それぞれ精油のプロフィールをサクッと解説すると、、、

ローズウッド精油

ローズウッド精油は、ひとくちで言えば南米(ブラジルあたり)に生育するAniba rosaeodoraという樹木の木材or葉っぱから蒸留抽出される精油のようです。(ローズウッド:俗名と呼ばれる赤い木材の木は複数種存在するため)

で・す・が、リナロール生産の為にAniba rosaeodoraが切られ過ぎてしまったことによりワシントン条約に引っ掛けて輸出規制を行った為、その代替精油としてお次は東アジアに生育するクスノキ/芳樟カンラン科リナロエウッド(Bursera delpechiana)に生産素材の主軸が移ったというワケなんですね。
なので、ローズウッド精油も芳樟精油も業界的にいえば香りは”ほぼ同じ”とされているハズなのです。

注釈お詫び:この子はクスノキ科樹木ではなくカンラン科樹木なのですが
精油成分の主体がほぼリナロールという点で同じだったので記載しています

注意:ローズウッドはクスノキ科ではありません

ホーウッド精油

市販品での名称はホーウッド/Ho woodとされていますが、しっかりクスノキと同種のCinnamomum camphora(芳樟)木材から水蒸気蒸留で抽出されている木材精油になります。
厳密にいうと変種のvar. glaucescensの方の木材ですけどね。
学名の種小名ではカンフォラとは付いていますが、樟脳/Camphorは含まないリナロール主体の精油であるハズです。

ややこしいんですが、芳樟ではないTrueクスノキ(C. camphora var. camphora)をアフリカ大陸の果てマダガスカル島に移植して精油を採ってみたところ、樟脳ではなくシネオールが大量に湧いて出てきた!驚き!
というシネオールケモタイプの精油が後述するラヴィンサラ精油になります。通称名ラヴィンサラはマダガスカル島での現地語のようです。


ホーリーフ精油

ホーリーフ(Ho Leaf)精油は、つまるところ上記ホーウッド精油を生み出す芳樟の葉っぱから水蒸気蒸留で抽出した葉っぱ精油です。木材由来ではなくクスノキ(芳樟)の葉っぱから抽出したエッセンシャルオイルであるというのが鍵ですね。
精油分類の位置付けで言えば、シナモン樹皮精油があればシナモンリーフ精油があるのと同じ扱いです。
まんま同じ植物/樹木のA.木材かB.葉っぱどちらから精油を得たか?の違いになりますね。

ホーウッドとホーリーフ、市販される精油の名称がとても紛らわしいのですが、香りに敏感な人だとアロマ風味がしっかり違って感じられると思うのでしっかり理解しておくことがポイントかと思います。

※クスノキのケモタイプ精油たち

クスノキ(C. camphora var. camphora)という植物種が生み出せる精油には大きく2タイプ存在しています。

まずひとつはクスノキそのものの象徴であるカンファーケモタイプ。
学名の由来にもなっていますね。

でお次がクスノキのシネオールケモタイプであるラヴィンサラ精油。
クスノキの原産地から遠く離れたマダガスカル島に植えて育てたっけカンファーじゃなくシネオール作るようになっちゃった!というヤツです。
"ラヴィンサラ"はマダガスカルでの現地語のようです。


では、いざ香りを味わってみる。

ホーウッド精油(中国産芳樟木材)

念のため、Cinnamomum camphora var. glaucescensの木材精油です。
クスノキ木材の精油、というとどうも樟脳/カンファーのイメージがついて回りますが、これはカンファーをほぼ含まない芳樟の木材精油という位置付け。

香りを試してみると、意外と香りが淡くて穏やか。
リナロール90%となるとこのような淡くなだらかな香りになるのか…と感心してしまうほど。後述葉っぱ精油に比べるとやや重めでベースノート寄りの性質を感じます。
生まれ(親木)は同じなのに発現遺伝子の差で全く樟脳を含まなくなり、こうも香りがガッツリ変わってしまうのは素直に驚嘆です。植物ホントすごい。


ホーリーフ精油(中国産芳樟葉っぱ)

対してこちらはCinnamomum camphora var. glaucescensの葉っぱ精油

基本的には上記ホーウッド精油と"ほぼ同じ香り"なのです。
ですが、香りの嗅ぎ分けが得意な方からするとホーウッド精油に比べてほんのり絶妙に爽やかさや軽やかさを感じる風味かもしれません。ハーバルと言っても差し支えないかも。。。
敏感な人にとってはより爽やかさ軽やかさが強調されて感じるのかもしれません。
精油中のLinalool割合は90%にもなるのですが100%ではないので、残る10%未満分に含まれるさまざまな香り成分がこの絶妙な風味の差を生み出しているといえます。

芳香分子Linaloolの解説では、よく「スズラン様のフローラルノートが特徴です」と説明されてるのですが、そもそもそんなに香りが強くないんですよねぇ…
スズランもユリの涼しげな香りのイメージなんですが、そうとは思わず…フローラルノート得意なハズなんですけどね。


ラヴィンサラ(マダガスカル産クスノキ)

東アジアからは遠く離れたマダガスカル島育ちクスノキのCinnamomum camphoraの精油なんですが、いわゆるシネオールケモタイプです。
香りを嗅いだ初手の感想は、ここまで香りが変わるか!!と驚くほどの変貌っぷり。
これぞ同じ植物種でも育つところが違えば香りもガッツリ変わる植物の持つ不思議な力ですよね。
香り味に抱く印象としては、おもしろいくらいにローズマリーとユーカリを足して2で割った香りがします。
それくらいローズマリーorユーカリ寄りな強くスーッとした香りがラヴィンサラ精油では味わえます。

しかしおもしろいですよね、クスノキって所と育て方によればたった1種からCamphor, Cineole, Linaloolの大きく3つのケモタイプ精油を作り出せる驚異的な樹木という。。。

にしても学名はCinnamomum camphoraなのか。。。
(植物学的には精油合成酵素が樟脳orシネオールの2手を作りやすい為)

ローズウッド精油

ローズウッド精油はクスノキ科植物から得られる精油ではないんですが、同じく精油にリナロールを90%近くも含む芳樟精油とかなり似た位置付けの精油。
なので香り味はそこまで強い香りはありませんが、クスノキ精油に比べてフラワー感を強く感じる精油となっています。
それもリナロールに特有なスズラン様…などではなくバラのように濃厚なフローラルさを感じる香りなんですよね。

むしろそのバラを思わせるフローラルな風味が付加されているのが、名の通りローズウッド精油なのかもしれません。


●クスノキ精油を扱う上でのワンポイントアドバイス!

付録的にクスノキ精油もといリナロールを主体的に含む精油の上手い活用術について書いておきまっす。

上述したとおり、クスノキ系のリナロール(Linalool)を主体的・ほぼ単一に含む精油はフラワー系精油やシトラス系精油のように、コレといってハッキリした強い香りを持ちません。
再度述べますが、ラベンダーとソックリな香りというワケでも断じて無いのです。

実際のクスノキリナロールの香りイメージとして100m先に小さく可憐なスズランの花畑が広がってるくらいの淡いイメージを思い描くくらいの香りなんですよね。
それがコモンラベンダー精油の香りを繊細なものに至らしめているユエンだったりもするのですけれど。。。


リナロールの効能として(ほぼ)確実に共通して言えるだろう効能としては、神経のイラ立ちの鎮静や気持ちを穏やかに沈める効果でしょうか。
しかしこれには条件というか、さらに効能を伸ばすテクニックがあります。

それは「香りが強めの精油・アロマをブレンドしてあげること」です。
特定のいずれか精油、というワケではなく各個人お気に入りの香りにブレンドしてあげることなんですよね。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/52/2/52_112/_pdf

というのも、近年に鹿児島大学でリナロールの効能を探った研究論文(上記)がありまして、その研究では『リナロールを含んだ香り・アロマを心地よいものと認識することが必要不可欠』という結果が示されたんですよね。

その実験結果を踏まえると、アロマテラピーユーザーそれぞれのお気に入りの精油・香りにLinaloolを多量に持つクスノキ精油を適宜ブレンドすることによって、より高い自律神経の整い、リラックス効果を生み出すことができるらしいのです。


っと!
論文を読んでみての応用リコメンドな付録パートでした!

若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。