熱い愛
夜の恵比寿。缶ビールを片手に野外映画を見ている私は、少し酔っていた。
5パーセントのアルコールのせいだろうか
夏の夜風のせいだろうか。
はじめてのピクニックシネマにきた。
上映開始は19時30分だったが、レジャーシートが芝生に敷き詰められていた。
初参戦の私たちも早めにレジャーシートを引いておき、18時頃にはその上でスタンバイ。
段々と、あたりは暗くなっていき目の前のマンションの灯がぽつぽつと点灯していった。
このピクニックシネマは6月上旬から1カ月近くの間、週末に選りすぐりの映画が上映されている。
一通り上映リストを見て、絶対にこの日に行くと決めていた。
映画「湯を沸かすほどの熱い愛」
友人と同じくしてマイリストにずっと入っていたこの作品は、中野量太という新人脚本家の初作品にして、作品賞や女優賞など数々の賞を受賞した名作である。
余命宣告を告げられた母が最期に果たすと決めたことは、家出した夫、いじめを受けている娘、そしてつぶれかけの銭湯を立ち直らせることだった。
最高なシチュエーションで、家族や通りすがりの人にさえにも愛情を注ぐ母の最期の姿を見た。
自分と母を重ねてみるにはあまりにも
切なすぎるのでやめた。
私には映画の中でしびれるシーンがあった。
まだ娘たちに病気のことを伝えられていない母は、旅行先で伝えることを決意する。
海沿いの店で蟹を食べ終えた後、娘たちに先にお店を出ていてと伝える母。そして耳の聞こえない店員の女性を突然ビンタするのだ。なんの前触れもなかったので衝撃的だった。
店員の女性は杉咲花ちゃん演じる娘の実の母だったのだ。赤子の声も聞こえない19歳の母は娘と夫を捨てて家出をしたのである。
お店を出た後、娘に始めて本当の母親の存在を伝える。直ぐには受け入れられない娘と実の母が泣きながら手話をするのだ。
実の母「どうして手話ができるの?」
娘「母(育ての)がいつか使う時が来るから覚えておきなさいって」
私は思わず暗闇で息をのむ。
親子での最後の旅行と分かっていながら、
どうして実の母親の存在を伝える必要があったのだろうかと疑問に思ったが、その理由はすぐ分かった。
母もまた、自分の母親に捨てられていたのである。そんな母の最期の望みは母親に会いたいということだった。どんなに辛い仕打ちがあろうと、結局は母親への愛は消え去らないということだろうか。
母親の愛を受けてこなかった母親の愛。
なんか物凄くじーんとした。
隣にはボロボロ泣いてる友人
その友人の記事も是非ご覧ください💙
夢中だったので、見終えた後も買った缶ビールが半分以上残っていた。それを一気飲みしたせいか、その後の記憶があまりないなと、翌朝シャワーを浴びながら思った。
熱い熱い愛をみた。
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