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孤独死現場の現状回復費用は遺族に請求できるの?

遺品整理現場での知っ得シリーズ

さて毎度同じ話題で恐縮ですが、今回も表題の「孤独死現場の原状回復費用は請求できるのか?」について考えてみたいと思います。

自分の事務所のブログなどでは既に発表済みの内容ではありますが、こちらでは記載していなかったと思い改めて書いておきますので参考にして頂ければと思います。

これまで、孤独死現場の原状回復費について出された判例は昭和58年に出されたものが参考となっており、それ以外の事例については基本的には自殺の判例を基に考えて孤独死の場合はどうなるのか?という形で考えていました。

ご存知の通り、現在は国土交通省の出している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が賃貸物件の退去の際の原状回復費に関する貸主と借主の負担割合を示したものとして浸透してきており、2020年の4月1日にはこのガイドラインに沿った内容で民法も改正されました。

そうした中でどちらかというと借主側の保護が図られている昨今では昭和58年の判例のように孤独死現場の原状回復費用を借主側に支払うようにと命じた判例は今後は出ないのではないかと私は考えていました。

しかし、少し前に判例を改めて調査していた際に東京地裁の判例(平成29年)で、孤独死現場において通常より高額な原状回復費用の支払いを入居者側に支払うように命じた、昭和58年と同じ内容の判例を見つけました。

この事例は入居者が孤独死した後、2ヶ月程後に発見された事案で、遺体から体液等が漏れ死臭も部屋全体に渡って充満していたというものです。

これまではこうした孤独死で発見が遅れて遺体が腐乱してしまったような事案であっても、入居者には故意も過失もないことから、逸失利益と同様に原状回復費用の支払いも入居者側には責任はなく、遺体の腐乱によって生じた損失については入居者側は負担しなくても良いのではという考え方がありました。(弁護士の先生の間でも意見は別れますが、、、)

ですので、これまではこうした主張をされてしまうと貸主側としても強く請求することはできないのが実情でもあったのですが、上で示した判例のようにガイドラインが浸透した後でも、孤独死(腐乱)したようなケースでは通常より高額な原状回復費の請求が認められることがあると判明し、今後の賃貸経営を行っていく上で大きな影響が出てくると予想されます。

これまでは、孤独死のケースではどちらかというと貸主側の持ち出しが多くなりがちでしたが、今後は地裁判決とはいえ、貸主側の原状回復の請求を認めた判例が出たことで、遺族や連帯保証人に対しても貸主側の主張の根拠を補強する材料として使用できることになりますので、大家さんや管理会社の方にとっては朗報とも言えますね。

ただ、一般的に事故物件とよばれるケース、特に孤独死のケースではその判断は事案毎に変わってきますので、参考判例があるからといって、印籠よろしく遺族や連帯保証人へ請求を突きつけるかのように出してしまうと、相続放棄をされてしまったり、遺族側と揉めてしまう原因ともなりますので、孤独死のような難しいケースでの請求は専門家に相談した上で冷静に対処してくださいね。

本来でしたら2020年を目途に国土交通省が事故物件用のガイドラインを取りまとめる予定で心理的瑕疵に関する専門家の会合も行われていましたが、第一回以降は何の発表もない状況です。

個別にメールで進捗状況を問い合わせを行ってもいますが、まったく反応はない状況ですので、コロナの関係もあり中断してしまったのか?と危惧しているところです。

コロナ禍で自殺や孤独死が増加する今の時期にだからこそ、事故物件用のガイドラインは貸主側と遺族側とのトラブルを未然に防ぐのに大きく役立つはずですので、国土交通省には是が非でも早急のとりまとめをお願いしたいと願っています。

当事務所でもご相談は無料でお受けしておます。他府県の方でもご相談に応じますのでお気軽にご相談くださいね。

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