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ビジネスパーソンのための交渉術⑥

こんにちは、ビジネスエッセイを発信している松永隆です。
本記事は、拙著『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 日本人の交渉のやり方』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、編集したものです。
今日は得てして見落としがちな ”交渉スケジュールのマネジメント” に関し、私が経験したサッカー界における実際の国際交渉に則して考えていきたいと思います。

実例での交渉スケジュール管理

これは私が日本サッカー協会に勤務中に毎年経験した交渉ですが、海外のサッカー協会から当該国の監督、コーチ、ダイレクターとして日本人コーチの派遣依頼が毎年5~10件ありました。そのスケジュール管理をご紹介したいと思います。

実例での交渉スケジュール管理

これは私が日本サッカー協会に勤務中に毎年経験した交渉ですが、海外のサッカー協会から当該国の監督、コーチ、ダイレクターとして日本人コーチの派遣依頼が毎年5~10件ありました。そのスケジュール管理をご紹介したいと思います。

・前提となるファクターの整理

まず、スケジューリングの前提条件になるファクターの整理をします。ファクターが多い場合は読者の皆さんも同様に整理することをお勧めします。さて、このケースのファクターは以下のようになります。

Jリーグのクラブと契約するプロコーチの契約は大体2月にスタートして翌年の1月末に終了するというサイクルになっています。Jリーグの場合リーグ戦は12月初めに完了するので、その前の11月後半から12月にかけてコーチの方々の来季の契約更改が行われ、クラブを移るコーチが大量に発生することが常でした。

我々が手がけていた海外派遣の候補者の募集・選考も、できるだけ多くの候補者の中からベストの方を選ぶためにこの時期、つまり11月後半から12月に合わせて行っていました。従い12月に候補者の面接を行い、我々が選考してから先方協会に紹介し、人選が了承されたら先方協会との契約交渉に入るという手順を踏んでいました。

その後交渉を完了させてから1月に理事会決定をすませて2月初めに赴任という段取りです。理事会決定を1月中旬にはしてもらわなくてはならないため、私はいつも年末年始の休み中も交渉を続ける状態でした。11月の候補者公募段階から、日本の業界慣習に合わせて翌年2月から契約を開始する必要があったことが、全体スケジュールを非常に余裕のないものにしていました。

・実際のスケジュール案を作成

次に右記のファクターを反映した我々の実際の業務スケジュールを見てみましょう。

11月初旬 候補者募集要領をトップクラスの指導者ライセンス保有者にメールで送信

11月末 公募締め切り

12月初旬 書類審査にて面接する候補者の決定

12月中旬 候補者面接実施

12月下旬 各国サッカー協会に推薦する候補者を内部決定

12月下旬~1月初旬 各国サッカー協会に選考した候補者を推薦、契約条件交渉

1月初旬~中旬 候補者と契約条件の交渉

1月中旬 派遣の理事会決定

1月中旬~1月末 赴任前準備2月1日赴任

・交渉をスケジュールに沿って進めるための工夫

さて、スケジュールを策定しても交渉は相手があってのことなので必ずしもその通り進むものではありません。特に海外との交渉は思い通りに行かないことの方が多いと言わざるを得ません。

そこで、諸々の工夫が必要になってきます。本件でも海外のサッカー協会に我々が選考した候補者を推薦しても他にも候補者がいないのか? だとか、候補者を面接のために連れてきてほしいなどと言われることもあります。

あるいはもともと日本よりものんびり時間が流れている国が多いので、推薦した候補者を受け入れるかどうかの返答も、契約条件の提示に対しての返答もすこぶる遅いのです。そこで先方協会交渉担当者である専務理事さんに早く返事をもらえるようにあらゆる手段を尽くしていました。

具体的にはまずSNSで先方の携帯に、候補者が決まったら履歴書を添付して送付。返事は数日後にくれるように要請。候補者の履歴書に対するオーケーをもらったら、用意していた契約書案をメールで送付すると同時にSNSで契約書案を送った旨先方の携帯にメッセージを入れる。2~3日、遅くとも4~5日後の回答を要請等々です。

こうして契約書案に対する一次回答を受け取ってからもSNS、メール、国際電話、国際WEB会議などあらゆる手段を駆使して早期の交渉妥結を目指していました。この例では先方協会との交渉期限を1月初旬に設定し、危機感を持って交渉のスケジュールをコントロールしていました。

読者の皆さんに気をつけて頂きたいのですが、このように取り巻く諸環境、社内の事情などから交渉のデッドラインがほぼ決まっていることが多いものです。

それにもかかわらず、そのデッドラインまでの過程を甘く見ていた結果、最後に大慌てをし、追い詰められて交渉において不利な条件を飲まされてしまうということが起こりがちです。スケジュールの進捗管理において油断は禁物なのです。

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