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[脳から考察]クリエイティブになるためにはどうすれば良い?(Introduction)

こんにちは!SIGNCOSIGNライターの中野です。普段は東京大学で脳神経科学について研究しています。さて本題ですが、皆さんはこんな議題を、ネットや書籍などで見かけたことがありませんか?

「クリエイティブになる」ためにはどうすれば良いのだろう?

この議題には様々な人たちが各々の持説に基づいた「応え」を提案してきており、またそれらは多くの人たちから反応を集めています。つまり、そこには「応えるだけの需要」があるというわけです。

『クリエイティブになりたい!』

あなたも、一度は考えたことがありませんか?

かく言う私も、そのうちの一人。よし、Google先生に相談だ。すると、そこにはもっともらしい「応え」がズラリ・・・。しかし、実際に「クリエイティブになれた!」という声はなかなか見当たりません。どうやらこれまで語られてきた「応え」だけでは、なかなか世間にとっての本当の「答え」にはなっていないようです。

それはなぜでしょうか?私が考えるに、主な原因は以下の2つ。

1つは、そもそも「クリエイティブ」そのものを理解していないケースです。「クリエイティブとは何か?」を聞かれたとき、自信をもって明確に答えられる人はきっとあまり多くないのではないでしょうか。

もう1つは、今までに提案されてきた「クリエイティブになるための方法」があまりにも漠然としていること。後述しますが、既出の方法はどれも「クリエイティブな人に共通していること」を抽出し、もっともらしく並べたに過ぎないように見えます。

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本記事では以上のことも踏まえ、今後の記事に向けたイントロダクションとして、以下の3つの視点から「クリエイティブになるための方法」を探ってみたいと思います。

1. そもそも「クリエイティブ」ってどういうこと?

まず広辞苑で調べてみると、以下のように記されています。

クリエーティブ(creative) … 創造的、独創的

・・・ふむ。では、「創造」や「独創」とは?

創造 … (1)新たに作ること、新しいものを造りはじめること (2)神が宇宙を造ること。
独創 … これまでにないものを新しく作り出すさま。

どうでしょうか?この説明を見て「なるほど!」と思えた方は、どれくらいいましたか?

「クリエイティブになりたい=これまでにないものを新しく作り出したい」ということが全てなのでしょうか。これでは、少し不明瞭です。「実際に手を動かしてものを作る」という意味でクリエイティブになりたい人もいれば、「斬新で価値のあるアイデアを思いつけるようになりたい」という人もいますよね。または、「問題解決のために多角的な視点を身につけたい」という人もいるはずです。

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つまり、一口に「クリエイティブになりたい」と言っても、そこには色々な「目的(ゴール)」があります。それらの異なる目的を達成するためには、それぞれに合った方法を選ぶ必要があるでしょう。つまり、自分の「目的(ゴール)」が何なのかを明確にしないと、「どの方法を採用すべきか」がぼやけてしまうのです。これが、「クリエイティブになるには」という議題に「答え」が明示されにくい原因の一つであると思われます。

そこで、ここからは「斬新で価値のあるアイデアを思いつくこと」=『ひらめくこと』を、「クリエイティブ」の定義として話を進めます。

2. これまでに語られてきた「クリエイティブになるための方法」は?

前述の通り、「クリエイティブになるための方法」を取り上げた書籍やウェブ記事は、今や膨大な数に上っています。ここでも「クリエイティブになるためのステップ」と題された例をいくつか見てみましょう。

Case01|コロンビア大学ビジネススクールの有名講師ウィリアム・ダガンの提唱する「ひらめきの4ステップ」

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Step 1. 歴史の先例
Step 2. オープンマインド
Step 3. 突然のひらめき
Step 4. 決意

もう少し具体的に言い換えると、

Step 1. 成功例を分析して考える
Step 2. 目的や目標を忘れ、何でも受け入れられる態勢をつくる
Step 3. ひらめきが起こる
Step 4. ひらめきを行動に移す

と、表現できます。

ウィリアムは、スターバックスを成長させた実業家や、かの有名なガンジーなどの偉人たちが一体どのような経緯で「ひらめき」を得たのかを分析しました。

この例に限らず「クリエイティブになるための方法」を組み立てる人は、他者を観察した上でその共通部分を分析する手法をとる傾向にあります。実は、ウィリアムがこの4つのステップを紹介する90年前、同じようにして「ひらめきのための4つのステップ」を組み立てた人がいるのです。

Case02|心理学者グレーアム・ウォーラスの提唱する「ひらめきの4ステップ」

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Step 1. Prepare(意識的に知識を蓄え、対象に十分注意を向ける)
Step 2. Incubation(対象について考えるのをやめる=「忘れる」)
Step 3. Illumination(ひらめき)
Step 4. Verification (ひらめきを形にする)

二者の考察を比べてみると、「知識を蓄え十分に考える → 忘れる → ひらめきを得る」という過程が共通しています。さらに、これらの間にある90年という月日の隔たりが、その普遍性を物語っているとも言えます。ということは、これが「クリエイティブになるには?」に対する「答え」となっていてもおかしくないはずですよね。では、なぜ「応え」に留まってしまっているのでしょうか?

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それは、「なぜ忘れる必要があるのか」が不明確だからだと考えられます。もし、あなたが突然「クリエイティブになりたいか?それなら一生懸命考え、そして忘れろ。」と言われても、困りますよね。「クリエイティブになるための方法」は確かに存在しますが、現時点では、その根拠を説明できていないのです。

そこで着目したいのが「脳神経科学」です。

3. 「ひらめき」のためには「忘れる」ことが必要?

「ひらめき」のために、なぜ「忘れる」必要があるのでしょうか。忘れているとき、脳では何が起こっているのでしょうか。身近な例として、私たちの「睡眠」がもつ機能を挙げてみましょう。睡眠中、私たちは考えることを「忘れて」います。

睡眠中の脳では、覚醒時に受けた入力の「再生」(リプレイ)や、日中に得た情報の「整理」(シナプスの刈り込み)が行われているという研究結果があります。つまり、脳では無意識のうちにも「情報処理」が行われている可能性があるのです。逆に、意識的にものを考えている時には、このような整理は行われません。これが「忘れる」と「ひらめき」を結ぶ鍵だと推測されます。

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今回の記事ではあまり深くは語りませんが、今後の記事では科学的な過去の論文も参考にしながら、さらに「ひらめき」について深く探っていこうと考えています。特に、今回も取り上げた「無意識」や「睡眠」は、脳を理解する上でのキーとなり得るでしょう。他ではあまり扱われていない神経細胞の電気生理学や、その細胞内の分子動態といった分野の解説も交えながら、皆さんと一緒に「ひらめき」における脳の謎に少しでも迫っていきたいと思います。

また、皆さんの日常生活と密接に関わるような研究成果も紹介していく予定です。これからの記事を通して、「脳とは?人間とは?」という純粋な疑問に、向き合うきっかけをつくれるようにがんばります!

こんなこと知りたい!というテーマもぜひぜひお知らせください。

Reference(参考資料)

- 書籍 -


 ・天才の閃きを科学的に起こす超、思考法(ウィリアム・ダガン 著、児島修 訳)

 ・ The Art of Thought(Graham Wallas 著)

- 科学論文 -


 ・Wilson, M. A., & McNaughton, B. L. (1994). Reactivation of hippocampal ensemble memories during sleep. Science, 265(5172), 676-679.

 ・Li, W., Ma, L., Yang, G., & Gan, W. B. (2017). REM sleep selectively prunes and maintains new synapses in development and learning. Nature neuroscience, 20(3), 427.

イラスト・編集 by ねもとさやか


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