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高卒入社から「超異例のスピード出世」 シグマ史上最年少課長代理が明かす「キャリア急成長の方程式」

広島県呉市に拠点を置く自動車部品メーカーのシグマは、「マツダ」「ホンダ」など錚々(そうそう)たる企業が顧客として名を連ね、デンソーや外資系メーカーともグローバルに取引しています。

さらには経済産業省に「グローバルニッチトップ100選」に選ばれ、ワイパーシャフトの世界シェア20%、人の命を守るエアバッグ部品の世界シェア6.5%など、海外市場でも存在感を放っています。

そんなシグマで「高卒のスター社員」として活躍しているのが、それまでの社内記録を10年以上も更新する「超異例」とも言えるスピード感で、今年(2024年)5月に課長代理に就任した、メタル事業部3課に所属する石地諒平さんです。

今回はそんな石地さんに、高卒入社から史上最年長課長代理へと「駆け上がる」までの社会人歴15年の変遷を伺い、そのお話から「キャリア急成長の方程式」を浮き彫りにします。石地さんが今、岐路に立たされる高校生に伝えたいこととは?

大手自動車メーカー、グローバル企業と関わる仕事

ーー石地さんの現在のお仕事は?

石地:メタル事業部3課の課長代理を務めています。

シグマは約90年の歴史ある会社で、マツダをはじめ、自動車業界のいわゆる「ティアワン」「ティアツー」「ティアスリー」と呼ばれる大手メーカーと深い関わりを持っています。

例えば、「スプロケット」というエンジン部品や「タイミングベルト」の歯車を本田技研工業に、エアバック部品をハウジングやボトルのアメリカやヨーロッパ、タイの拠点に提供するなど、海外企業との取引も増えています。

日本国内は本社がある呉市と東広島市に工場があり、海外にも中国とインドに拠点を構えています。

そんなシグマの中で、メタル事業部3課は、特に切削加工を担当しており、研削や研磨して寸法を仕上げるところを強みとしています。

その課の課長代理として、納期や利益など数字の管理、課内のメンバー教育、他の課との調整を担う一方で、マツダなど社外に出向くことも多く、世の中の製造業の動きを把握して、会社に取り入れるのも大事な仕事です。

特に最近は「カーボンニュートラル」に力を入れています。私たちの課は製造部門にあたるので、自分たちが排出するCO2が会社全体の多くを占めます。コンプレッサーの更新や配管のエアー漏れを防ぐ設備を必要なときだけ使用するなど、課のメンバーで案を出し合って、改善しています。

高卒入社の史上最年少課長代理はこうして生まれた

ーー石地さんが課長代理に就任されるまでの経緯は?

石地:高卒の18歳のときにシグマに入社して、今15年目、33歳になります。

私のキャリアは少し特殊で、高校では「特進クラス」という大学進学を目指すクラスにいたのですが、家庭の事情で「就職」に舵を切らないといけなくなりました。ただ、その舵を切るのが遅く、正直に言うと、地元で就職できるのがシグマしか残っていなかったんです。

それでも、入社して、「自分が作業者として、この機械で作った部品一つひとつが自動車に乗り、要はこれがなかったら自動車が動かないんだよな」と考えたときに、初めて仕事の醍醐味を感じました。

4年目に「班長」に職位が上がったのですが、これは運も重なりました。当時の上司が退職することになり、まだ21歳だった私を「後釜に」と推してくれたんです。「要領が良くて、理解も早いし、言えばなんでもできる」とは言ってくれていましたね。

その後、5年くらい班長をやり、26歳のときに「職長」という課内を管理する職位になり、そして今年の4月、32歳で「課長代理」に就任しました。同事業部の課長代理が42歳なので、社内記録を10年更新したことになります。

キャリア急成長に必要な方程式「スピード×量×質」

ーーそんなキャリアの急成長を果たした石地さんが大切にしていることは?

石地:実行すること。とにかく「スピード感を持って、量をこなすこと」を意識してきました。

始めから自分の仕事に「質」を求めるのはすごく難しい。なので、「とにかく量をやること」。これは今でも大事にしていますね。ただ、量を増やすにもスピードがないと無理なので、若いうちは特に「スピードが一番大事」だと思っています。

例えば、私は入社当初、上司に言われたことはとにかくすぐに実行するようにしていました。「これを作って」にしても、「これを片付けておいて」みたいな、たとえ小さいことであっても、もうその場で行うというのをやっていました。

「スピード×量×質」という方程式は、班長になり、職長になり、作業者ではなく、チームを管理する立場になっても同じですね。

例えば、現場のメンバーが、「この機械の加工がうまくいかない」「製品の寸法測定が難しい」とやりにくさを伝えてくれるんですけど、すぐに対応する。

メンバーが報告してくれるということは、つまり「今困っている」ということ。後回しすると、その困った状態がいつまでも続く。なので、チームを管理する立場になっても、スピード感を持って対応しています。

これはなにも社内に限った話ではなく、顧客など他社の工場でシグマより進んでいる部分を見つけた場合にも、「自社に当てはめなら、こうしたほうがいいな」と考えて、すぐに会社に取り入れることもしています。

今は変化が激しい時代です。それこそ、スピード感を持って、仕事をしていかないといけない。

リーダーの大事な仕事は「メンバーの話を聞くこと」

ーーチームを管理し、人を束ねるリーダーとして大切にしていることは?

石地:一日一回、現場を見てまわるときに、メンバー全員に一言でも話しかけるようにしてます。前日の出来高が良かったら、「どうやって稼働したの?」、出来高が下がっている場合でも、「なんか調子悪かったんか?」と話したり。

そのとき、メンバーの気持ちを大事にしていますね。顔色は伺わないけど、気持ちを汲みます。

体調も仕事に直結するじゃないですか。プライベートで落ち込むことがあった場合も、仕事に影響する。仕事とプライベートを切り分けられる人間のほうが少ないですから。「聞く」ことこそ、マネジメントだと思っています。話すだけで、人は楽になりますからね。

逆に、気持ちは汲みますが、顔色は伺いません。例えば、メンバーが作業指示について、「グレーだな」と迷っていることに対しては、「白か黒か」を目的も伝えたうえではっきりと言います。

それは、相手のメンバーが年上であっても同じ。ぶつかりながらも、話を聞くことで信頼を築いてきました。

一番難しくて、一番大事な教育に力を入れる

ーー石地さんの急成長を会社はどうサポートしてくれましたか?

石地:シグマは教育制度がすごく充実していると思います。「これを学びたい」「自分にはこの知識が足りない」と思ったら、技能検定や通信教育などを金銭面でサポートしてくれたり、「これを学びたいなら、こういう講習がいいよ」と提案してくれたりもします。

私の場合、現場の作業者のときに「汎用旋盤」「NC旋盤」「機械保全」を、職長のときに「機械保全」の1級と「電気保全」の資格を取得しました。やはり技能試験のような目標やベンチマークがあると、継続して勉強しやすいですよね。

これは、現在の(下中利孝)会長が社員の教育に力を入れており、そこから代々受け継がれている社風だと思います。

「教育が一番難しくて、一番大事だ」、これは私もメンバーを教育する中で感じます。だけど、そこに時間やコストをかけることで、シグマも何十年も継続してこられました。教育に力を入れてきたからこそ、今のシグマがあるんだと思います。

岐路に立つ高校生への「キャリアアドバイス」

ーー石地さんの今後のキャリアの展望は?

石地:これからも出世し続けたいと思います。しかし、それは地位が大事なのではなく、出世して、目線が変わることで見えてくるものがあるだろうからです。「自分が知らない世界を知りたい」という気持ちが、私は強いんです。

現場の作業者だったころは、自分のことを考えていれば、それでいい部分もありました。それが、班長や職長、課長代理になったら、メンバーのことも考えないといけなくなります。すると、人それぞれ、いろんな事情や背景があるということが、少しずつ分かってくるわけです。

そうすると、例えば、自分に厳しい指示をしてくる人は、なかなか受け止めきれない部分があったりしますが、「自分に期待してくれているからこそ」だとか、そういうふうに相手を受け止められるようになる。それを「成長」と呼ぶのかもしれません。

ーー最後に、これから就職活動を始める高校生にアドバイスを。

石地:好奇心を持ち、実行力のある人はシグマに向いているんじゃないかなと思います。先ほど教育の話もしましたが、「これを学びたい」と自分から発信する人をサポートする制度やカルチャーが、シグマにはありますので。

アドバイスするとしたら、いろんな企業を見て、受けてほしいと思います。そして、その中で少しでも興味があったり、惹かれる部分がある会社に就職してほしい。たまたま当たった面接官との相性もありますし、「1社しか見ない、受けない」だと難しい部分もありますので。

いろんな会社を見たうえで、視野を広げて、会社を選んでもらえたらなと。そういう意味では、就職活動にも、「スピード×量×質」の方程式は当てはまるんじゃないかと思いますね。

[取材・文] 岡徳之 [撮影]かわもとじゅんいち

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