見出し画像

【現地レポート】世界のエンターテインメントが東京にやってきた!フォーミュラE 東京大会に行ってきました!

2024年3月30日に開催された、ABB Formula e 第5戦 2024 TOKYO E-PRIX。

遂にフォーミュラEが日本に、東京にやってきました!

フォーミュラEが初開催なのはもちろんですが、日本で初めて開催される、市街地をコースとした国際レース。

この記念すべき日を、生で体感しなくては!
ということで、現地で観戦してきました!!

ちょっと体調を崩し気味だったので当日は行けるかわからなかったので、前回の記事では明言しなかったのですが、チケットは最初の抽選販売に申し込んでしっかりゲットしていました。

ワンデーイベントとしてはちょっと高かったですが…。
でも、歴史的な1日になることは間違いなかったので、迷いはありませんでした。

会場は東京ビッグサイト周辺。
東館裏の駐車場をメインスタンドに、一部公道を走るコースです。

コースはゆりかもめと並走したり、ビッグサイトの東西を分ける通路の下を駆け抜けたり。

あの近辺をよく知る方なら、ここがサーキットになるなんて当日まで信じられなかったと思います。
でも金曜日の走行映像を見て、遂に東京のストリートコースを舞台にレースが繰り広げられる日が来たことを実感しました。

今回は写真も動画もたっぷり撮ってきたので、初めての現地レポートをお届けします。
いつもF1日本グランプリの記事はテレビ観戦のものだったので、ようやく生観戦のレポートを書くことができます!

かなりのボリュームになってしまいましたが、体感したことを惜しみなく書こうと思いますので、楽しんでいただけると嬉しいです。


白熱のデュエル予選!

東京ビッグサイトがサーキットに!?

現地には10時ごろに着くようにと出かけたのですが、結局予選開始には間に合いませんでした。
国際展示場駅に到着したのが、10:30ごろ。
そこから歩いて東京ビッグサイトへ向かいます。

東京ビッグサイトの中に入るのは本当に久しぶり。
ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の感想とまとめをたくさん書いてきた中で、ゲームやアニメで散々見てはいたのですが、実際に入るのは数年ぶりです。
かつてはコミケにも参加したり、実はコミケスペシャルのライブに出演したこともあります。

ピラミッドを逆にしたような、あの特徴的な建物は西館。
コースへ出るには、東館のホールから外に出る必要があります。

西館と東館を隔てる通路を歩いていると、すぐ下がコースになっていて、既にマシンが走り抜けています。
窓越しに見ても、今まで見たこともない光景。

東館に着くと、ホールの大きな入り口を入ります。
「ファンビレッジ」が設けられていて、チケットを持っていない人でも入ることができるようです。

私はチケットを持っているので、チケット持参用の入り口から入場。
会場は展示あり、ケータリングありの巨大なスペースですが、既に予選が始まっているのでスタンドに急がなければなりません。

ホールの外に出てチケットを見せると、腕にバンドを巻いてもらいます。
これでスタンドから外に出ても、再入場できるというわけです。

ホールの外はバックストレートになっているので、ひっきりなしにマシンが通り過ぎます。

じっくり撮影できないほど、マシンは速い!

ヒューン!ヒューン!
エンジンのエグゾーストノートはなく、聞こえるのは風を切る音だけ。
まるで、小田原駅に立って通過するのぞみ号を眺めているかのよう。


それにしてもこの日は暑かった。
急いで歩いているので、汗が流れてきます。
ちょうど太陽が高い午前中。歩くだけでも大変です。
ニジガク、いや、ビッグサイトがこんなに広いとは!

しばらく歩くとメインスタンドが見えてきました。
その側にはケータリングスペースも。
スタンドは当然ながら全て仮設。
いくつかのブロックに分かれています。

逆光になってしまいましたが…ドライバーののぼりが
メインスタンドのようす

ようやくスタンドへ到着。
席は簡易的なベンチでしたが、見渡すと映像で見た光景が!

常設のサーキットよりも規模が小さく、狭いのですが、目の前にはピットが広がり、コントロールタワーもある!
ニジガク…いやビッグサイトの裏にサーキットが現れた!

私の席は大型ビジョンの真ん前。
しかもスピーカーも間近にあります。
サーキット実況でお馴染みの、ピエール北川さんの声が響き渡ります。

デュエル予選開始!準々決勝がスタート!

席に着いた時には、22台を2ブロックに分けて行われる予選は既に終わっていました。

各車のタイムアタックを見られなかったのは残念ですが、これからトーナメント方式による「デュエル予選」が始まるところでした。

私の真横のブロックは、特設の日産応援席。
はためく無数の真っ赤なフラッグ!
しかも大きな旗を振る人まで!

日産の応援団はサーキットではお馴染み。
SuperGTのレース日にはこの日と同じように大きな旗を振り、熱い応援を繰り広げてくれます。
日産がル・マン24時間レースに出場した時は、遠くフランスのサルテサーキットにまで駆けつけ、ずっとメインスタンドで旗を振っていました。
それぐらい熱い応援団です。

しかも、そんな応援団の中に、なんと日本レース界のレジェンド、星野一義さんや、今やJRPの会長、マッチこと近藤真彦さんの姿まで!
なんと国際映像に映ってしまった!
それに気づいた、会場実況のピエール北川さんも思わず反応。
「ギンギラギンにさりげなく、映っちゃってましたね!」

さて、前回の解説記事に書いた通り、予選は22台を2グループに分けます。
グループA、Bと順番に走り、上位4台ずつがデュエルステージに進みます。

グループAは、地元NISSANのオリバー・ローランドがトップタイム。
続いてマヒンドラのエドアルド・モルタラ、アンドレッティのジェイク・デニス、そしてジャガーのミッチ・エバンスが勝ち上がりました。

実は日本でもお馴染みのニック・キャシディが勝ち上がっていたのですが、審議の結果技術違反のためベストタイムが抹消。その結果、エバンスが勝ち上がることに。
せっかくの日本でのレースだったのに残念。

グループBからは、マセラティのマキシミリアン・ギュンターがトップ。
続いてERTのセルジオ・セッテ・カマラ、ABTクプラのニコ・ミューラー、ポルシェのパスカル・ウェーレインが準々決勝へ。

席に着いて落ち着いたところで、いよいよデュエルステージのスタート。

最初の対決は、デニスvsモルタラ。
デュエル、とは言っても、同時にスタートしてつばぜり合いのような抜きつ抜かれつを演じるのではなく、最初にデニスがコースインし、十分に距離をとってモルタラがスタートするタイムアタック対決。

画面上では、2台のタイム差がどれぐらいで、どちらのマシンが優位かがセクターごとに表示されます。

準々決勝第1試合は0.135秒の差でモルタラの勝利。
準決勝に駒を進めました。

第2試合には早くもNISSANのローランドが登場!
ジャガーのエバンスとの対決。

エバンスは途中ウォールに軽くヒットし、スポンサータイトルが書かれた覆いを剥ぎ取ってしまいますが、後から追いかけるローランドはそれをものともせず、セクターごとにタイムを削っていきます。

結果はローランドの勝利!
日産応援席からは歓声が湧き、無数の真っ赤なフラッグがはためきます。

第3試合はミュラーvsセッテ・カマラ。
ミュラーは途中でミスがあったのか、セッテ・カマラに0.5秒もの大差をつけられてしまいました。

準々決勝最後の対決は、ウェーレインvsギュンター。
こちらはグループBトップのギュンターが危なげなく勝利。
マシンやドライビングスタイルが東京のコースに合っているのか、好タイムを叩き出します。

ローランドがんばれ!決勝に残るのは誰だ?

しばらく休憩を挟んで、準決勝が始まります。
第1試合はローランドvsモルタラ。
NISSANの地元、日本での活躍をスタンドのファンは揃って祈ります。

ローランドが先にコースイン。
追うモルタラをものともせず、各セクターで次々に差をつけていきます。

勝ったのはもちろんローランド。
メインスタンドは大歓声に湧きます。

準決勝第2試合はギュンターvsセッテ・カマラ。
セッテ・カマラは第2ターンで派手にジャンプ!

このコーナーの地面が少し盛り上がっているようで、フリー走行から各車ジャンプして通り過ぎているようです。
なんだか、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェ(北コース)を駆け抜けた70年代のF1のようですが、元々ジャンプに耐えられるようにできていないGen3マシンにとってはたまったもんじゃありません。

どうやらその影響でトラブルが起きてしまったようで、みるみるギュンターに差をあけられてしまいました。

※AUTOSPORT web様のポストより。
写真はギュンターですが、勢いによっては4輪とも地面を離れるほどの大きなバンプ。
見る方はエキサイティングですが、車は壊れるし体はキツいしでドライバーには不評だったようです。

スタンド熱狂!ポールポジションを獲ったのは?

これで決勝はローランドvsギュンター。
この日好調な二人のタイマン勝負が幕を開けます。

先にスタートしたのはギュンター。
しかし、ローランドも負けてはいません。
2台とも拮抗したタイムで、勝負は最後の最後までわからない。

逃げるギュンター、追うローランド。
途中までローランドが逃げ切る様相を呈しますが、ギュンターも最終セクターで追いつく!
果たしてポールはどちらの手に?

先にギュンターがチェッカー。
最終セクターではギュンターが上回っていますが、果たしてどうか?

ローランドが最終コーナーを立ち上がって姿を現した!
チェッカーを受けると、なんと0.021秒差でローランドの勝利!!

大歓声のメインスタンド!
そしてNISSAN応援席はやんやの大騒ぎ!!
フラッグが快晴のお台場に翻る!

※筆者撮影。ローランドポール奪取の瞬間!

初開催の日本で、日本チームのマシンがポール奪取!
まるで小説のような燃える展開!
コース幅も狭く、抜きにくいコースのようですから、優勝の可能性は十分あります。

それにしても面白い予選スタイル。
F1や他のカテゴリーでは味わえない興奮がありました。
純粋なタイムアタックだけでなく、エンターテインメント性があって、わかりやすくて、見ていて楽しい!よく考えられていますね。

※FORMULA E オフィシャルYoutubeより。

ちょうど12時前ごろに予選が終了。
決勝は15時開始。
固唾を飲んでデュエルの行方を見守ったスタンドのファンも、炎天下のスタンドを次々後にします。
私も一旦スタンドを離れることにしました。

ファンなら絶対に楽しい!イベントも盛りだくさん!

ケータリングスペースもサステナブル!

腕にリストバンドをつけてもらっていますから、スタンドエリアからファンビレッジ、ビッグサイト周辺まで出入りは自由。
食事をしたり、展示を楽しんだり、別の場所に移動したりと思い思いの楽しみ方ができます。

スタンドエリア裏にもキッチンカーが数台並んでいますし、テーブルと椅子もあるので食事やお酒を楽しむことができます。

スタンド上段より。奥がケータリングスペース。

驚いたのが、ケータリングコーナーの電力を水素で賄っているということ。
水素と酸素を化学反応させて電力を得る燃料電池発電機と、モリゾウさんのカローラスポーツでお馴染みの、水素を燃やして動力を得る水素エンジンを搭載した発電機が稼働していました。

水素エンジンはディーゼルエンジンのイグニッションを改造したものだそう。
排気ガスのあの匂いは全くなく、出てくるのは水蒸気だけ。
さすが環境に配慮したレースだけあって、会場の電力もサステナブルな取り組みであることに驚きました。

※株式会社やまびこ様のニュースサイト。
iLabo株式会社と共に開発した水素エンジン発電機だそうです。

※iLabo株式会社様の水素エンジンを紹介するサイト。
イラストが多くてわかりやすいです。

一日中楽しい!ファンビレッジを散策

さて、炎天下の裏庭を歩き、ファンビレッジに戻ってきました。
スタンドに入るチケットを持っていなくても、ファンビレッジには誰でも無料で入ることができます。

いきなり目に入るのは、Gen3マシンの展示。
実際に走っているマシンとはカウルの形状が違いますが、白地に赤の日の丸カラーです。

F1などに比べて本当にコンパクト。
モーターユニットもバッテリーも小さくできるので、より空気抵抗が少なく、軽く作ってあるのでしょう。

フロントウィングも他のフォーミュラカーよりも小さく、リアウィングは飾りのような形状。
しかし後ろに回ってみると、とても大きなディフューザーが付いています。
ダウンフォースを車体下部の空気の流れで作り出す、ウィングカーになっているようですね。
車体上部の形状も、うまく空気の流れを作るようにできているのでしょう。


他にも、タイヤ交換体験や、反射神経を競うゲームなどもありました。
もちろん、フォーミュラEのコースを体験できるシミュレータもたくさん!

奥にはステージが組まれていて、ライブイベントが行われるようです。
予選後には和太鼓のパフォーマンスが。

その近くには「充電コーナー」と称した休憩スペース。

カラフルに淡く輝くベンチが可愛らしい。
そしてベンチの中央にはテーブルがあり、ケーブルがにゅっと出ています。
文字通り、スマホの充電もできました。


ファンビレッジ内にもキッチンカーやバーが用意されていました。
飲食スペースも広々。
ステージには巨大なビジョンも備わっていて、チケットがなくてもここでレースを観戦することができるようです。

ポルシェのブースにはGen3マシンとEVタイカンが展示。
※タイカン撮り忘れました…

東京限定の桜カラー
リアエンドの大きなディフューザーも間近に見れました

日産が用意した、各チームのカラーをイメージした着物の展示も。
海外のファンには嬉しい展示ですね。

中継を見た方は気になっていたと思いますが、ヘルメット型のお面のようなペーパークラフトもファンビレッジで配っていました。
その他にも、ポケモンとのコラボブースもあり、ピカチュウのお面も配布されていましたね。

カラフルなリサイクルボックスも用意されていて、環境への取り組みもしっかりアピールされていました。

次世代ビークルをアピール!ビッグサイトがZEVのお祭りに!

それにしても、東京ビッグサイト周辺で開催したのは正解でしたね。
出入り自由なので、人混みを避けることもできます。
ケータリングスペースがどこも混雑していたので、食事は西館まで戻ってカフェテリアで。

ニジガクの学食のモデルになったカフェテリア

西館でも「E-Tokyo Festival」と題して家族向けのイベントが開催されていました。
ステージイベントがあったり、新しいモビリティの展示があったり。

展示は取り忘れました…

東館の反対側の展示棟でも、ファンビレッジとは別に展示スペースがありました。
NISMOのブースでは、Gen2マシンの展示も。

ラジコン体験や、学生フォーミュラの展示もありました。
学生フォーミュラとは、レギュレーションを元に各大学が制作したマシンをプレゼンし、実際に走らせる大会のこと。
多くのエンジニアを輩出している大会です。

また、「ZEV City Walk」と題した展示スペースも。
こちらは、各自動車メーカーが電気自動車を持ち寄って展示するという大掛かりなもの。
既に販売されている自家用車から、作業用の軽自動車まで。

絵本の中に入り込む、という楽しい展示
EV軽自動車は一部実用化されていますね
既に販売されているクルマも
日産X-TRAILのEVモデル
コンセプトカーでしょうか


MAZDAのMX-30も展示されていました。
おお!これが噂の…と思ったら、BEVモデルでした。
なんだ…あの噂のモデルじゃないのか…と思ったら…

サイドに輝く「R」のバッヂ

その先のブースに展示されていた、これが噂のロータリーEV!
動力はモーターですが、充電のためだけにロータリーエンジンが搭載されているのです。
元々小型なロータリーエンジンですから、エンジンルームのスペースをあまり取らずにレイアウトできます。
これは面白いアイデア。

BEVも発売予定のプロトタイプもあったと思いますが、かなりラインナップが増えてきました。
各社、バイクもクルマもかなり力を入れているようですね。

一時期ブームのように盛り上がりましたが、まだまだ使い勝手はあまり良くないようで、あのテスラも苦戦しているようです。
でも、徐々にBEVも市場に出てくれば、使い方によっては便利な場合もあるので浸透していくのではないでしょうか。

勝つのは誰か?いよいよ決勝!

岸田首相も来場。オープニングセレモニー

展示もあらかた回ったので、スタンド付近に戻ってきました。
せっかく足を運んだのですから、青空の下でサーキットグルメも楽しまないと。
決勝スタート直前でしたが、ハンバーガーを買っちゃいました。
ちょうど夕方が近づき、お昼前よりは涼しくなってきて気持ちいいですね。

スタンドに戻ると、既にダミーグリッドはごった返していました。
グリッドウォークが始まっていたようです。
常設のサーキットに比べてコース幅が狭いので、誰が来ているのかさっぱりわかりません。

後で知ったのですが、次週に日本グランプリを控える角田裕毅選手や、今や時の人となったJuju選手と、お父さんの野田秀樹さんもいらっしゃったようです。
角田選手は、昨年のチームメイトであるニック・デ・フリースに会いに行ったようですね。

しばらくすると、ビジョンに何故か黒塗りのセンチュリーが映りました。
大胆にもコースを走っているようです。
一体どんなVIPが??

黒塗り軍団はコントロールライン付近で止まりました。
中から出てきたのは、なんと岸田首相!
決勝に合わせて視察にいらっしゃったようです。
既に来場されていた小池百合子都知事がお出迎え。

首相の来場に合わせて、国歌斉唱が行われました。
国際レースを現地観戦するのは初めて。
起立して国歌を聞くのも初めての経験です。

国歌斉唱が終わると、岸田首相、小池都知事の挨拶がありました。
世界を転戦する国際レースを初めて首都東京に迎えること、そしてカーボンニュートラル達成に向けての大きなアピールにもなりますね。

※首相官邸のポストより。
私の席はコントロールタワーのやや後方だったので、挨拶する姿は見る事ができませんでした。

一連のセレモニーを終えて、首相ご一行はグリッドの方へ。
ちょうどフロントロウのあたりで見ていたので、その姿を見ることができました。
初めて岸田首相を生で見ました。
周りを取り囲むSPの数がすごかった。

当然ですが、海外のメディアや放送のクルーもグリッド上に。
このレースが世界中が注目する国際レースであることを感じさせてくれます。

舞う白煙。いよいよレーススタート!

あっという間にスタート5分前。
マシンを取り囲んでいたメカニックやスタッフがピットに戻り、いよいよスタートです。

スピーカーの真ん前に居たので、ベースが強めのテクノがガンガンかかる中、各車がダミーグリッド上に整列。
いつもテレビ中継では無音なので、なんか変な感じです。

ラウドな曲がガンガンかかる中、スタートシークエンスが進みます。
フォーミュラEにはフォーメーションラップがないので、ポールを獲ったマシンから順番に数メートル先のスターティンググリッドにちょっと走って並びます。

タイヤを温めなければならないので、各車タイヤを空転させて路面に擦り付ける「バーンアウト」を行います。
あたりに白煙が立ち込め、一瞬マシンが見えなくなるほど。
現地でしか味わえない臨場感!

緊張感が高まる曲が流れる中、レッドシグナルが一つずつ点灯、そしてオールレッド…ブラックアウト!
ついにTokyo E-Prixがスタート!!

※筆者撮影。迫力のスタートシーン!

F1だとクラッチミートが必要なのでエンジンを吹かした状態でスタートしますが、フォーミュラEは驚くほど静かなスタート!
キュイーンという音を響かせながら次々と第1ターン目掛けて走っていきます。  
音だけ聞くとなんとなく迫力に欠けるようですが…でもスピードは本物!
エンジン車に引けを取らない迫力のスタートです。

マヒンドラのモルタナがいいスタートを決めるも、1コーナーを制したのはポールスタートのローランド。
あとはほぼスターティンググリッド通りに1列に連なっていきます。

オープニングラップが終わり、マシンが帰ってきました。
最終コーナーが鋭角なので、そこまでスピードが乗った状態ではないですが、Gen3マシンが次々と目の前を通り過ぎていきます。

コース幅が狭く、1周も2kmと短いので、マシンとの差が広がらず、全車ずっと接戦を続けていきます。
それでも目立った接触もクラッシュもなく、クリーンに1列縦隊でマシンが駆け抜けていく様はさすが。

勝負の駆け引きはエネルギーマネジメントと、注目のアタックモード。

アタックモードとは、アタックゾーンを駆け抜けてステアリングのボタンを押すと、300kWのパワーが一定時間350kWにパワーアップするという施策。
8分間の持ち時間で、各車2回使わなければなりません。

東京大会では6分+2分か、4分+4分のいずれかを選べるそう。
これは、大会によって違うそうです。

アタックモードのアクティベーションゾーンはヘアピンカーブとなるターン4に設置。
ゾーンを駆け抜ける際にはレーシングラインを外れるので、一時的にスピードダウンしますが、その分パワーアップするので、その後のレースの駆け引きに大きく影響します。

11週目にトップのローランドが1回目のアタックモードを消化。
2位を走っていたモルタラもアクティベーションゾーンを駆け抜け、後ろのギュンターに順位を明け渡す格好。
ローランドはエクストラパワーを得て逃げる…はずが後ろのギュンターとあまり差が広がりません。

目の前を駆け抜けるマシンに注目していると、マクラーレンのマシンが2台ゆるゆるとピットに入ってきました。
どうやらトラブルがある模様。
2台ともコースに戻っていきましたが、最後尾に。
せっかくNISSANのパワートレインを使っている2台なのに…。

ローランドは序盤にアタックモードを使い切ってしまう作戦だったようで、13周目に2回目を消化。
1周ギュンターにトップを明け渡しますが、次の周でギュンターも1回目のアタックモードを消化。
ギュンターは4分×2回のようです。
ローランドは6分間のアタックモード中なので2分少ないですが、ギュンターもうまくローランドについて行きます。

18周目。
中段では接触が多発。
ジャガーのエバンスがフロントウィングを派手に壊し、たまらずピットイン。
どうやらオーバースピードで他車を避けるようにウォールに接触してしまった様子。

そしてウェーレインとデニスも接触。
ウェーレインのフロントウィングも壊れている!
デ・フリースもフロントセクションを派手に壊してガレージへ。

接触が続いてコース上にデブリが散乱して危険とのことで、20周目からセーフティーカーが導入。

各車スローダウンしてバッテリーを温存できますが、フォーミュラEの特徴として、セーフティカーなどのロスが発生した場合、最終的にラップ数が加算されるのです。
サッカーのアディショナルタイムのようなイメージ。
これはモータースポーツの中でも珍しい対応です。

セーフティカーはカッコいいポルシェ。
これもEVなんだとか。
それにしてもスピードが遅い!
デブリ回収に影響するからでしょうか?

ローランドvsギュンター 手に汗握るトップ争い!

23周目からレース再開。
トップのローランドはうまく加速してトップを守りますが、ずっと後ろにギュンターが付いています。
しかもギュンターはあと4分アタックモードを残している。
これが終盤どのように響くか?

25周目。
裏ストレートでギュンターがローランドを捉えた!
終盤の首位交代。
ローランドはあっさり抜かれてしまいました。
どうやらエネルギー残量の問題で、温存走行をしなければならない模様。
後ろからじわじわとモルタラも迫る。
果たして、ローランドは首位を取り戻すことができるか?

しかし、ギュンターはアタックモードを1回残しています。
アクティベーションゾーンを駆け抜けるときにスピードが落ちる。
その好機を逃さずにトップを取り戻せるかもしれない。
さっきのスローダウンはその時のための戦略だったのか?

28周目にギュンターがアクティベーションゾーンへ。
しかし十分にマージンを取っていたようで、首位のままアタックモード開始。
4分間のアタックモード。ローランドとの差を広げるには十分。

31周目。
追加ラップは2周と発表。
レースはあと4周に。

3位を走っていたモルタラは終盤アタックモードを消化するためにアクティベーションゾーンを走り抜けて後退。
3位はダ・コスタ。
しかし、2位のローランドはギュンターにぴったりついて行く。

33周目、ダ・コスタがローランドに並ぶ!
しかし順位を渡さないローランド!
団子状態のために、後ろから来たデニスに抜かれてしまうダ・コスタ。

遂にファイナルラップ。
スタンドは固唾を飲んでトップ争いを見守る。

2台の差は僅差。
長いバックストレートの手前でローランドがギュンターに並ぶ!
スタンドからは歓声!
思わず私も「行け~!」と声を上げて応援!

しかしインを守ったのはギュンター。
その後も並びかけますが、最後までトップを守ったギュンターがそのままチェッカー。

※筆者撮影。
思わず声が出ちゃいましたが、ファイナルラップは盛り上がりました!

※Formula eオフィシャルYoutubeより。

レースを振り返って

初の東京大会でNISSANの地元優勝ならず!
常設サーキットで行われるカテゴリーのような派手なオーバーテイクこそなかったものの、終始団子状態でレースが進むので、いつ順位が変わるか予想もつかない展開でした。

そして何より大事なのが、エネルギーをどのように使うか。
前半飛ばして逃げ切るのも難しい。
ローランドは前半にアタックモードを消化して逃げ切ろうとしたのかもしれませんが、後ろにはピタッとギュンターが付いてきてなかなか差を広げられません。

対するギュンターはローランドの後ろでしっかりエネルギーをマネジメントし、終盤のアタックモード使用に繋げて上手く逃げ切りました。
ローランドの終盤は防戦一方。
ギュンターの作戦勝ちでした。

1周も短いし、全車終始団子状態でレースが続くので、トップを追うのが精一杯。
中段の争いが全く注目できませんでしたが、どうやらNISSANのサッシャ・フェネストラズも10位に入り、NISSANは地元でダブルポイントを獲得。

ランキングトップで東京を迎えたニック・キャシディ。
19位スタートながら、終わってみると7位。
しっかりポイントを取ってトップを守りました。

毎周、一列に並んで走り抜けるマシンを間近で見られるのは、生観戦ならではの醍醐味。
特にペンスキーのマシンが綺麗でしたね。
ゴールドメッキのカラーリングに陽の光が当たって美しかった。
どのマシンもカラフルでカッコよかったですが、やはりNISSANの桜があしらわれたマシンが東京の空に映えていました。

まるでロックコンサート!驚きの表彰式

ピットでは帰ってきたマシンの周りでドライバーのインタビューが行われていますが、周りのファンは早々にスタンドを後にして歩き出しました。
向かうはファンビレッジ。
表彰式がビレッジ内のステージで行われるのです。

しかし、何時ごろから表彰式が始まるのかアナウンスが全くありません。
準備に時間がかかるだろうとゆっくりスタンドを後にし、行列について行くようにファンビレッジへ。

屋内に入ると、ステージの周りには多くの人が詰めかけ、一斉にスマホを掲げています。
ちょうど表彰式が始まるところでした。

ステージ上には表彰台が設置され、バックのビジョンに映像が映し出されます。
ドライバーも既にステージ上に到着し、ひとりずつ名前を呼ばれるところでした。

もう少し早く到着していれば、ドライバー到着も見れたかもしれません。
でも会場はぎゅうぎゅう詰めという訳ではなかったので、なんとかステージが見える場所に移動できました。

表彰式と言えば、ピットビルの片隅で行われるのが通例なので、真っ暗なライブ会場のようなステージで表彰式を見るなんて、なんだか新鮮な光景です。

日本ではメインストレートにお客さんがなだれ込むことはありませんが、F1のモンツァのように表彰台を取り囲むようにティフォシがなだれ込み、熱狂する姿は羨ましかった。

屋内ならあのモンツァサーキットと同じような雰囲気を味わう事ができるし、安全も確保できると思うので、これはいいアイデアですね。
しかも、チケットを持っていない人も表彰式を楽しむことができます。

ビジョンにはドイツ国旗とイギリス国旗が映り、ギュンターの母国であるドイツ国歌が流れます。

続いて優勝チームの国歌。
マセラティはイタリアのメーカーですが、MSGチームの所属はモナコなので、モナコ国歌が流れました。

突然不思議なメロディが流れて驚きました。
初めて聞いたかも…いや、ルクレールが勝ったら流れるので初めてじゃないかな??

優勝トロフィーは小池都知事がプレゼンター。
トロフィをギュンターに渡すと、火花とドライアイスが吹き出し、まるでロックコンサートみたい。
大音響で音楽が流れ、紙吹雪が舞う。
今まで見たこともないような表彰式でした。

表彰式の後は、優勝したマセラティMSGチームのメンバーがステージに上がり、記念撮影が行われていました。

次戦はイタリアのミサノ
ミサノでお会いしましょう!のメッセージ

すべてが初めての経験で楽しかったのですが、さすがに疲れたので充電スペースに腰かけて、しばらくその様子を見ていました。
ファンビレッジはしばらく続くようで、表彰式が終わったステージではDJタイムが始まり、会場のボルテージはチルアウトせずにずっとにぎやかに続いていました。

イベントを振り返って

初めての国際レース、いや、国際的なイベントが日本にやってきてくれて、本当に楽しい1日でした。

かつてLUNA SEAやL'arc-en-cielがライブを行った、あのビッグサイトの駐車場にサーキットが出現!
それだけでも非日常感を味わえる空間でした。

サーキットの中はいつものビッグサイトですが、ケータリングスペースが出来たり、様々な展示があったりと、まるで常設のサーキットに居るかのような空間。
ちょっと暑かったですが、天気も見事な快晴。
しかも海沿いで空気もきれいなお台場。
本当に気持ちよかったです。

スタンドは古くからのモタスポファンはもちろん、家族連れが多かったのが印象的でした。
みんな思い思いに楽しんでいました。
NISSANの赤いフラッグも私が居たスタンドでいくつも見る事ができましたし。

私が居たスタンドは車いす席も併設されていて、バリアフリーな空間でもありました。
みんなで楽しめる空間だったことも素晴らしかったですね。

それでも圧巻だったのはNISSANの応援スタンド。
あんな間近で見る事ができるなんて思いませんでした。
「Go!Go!NISSAN!」の掛け声は、海外の方も驚いていたようです。

NISSAN応援席はスタンドもわかりやすかった

それにしてもNISSANは惜しかった。
念願の地元優勝はまた来年に持ち越しですね。
経験豊富なローランドの活躍も楽しみですが、日本ゆかりのサッシャ・フェネストラズにも頑張ってほしいです。

そしてファンビレッジの規模がものすごい!
世界中であの規模のファンゾーンを展開しているのでしょう。
インターナショナルな「お祭り」がやってきてくれた事も嬉しいですし、それを体感できて楽しかった!

しかも無料ですからね。
チケットを持っていなくてもレースの雰囲気を味わうことができる空間ですから、楽しめない訳がない!
あのファンビレッジを体験した人なら、きっとフォーミュラEに、そしてモータースポーツに興味を惹かれたに違いありません。

チケットの売り上げも盛況だったのだとか。
確かに私の居たスタンドも、予選では空席がありましたが、決勝では満員でした。
来年はもっとスタンドを大きくしてほしいですし、一番スピードが出るバックストレートにもスタンドを設置してほしい。
トップスピードが出る場所ですから、きっとものすごい迫力でしょう。

今回の大会は何より、日本における大規模な市街地レースを成功させた、という事が本当に大きいと思います。

かつてはあまりいいイメージがなかったモータースポーツ。
市街地でのレースは暴走行為を助長させる、という風潮もあったでしょうから、なかなか実現にはハードルが高かったと思います。

でも、今や客層は本当にクルマやモータースポーツが好きな人たちが中心。
しかも家族連れも多く、子供たちもたくさん見に来ていました。
電気で動くフォーミュラカーがレースをするのですから、それだけでもたくさんの夢が詰まっていますからね。

古い慣習や考え方はもう過去のもの。
たくさんの夢が詰まったレースを多くの子供たちに見てほしいし、もちろん我々ファンも心から楽しみたい。

ファンビレッジやスタンド裏のスペースでも、マナーが悪い人は一人も見かけませんでしたし、酒を飲みすぎて暴れる人もいません。
ただ心地よい空間で、お酒やグルメを楽しみながら、丸一日レースを楽しむ。
日本も、そんな時代になったという事です。

今回のフォーミュラE東京大会の成功をもって、日本でも大規模な市街地レースが開催できる、という前例ができました。
これから、もっともっとファンや子供たちが喜ぶようなイベントを開催してほしい!
もう、楽しみしかありませんね。

本当に、心から楽しめた1日でした。
フォーミュラEの開催契約はひとまず3年とのこと。
来年の開催も決まっていますので、ぜひまたチケットを取って、楽しみに行きたいと思います。

祭りのあと
早速撤去作業が始まっていました
夕暮れのビッグサイト
本当に楽しい1日でした!

記事内の写真や動画はすべて筆者が撮影しました。
はじめてvimeoを使ってみましたが、iPhoneでも動画が綺麗に撮れるので、結構容量を使ってしまいますね。

さて、フォーミュラEの次はF1日本グランプリ。
ファンにとっては楽しみが続きますね。

■お知らせ
F1を中心に、モータースポーツについて書いた記事をまとめた「F1、モータースポーツを語る」マガジンを公開中です。
過去の日本グランプリやマシンについてのお話もたくさん語ってますので、是非こちらもお願いします!


この記事が参加している募集

イベントレポ

F1を語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?