アイドルを嫌悪していた私が乃木坂46を好きになるまで


このnoteは、
乃木坂46以外のアイドルグループを乏しめるものでも
乃木坂46を礼賛するものでもありません。

単に私が好きになったアイドルが乃木坂だっただけで
本質的には大きく変わらないだろうし、アイドルグループの良し悪しや優劣を語りたいわけではありません。

アイドルグループを、アイドルオタクを、忌み嫌っていた自分が純度の高いオタクになるまでの過程を振り返りながらアイドルを応援することが幸せに繋がるということを明らかにしていきたいと思います。

アイドルオタクには共感を、そうでない方にはオタクの生態を届けようと試みるものです。


①アイドルオタクへの嫌悪と誤解


タイトルにもある通り、
私はアイドルを、そしてアイドルオタクを嫌悪していた。

私が当時中高生の頃、全盛期を極めていたAKB48グループは国民的アイドルであり毎シングルでミリオンセラーを記録し、総選挙特番などイベントは学校でも常に話題にあがった。

当時の自分はCDを買って握手に行くのも理解できなかったし、ましてや握手のためにCDを大量に買うことも信じられなかった。また、性格上天邪鬼なので周りが好きなものに同調したくないと言う思春期の抵抗もあった。

CD売上という指標が意味をなさなくなり、何が本当に価値あるものなのかわからなくなったようで嫌だった。
一方でアイドル自身もプライベートを安売りしているよう見えて、正直、卑しい商売だと思った。

まだまだオタク="秋葉原にいる清潔感のない人"という概念を刷り込まれていた自分にとってオタクとアイドルの関係性ははっきり言って汚く見えた。

だから、そんなAKBグループすべてをプロデュースしている秋元康氏は酒池肉林を体現した悪の権化だと思ってた。
(誤解でした。申し訳ありません。)


ただ、今や"一億総活躍オタク社会"
アイドルオタクの幅は広がり10代の中高生〜60代の高齢者までファン層は多岐にわたる。

アイドルによってもファン層は違うが、乃木坂46のファン層で言えば学生が非常に多く、20代半ばの私はもうおじさんの部類にあたる。

そして、握手会なんかに行くとビックリするが、普通にイケメンがゴロゴロいる。そして女の子もめちゃくちゃたくさんいるし、なんなら子ども連れの親子とかもいる。

オタクにいいイメージを持っていない人には、その考えがステレオタイプであるということだけはお伝えしたい。オタクと言う人種は全くもって奇怪な存在ではない。

また、大量のCDを買わずともアイドルは応援できるということも合わせてお伝えしたい。応援の仕方は人それぞれで、握手会やライブに行くことも勿論だが、出演番組をチェックするとか、SNSにいいねするとか、お金をかけないそんなことだけでも十分応援になるんだと知ったのはオタクになってからだった。自分はそこの認識がまず大きく間違っていた。

とはいえ、大量のゴミとなるCD販売は未だに無駄の極みだと思うし、もはやCDの売上枚数は大した意味を持たないのだから握手会もライブチケット扱いにすればいいし、大量のCDは不必要であるという考えも記しておく。



②アイドルオタクになった瞬間


私が初めて乃木坂46という
アイドルグループを認知したのは2016年の夏

YouTubeのレコメンドでたまたま見た
ミュージックビデオだった

メンバー個人はもちろん
乃木坂46というグループ名も知らなかった



ただただ可愛かった

画面の中で可愛い女の子たちが歌って踊っていた
コメント欄を見る限りどうやらアイドルらしいとわかる

するとそこからは早いもので、関連動画にやたら出てくるようになった乃木坂の動画をひたすら見て少しずつ顔を覚えていく。

そして2016年の秋
肺炎にかかって家で寝込んでいた私は、咳や熱がしんどいものの目は覚めるので持て余していた時間を使い、あの手この手で乃木坂の番組を片っ端から見漁った。

少しずつメンバーの性格やグループの歴史を自分の中に取り込んでいった。


そして、運命の日を迎える

2017年、年が明けてすぐ、
当時住んでいた京都で握手会があると知る。


葛藤した。

あんなにも嫌悪していたアイドルの握手会に行ってしまったら何か大きなものを失う気がした。これまでの自分を否定するような、大きな過ちを犯してしまうような。

大袈裟に聞こえるだろうが、
それくらい握手会に行くのはハードルがあった。


"とりあえず、会場まで行ってみよう"
そう思った時点で運命は決まっていた。


握手会当日は恐ろしく寒く、吹雪だった。



会場へ行ってすぐ驚嘆した。
吹雪の中とは思えないほど人がいる。

その頃には乃木坂が人気アイドルグループであるとはわかっていたものの、極寒の吹雪の中、大阪でもない京都にこんなに人が集まっていることに驚いた。

そして会場全体にうっすらと漂う熱狂に後押しされ
ここまできたら握手してみようと思い至る。

握手会の前にミニライブなるちょっとしたライブがあるとリサーチしていたためミニライブ用に1枚、握手用に1枚会場で販売されていたCDを購入する。(CDを購入すれば誰でも参加できる)


ミニライブ会場へ入った時、空気が変わる。
吹雪の外とは打って変わって、暑い。
人口密度が異常に高い。


初めての現場に1人で参加した私は
右も左もわからずただステージを見つめて開演を待った。



会場の電気が消え歓声があがる。
この時は当時の人気メンバーで楽曲のセンターでもあった橋本奈々未が卒業を控えていることもあり会場全体が彼女のサイリウムカラーである緑色一色に染まっていた。

サイリウムを当然持っていない私はただただその熱狂の渦に呑み込まれ圧倒された。

テレビで見ていたアイドルが目の前にいる。
生駒里奈、白石麻衣、西野七瀬、画面の中にいた乃木坂46が目の前で歌って踊っている。

本人達がいるのは当たり前だが、感動した。
本当に実在しているのだと。

橋本奈々未の凄みも楽曲披露の貴重さも理解していなかった私は満を辞して登場した橋本奈々未よりもステージを見る観客を見ていた。これまで以上に会場全体がどよめき、ステージに釘付けになった。誰もがこの瞬間を見逃すまいと固唾を飲んでいるようだった。


ものすごい体験だった。会場にいる何百人という人が一つの方向を見つめ、まさに熱狂が渦巻いていた。

大切にその一瞬一瞬を噛み締めていると容易に想像できた。

ミニライブはあっという間に終わったが興奮はおさまらず握手会へも当然の如く並んだ。この時には完全に彼女たちに魅せられ、握手会へ参加するか葛藤していた私はもういなかった。

握手会はどうせ並ぶなら人気メンバーに並ぼうという適当な動機で白石麻衣の列に並んだ。なんと数時間も並んだ。よく1人で耐えてられたと思うが、並んでいる時はワクワクが止まらなかった。この列の先には乃木坂46がいると思うと緊張でどうにかなりそうだった。


そして、目の前に白石麻衣が現れ自分の番が来た。
何を話したかは全く覚えていない。

ただ異様に白かった。
照明を当ててるのかと思うほど白かった。

それに思ったよりも小さかった。
握手をした手も小さくて柔らかくて優しい手だった。


物理的に手が届くことへ興奮と恐怖を感じながら気づいたらCD売り場へと足を向け、CDを買い足し他のメンバーとも握手をした。

この時点で既にめちゃくちゃ気持ち悪い生物が出来上がっていってるわけだが、当の本人は新しい世界に一歩踏み出し生まれ変わったような清々しい気持ちすらあった。



当時の私にとって、
空虚な大学生活で初めて充足感に満ちた日だった。


③幸せの正体とアイドルオタク

ここまでアイドルへ抱いていた偏見と
それを打ち破られた実体験を思い返してきた。

では、なぜ人はアイドルに熱狂するのか
なぜアイドルを応援することが幸せに繋がるのか整理したい。

アイドルを応援することの魅力は大きく3つあると思う。

  1. 癒し

  2. 集団的熱狂

  3. 青春の追体験

これらがそれぞれ幸せに繋がっている。


1.癒し
これは一番わかりやすく
一番忌避されやすい魅力だと思う。

単純に可愛い子を見ていると癒される。
犯罪者予備軍だなんて見方をする人もいるだろうが、
そんなに物騒なものでも特別な感情でもない。

感覚としては、
赤ちゃんや動物を見て可愛いと思うのと同じだ。

もちろん人間の女性であるからして同列には語れないが少なくとも私のもつ感覚は殆ど同じである。綺麗な景色や可愛い洋服を見ているのと大差ない。汚いものより綺麗なものの方が見たい。


そしてよく誤解されるが、アイドルは性の対象ではない。
これは断言できる。(そうじゃない人もいるだろうが)



アイドルは偶像であり憧れであり虚像だ。

可愛い子が笑ってる姿を見てオタクがニヤニヤしてるのは、確かに側から見たら気持ち悪いだろう。それは否定しないがニヤニヤしてる瞬間にオタクの体内ではたぶんセロトニンがどばどば分泌されている。

セロトニンとは日光を浴びたり適度な運動をしたりすると分泌・活性化する神経伝達物質の一つで幸せホルモンとも呼ばれているそう。

アイドルの幸せはオタクの幸せに変換され
オタク自身も幸せを感じることができるのだ。

アイドルは太陽というのは
あながち真理なのかもしれない。



2.集団的熱狂

アイドルオタクはアイドルを応援することに自信や誇りを持っている一方で、大なり小なり劣等感のような感覚も持っていると思う。自分はマイノリティだと、気持ち悪い存在だと。

そんな自分を肯定してくれるのは他でもないオタク達に違いないわけで、同じ気持ちの人がいた、仲間がいたと思えた時、人間は強くなる。集団心理に支えられた熱狂がよりオタクに拍車をかけることになる。

これも特別なことではなくて、
プロ野球で好きな球団が同じ人と話があったり
同郷の人と距離が縮まったりするのと全くもって同じだ。

好きで応援している集団がアイドルというだけで、そこに抵抗感を持つ人もいるだろうがオタクから見ればさほど大差はない。

学校の文化祭をクラスのみんなで作り上げたり、仕事でチーム一丸となってプロジェクトをやり遂げたりするのと同じように、みんなでアイドルを応援しようと一致団結してるわけである。

これがライブともなると何万人ものファンが同じ方向を見て気持ちを傾ける。その現象に、感覚に興奮するのだ。

乃木坂では多くの人が色の変わるペンライトを携えてライブに参加し、メンバーや楽曲によってライブ中にサイリウムの色を自分で変えて応援をする。口裏を合わせたわけでもないのに、会場一面が一色に染まる光景は圧巻で、会場にいるファンみんなと繋がりを実感できる瞬間でもある。

自分もファンの1人として存在しているの実感できる時、自身の体内ではたぶんオキシトシンがどばどば分泌されている。

オキシトシンも神経伝達物質の一つで女性の出産時やスキンシップの際に分泌され愛情ホルモンとも呼ばれているそう。

同じ仲間だと認識したファンの交流では連帯感が生まれ集団への帰属意識が生まれる。オタクは一般社会から切り離された存在だと卑下している自分にとってはアイドルと同じくらいオタク仲間は大切な存在になりうるわけである。

SNSで知り合ったオタクと会ったこともある
ライブで隣になったオタクと友達になったこともある

アイドルを応援するということは、趣味の一つとして強烈に自身のアイデンティティを形成している。


3.青春の追体験

1ではアイドルから貰えるもの
2ではオタク仲間から貰えるもの
そして3つ目はアイドルを応援すること
そのものから得られるもの

それが青春

AKBグループや坂道グループはとりわけ人数が多く選抜制度というものが存在する。乃木坂では選抜とアンダーという2つのチームに分かれて活動をすることが多く、歌番組などに出演できるのは基本的に選抜メンバーのみである。ファンは自分の好きなメンバー、所謂推しメンを選抜に押し上げて、活躍してほしいと常々思っている。

とても残酷な制度だと思うが、現実社会の縮図そのものであり誰もが目を背けたい現実を彼女たちアイドルはまざまざと突きつけられる。

自身のファンが可視化されグループ内で順位がつけられる。時代に逆光しているようでもあるが社会も評価をして成績が決まるようにやってることは類似している。企業としては合理的な運営に違いない。


ただ、アイドルはそれが公に晒される。


それは酷い仕打ちでもあるが、
それが魅力になっているのも否定できない。

努力を重ねて成果が認められ、ポジションが上がっていく。そこに僅かばかりでも貢献できる、参加できるのがファンである。

もちろんファン1人1人の力などたかが知れていて
評価は本人の頑張りによるところが大きい。

それでも推しメンが活躍する姿を見た時は自分のことのように嬉しいし、苦しんで悩んでいる時は無力さを痛感してもどかしい。

アイドルが葛藤している時、自分もまた共振しているのだ。この時自分の身体の中ではきっとドーパミンがどばどばでている。

ドーパミンも神経伝達物質の一つで運動したり音楽を聞いたり食事をしたりすると分泌されモチベーションを高めたりするといわれているそう。

アイドルはその葛藤も魅力として映る。

悩んで、もがいて、前に進む姿を、
オタクも自分の青春時代と重ねて見てしまう。

どう頑張ればいいのか、誰を頼ればいいのか、
自分はどこを目指しているのか苦しんだ日々を投影する。

アイドルを応援することは
まさに青春時代を追体験しているのだ。

そして、今も青春であり続けようと思わせてくれる
それがアイドルなのだ。



アイドルを応援することがなぜ幸せに繋がるのか
それは幸せを感じるホルモンがきっとでているから。

可愛い癒し→セロトニン
ファンとの繋がり→オキシトシン
推しメンの活躍→ドーパミン

といった具合に
(本当に出てるかはわかりません。なんの根拠もありません。)


ある種、アイドルを応援することは危ない薬と同じで、摂取しすぎてしまうとおかしくなってしまうわけだが、適度な使用であれば心を豊かにして人生を彩ってくれる。

それだけは実体験として私が証明している。
そしてアイドルに救われている人がこの世の中にはごまんといる。




アイドルを、アイドルオタクを嫌悪していた私だったが、乃木坂に出会って6年が経つ。

誇張でもなんでもなく乃木坂に支えられてきた。


全く理解できない人もいるだろう。
価値観の違いを否定する気などさらさらないし
乃木坂を好きになれ、なんて言わない。

ただ、食わず嫌いはやめてもう少し寛容になってほしい。
ちょっと味見してみて嫌いだった距離を取ればいい。


何かしらのオタクで溢れた今の社会そのものが証明しているように、何かに没入して滾ることができる人生を嬉しく思うし、アイドルでなくても、今後も何かに心を傾けて熱くなりたいと思う。





最後に、

乃木坂はいいぞ。



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