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見えない道のむこう

昔から憧れてた大好きな先輩が
今年の春、病気で亡くなった。

スラっと背が高くて
真っ黒なブーツやトゲトゲのアクセサリー
ロックミュージックが好きで
とってもおしゃれな先輩
私には理解できない分野だったけど
唯一理解できたのが
その先輩が描く絵だった
シニカルだけどあたたかくてやさしい
そういう物語の世界を感じる絵だった。

絵が大好きでグループ展や個展には足しげく通っていた。
そのおかげか、少しは親しくなれてうれしかった。
facebookで近況もしれるし
年に一度のグループ展に行けば先輩の世界に触れることができた。

だから突然の訃報に
しばらく自分をどう保ってよいかわからなくなっていた。
心のえぐられ感に正直戸惑った。

それでも人は静かにゆっくりと受け止めていく。


昔の手紙の整理をしていたら
展覧会の案内や年賀状など
やり取りしたものが何枚かあって
あのアートな文字をみて、またきゅーっとなった。

その中の1枚に

クヴィント・ブッフホルツの

「見えない道のむこう」

というの本がおススメ!とはがきの隅に描かれていた。

ポストカードはちょっとシニカルで切なくて
でもなんだか愛らしくもあるイラスト
先輩の絵に似ている。

好きだなぁとは思ったけど
当時はなんだかんだバタバタして
探しもしなかった。

時を経て
あの頃の先輩がいいと思ったものに触れたくて探したら
図書館にもあったのでひとまず取り寄せ。

表紙を見た瞬間からきゅうってなった。

画家と少年のひと夏ほどの物語。
物語の途中で絵のページになる。
画家が少年のためにだけみせた展覧会。

読み進めていくうちに
涙が止まらなくなった

絵には
「見えない道のむこう」
がある
それは画家自身で探さなくてはならない

目の前に見えているものは
ほんの一部でしかないこと
自分の内面に広がる世界を
自分が見つけられているのか?ということ
そして見えない世界はとってもやさしいということ
人と人は出会いいつか別れがやってくるということ・・・

今一生懸命言葉にしているけど
実は適切な言葉が見つからないんだ。

きっと時を経て節さんからもらったメッセージのように感じたから

「自分を信じて、好きなことを続けるんだよ。」

という。

本の一説で好きな言葉がある

「ぼくはただの収集人さ。ある瞬間の、ね」

自分の写真のことを想った。
一貫性のない自分の写真に時折途方に暮れることがあった
軸がないなぁって嘆くこともあった

でも、私は
収集しているんだ
ある瞬間の。

その言葉がしっくりと来たんだ。

気負うこともかっこつけることもないんだって

私はただただ収集してるんだ

ある瞬間を。

そのフラットな状態をその本は教えてくれたんだ。

おそらく手紙をもらった時だったら
こんなにも感動しなかった
時を経た今だからこそ
心に響く言葉がある。絵がある。
それが、今という奇跡。

こういう時
人生は完璧なのかもしれない

そんな風に思ったりもするんだ。

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