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本の話 稀少本を探す旅

数年前、あるテーマについて知りたくなった。イギリス史関連。

日本語の本は見つからなかった。
恐る恐る洋書を入手、文章量に怯みつつもなんとか最後まで読み切り、その参考文献一覧からまた1冊探し、を繰り返してきた。
知れば知るほど、さらに深く掘り下げたくなった。

百年近く前の本を復刻した本、今世紀に出版された本もあれば、数十年前の絶版本も。ホコリをかぶったまま届いたものもあった。
いずれも海外から取り寄せた。いや、1冊だけオンデマンド出版のがあったか。
電子書籍の選択肢のある本もあったが、生憎 "紙の本" 派だ。本を探す、届くのを待つ、手に取り古い匂いを感じる、本棚に並べる。
ただ文字を目で追うだけが読書の愉しみではない。

このテーマを主に扱った本は、数多くはない。
英語本当に読めるだろうか無理ならせめて図版を見るだけでもなどと言いながら、結局全て読んでしまった、

……最も入手困難な最後の1冊を除いて。
半世紀以上前に出版された本で、ほかの文献には載っていない史料がまとめてあるらしい。見たい。


しかし、これが見つからない!

Amazonには商品ページだけあった。リストに入れておいて定期的にチェックしているけど「この本は現在お取り扱いできません」の表示のまま、一度も出品されない。表紙の画像さえ登録されていない。
ヤフオクや古書店のサイトでも時々検索してみる。
「キーワードに一致する商品はありません」……。



外国の図書館にはあるかも?

図書館の相互貸借のシステムを知って、"借りる" 選択肢に気付いた。

最寄りの図書館を通じて国内外の図書館から本を貸し出してもらえるのだそうだ。
けれど利用には条件がある。貸出不可の本もあるし、送料が有料だったり。もちろん返却期限もある。英語を読むのに時間がかかる自分には期限付きなのが一番厳しい。

あるとすればイギリスの図書館だろうか。
近所の図書館のカウンターで相談してみる?
自分一人で探すよりは、でも見つかっても貸し出してもらえるとは限らないし。う~ん。


結論、やっぱり借りるより購入したい。
本を読むのは、ただ情報を得る目的だけではない。
Wikipediaで満足できるなら家に本棚なんていらないのだ。

本の中の世界に浸りたい。
じっくり読みたいし、何度でも読み返したい。



諸行無常…

この稀少な本はいま世界に何冊残っているのだろう?
生きてる間に出会える可能性は?
とか考え出すと気が遠くなりそう。

イギリスに行って古書店巡りでもすれば見つかるかな。
そういう旅も悪くない。
しかし本1冊探すのに一体いくらかかるんだ?


eBayを知ったのは先日読んだ考古学の本で。
海外のネットオークション。著者はトレンチアートを購入したと書いていた。

別件の調べものをしていて、eBayのサイトに流れ着いた。ふーんこれが噂の。
何か面白いものあるかなと適当に検索してみた。すると日本ではお目にかかれない珍しいアンティーク品が次々出てきた。

あれもこれも気になる…けど、そのなかで古書も出品されている事に気付いた。自分が持ってる本もちらほら見かけた。もしやと検索かけると。発見した。探し求めていたあの本。え、ほんとに??(二度見)
そういえばどんな表紙か知らなかったのだった。
書名と出版社と発行年で確認した。これだ……!

幸いオークション形式ではなく定額での出品だった。即決。

送料と手数料※は結構かかったが、海外旅行よりは安く済んだ。
アメリカから2~4週間ほどで届くらしい。
数年かけて探してたんだからそのくらい余裕で待てると思いつつも、本当に来るのかまだ半信半疑。意外と長い。

※Qoo10 eBay direct shop(購入代行サービス)を通じて購入しました。



実際に届いた本(カバーを外した状態)

そして13日後。届いた。長いようで意外と早かった。

早速開封する。芳しき古書の匂い。
経年による紙の変色とカバーの劣化以外は良い状態。商品説明どおりだ。

中をぱらぱら開いて確認する。
情報量に、眩暈がした。
普段ミュージアムの保管庫に眠り展示室には並ばない、すなわち簡単にお会いする事の叶わない貴重な史料が、ぎっしり紙面を埋め尽くす。思わず合掌。

これだ、これこそ探し求めていた一冊。うわあ早く読みたい。いやすぐ読んじゃうのもったいないどうしよう、まずは本棚の整理から…(錯乱)


保護用カバーをかけて読む準備をした。
やはり、借りるよりも購入して(できて)良かった。
時間をかけて向き合う価値のある本だ。
件のテーマについては趣味で調べている。気になる点を心行くまで追究したい。
一次資料を多数収めたこの本は、いわば "遊べる" 一冊なのである。


「稀少本を探す旅」と題しておきながら、部屋から出ずに解決してしまった。
ありがとうインターネット。

今回は利用しなかった図書館の相互貸借は、今後調べものに役立つ事もあるかもしれない。知っておいて損はないはず。
探し物は見つかったけれど、それとは別に、ロンドン古書店巡りはいつか行きたい。

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