たこやきしゅうちゃん

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亡き父の、車にまつわる3つの話

父が死んで5ヶ月が経った。 去年12月に他界した父の話を、1台の車を通して綴りたいと思う。 まえがき ココイチのカレーは死んだ父の味がする。父とは半別居で食卓を囲むことはほとんど無かったが稀に連れて行ってもらった温泉の帰りによくココイチに行った。二人して辛党なので3辛とか頼んでサウナ以上に汗をかき、店を出たときのあの夜風の涼しさが気持ちよかった。汗を撫でる心地よい風は、露天風呂にも似た清々しさをくれる。父の車にはいつもスティービーワンダーか久保田利伸が流れていた。父は代え

    • 振り上げた拳

      はじめて二郎系ラーメンに行った。 電車を乗り継いで店に着いたのは20時ごろ。その日は生憎の雨。傘を差した人間がギリギリ二人歩けるくらいの歩道に長蛇の列ができていた。やっぱり待つのか・・・たしかにグーグルレビュー好評だったけど、日曜日の夜でもこんなに多いとは思ってなかった。 妻が言った。 「このラーメン屋、食べたらすぐ出るルールがなくて回転が悪いって評判」 そうなんだ。まあそれは仕方ないか。店がそう決めてるんだから。 行列の8割は若者だった。お世辞にもマナーがいいとは言えなかっ

      • 麻雀ってシビア

        年始に麻雀おぼえようと思ってアプリだけ入れて気づけば5月。とにかく覚えることが多すぎる初心者泣かせのゲーム。麻雀に興味を持ったきっかけは義祖母。正月、妻の実家に行ったとき義祖母が「友達と麻雀をやるんだけど弱すぎて話にならないし、みんな老人ホーム入っちゃって戦う相手がいない。とにかく麻雀強えやつ募集!」みたいなことで、僕を含め妻の家族に「次会うまでに麻雀覚えてきなさい」となった。そして興味を示した僕だけが麻雀ルールブックを授けられた。そのころ霜降りが麻雀とかチンチロやってて関心

        • ふとメモ#2

          はるばらぱれ 粗品の新曲「はるばらぱれ」の歌詞にグッときた。本人もネタにしてる亡き父のことを歌った楽曲。一瞬戻ってこないかな、少しでいいから喋りたいな、麻雀できるようになったよ。という詩が続き、2番サビで「瓶ビール注いで欲しいな」と歌う。なるほど、注いで欲しい、か。闘病生活や人生を労う「注いであげたい」じゃなく「注いで欲しい」なのは何故か。粗品は仏壇に瓶ビールを供えられるんですよね。直接酌み交わすことはできないとしてもコップに注いで仏壇に供えることはできる。ただ逆はできない

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        亡き父の、車にまつわる3つの話

          甎全

          お前のこと誰が好きなん? なあ、お前のこと誰が好きやねん ええことないねやろ 普段生活してて お察しします 何を言うとんねん 誰やねんこれ最初に言うたやつ 考えたやつ誰やねんこの言葉 瓦がつまらんて?役に立っとるっちゅうねん 雨風から家を守るという大事な役目を果たしとんねん それをなんやて?いたずらに何もしないで生きながらえてるて? ええ加減にせえよ これみなさん誤解せんといてくださいね 瓦におまだれ食らわしてる訳じゃないすからね この訳分からん言葉作ったやつに言うてます

          コロナ初夜に見た夢

          なんか墓地にいるんですよ、だだっ広い墓地に一人。もうわし死んだのかなと思うじゃない。いやツカミとしては良いと思うよ、映画の1シーン目これならたぶん復讐モノだから。なんか雨の中ずぶ濡れで墓の前に立ってそうだし。実際えぐい高熱で汗だくだったもんで。で、墓地に突っ立ってたら足音聞こえるんです。振り返ったら小津安二郎でした。あの日本を代表する映画監督の小津安二郎です。あの撮影中によく被ってた帽子も確認できました。既にお亡くなりされてるはずなんですが、幽霊とは思わせないほど確かな小津さ

          コロナ初夜に見た夢

          ふとメモ#1 

          警備員と鳩 あるビルの正門前に姿勢のいい警備員がいた。とても姿勢がよく微動だにしなかった。背中に物差しを入れているか背後から拳銃を突きつけられているか、どっちかだと思った。その警備員の真横に平行に並ぶ姿勢のいい鳩がいた。同じ方向を見て動かない警備員と鳩。絵画だった。タイトルは「鳩を相棒にしている警備員」か「警備員を相棒にしている鳩」どっちかだと思った。あまりの美しさに思わずスマホを出したほど。撮らなかったけど。「人生が変わる 姿勢改善のススメ」みたいな本があったら表紙にでき

          わたしと迷走神経

          ※この記事は、映画「殺人鬼から逃げる夜」のネタバレを含みます。 「耳かき嫌い」で卒論書ける自分で耳掃除ができない子だったから、小学校まで母にしてもらってました。奥の方に当たるときの痛みや不快感が嫌いで、そもそも棒状のものを耳の穴に入れることが信じられなかった。母は腕利きの耳かき師ではないので、気付いたら終わってた!みたいなことはないんです。「耳垢は勝手に出ていくから別にわざわざしなくていい」を盾にこれまで生きてきました。これがプリントされたTシャツを毎日着ています。いや心の

          衝撃を受けた短歌

          恋人同士もしくは恋人未満同士の歌だろう。花火デートの帰り、二人はバスか電車に乗っている。そして吊革をはんぶんこ。一つの吊革に二人で手をかけ、車内の揺れに身を任せ、手や浴衣が触れたり触れなかったりしている。 吊革だって揺れている。等間隔に吊られた○(吊革)が、車両の揺動に合わせて触れたり触れなかったりしている。○同士が触れ合うとき、∞(インフィニティ)となる。離れれば解消される。「永遠は無いよね」「無いね」の会話とシンクロした情景がそこにある。心焦がした花火大会の帰り、この時

          僕は妻の鍵を所持している

          妻を見送ってからも布団の中で憂鬱を温めていた。それが出社の憂鬱かと言われるとそうではなく、じゃあ満員電車が嫌ではないのかと言われればそれは嫌である。僕は毎朝、得体の知れない憂鬱を大事に温め育てていることになる。それは多分あまり好ましくない卵だということは薄っすら肌で感じている。アラームを消してスヌーズを1回止めたあたりで起きるので10分くらいだろうか。1日10分、週5で算出すると、年間40時間も布団の中でその憂鬱という名の卵を温めていることになる。これが冬になれば更に伸びる。

          僕は妻の鍵を所持している

          記憶のリレー

          心で記憶しなさい 島田紳助はそう言った。 好きなアイドルの名前はすぐに覚えるしずっと忘れないのに、なぜ徳川将軍の名前は忘れてしまうのか。逆も然り。それは脳で記憶しようとしているからだ。本来記憶は脳で行うものだが、定着させるためには興味感心を植え付ける必要がある。じゃあ興味感心はどうすれば生まれるのか。好きなもののフィールドに置き換え結着させれば良い。全ての事物はどこかで必ず繋がっていると思っていて、例えば有名な登山家が「人生は登山だ」なんて言ったりするが、人生という大きな事

          手の甲と年の功

          祖父母の手 手の甲は最も年齢が現れやすい場所らしい。老化により痩せてくると、筋が張ってきたり血管が浮き出てくる。やがて年輪のように皺やシミが刻まれてくる。美容整形として手の甲へヒアルロン酸を注入する人も少ないくないらしい。 おじいちゃんやおばあちゃんの手は、でこぼこザラザラとしていた。 むかし祖父母家へ遊びに行った帰り、お婆ちゃんはいつもお菓子を持たせてくれた。そのときいつもお婆ちゃんは手を握ってくれた。両手で、僕の手を包むように、やさしく。気持ち悪いと思った。なんでこん

          高菜チャーハン事件

          「いただきます」と言ったら対面で「いただきます」と言ってくれる人がいることの尊さを嚙み締めていた今年初旬の話。妻が夕飯に高菜チャーハンを作ってくれた。「ちょっと味薄いかも。もしあれだったらコレかけて」と、高菜チャーハンと共に食卓に並んだのは醤油。あと、わかめスープもあったかな。 うん、確かに薄かった。妻は一口食べてすぐに醤油に手を伸ばした。品数の少なさを気にした妻は「納豆もあるから足りなかったら食べて」と言ってくれた。醤油をかけるのもいいけど折角だし納豆と合わせてみようかな

          高菜チャーハン事件

          あれに見えるなぁって思った話(2)

          もう1mmも動けないくらいの超絶満員電車に乗ってるとき何にも出来ないじゃない。常に誰かのバッグとか背中が当たってる状態でスマホも見れず、みんな餌を待つ鯉みたいにモニターとか広告を眺めるしかない。そこで『ダイキン』の広告に出会ったんですけど、これがとても良い広告だったもんで7駅の移動時間があっという間でした。 電車ドア上の広告なんですけど「ヒートポンプ式暖房っていう技術を使って2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指すぜ」みたいな企業広告。「ヒートポンプ式暖房」は、石油やガ

          あれに見えるなぁって思った話(2)

          伝説の一日に立ち会って

          ダウンタウンが好きすぎて大阪(関西弁)に触れてみたいと、大学進学を機に念願の大阪へ出てきて早8年目。おかしな理由ですが事実です。しかしお笑い好きを公言していながら僕は一度も聖地「なんばグランド花月」へ足を踏み入れたことがありませんでした。お金は無かったけど8年もあったんだから一度くらいは足を運んでも良かったのにな、とは思う。しかし「伝説の一日 千穐楽 参回目」のチケットが当選したとき、僕は8年待っていて良かったと思いました。いや別に待っていた訳ではなく、初めてはダウンタウンが

          伝説の一日に立ち会って

          忘れがちな【経験を買う】こと

          僕は守銭奴なのでお金を使うことに慎重すぎる節がある。まだ実家にいる頃、弟に倹約家の思想を押し付けていたのは本当に異常だったと思う。それも無駄あれも無駄と、購入目的も聞かず投資だろうが何だろうが端から否定していた。他人のためにお金を使う意味が分からない、みたいな。そこから本を読んだり多くの人と関わるようになって、徐々に消費や浪費について理解を深めていった。 昔、Aという選択をした場合の人生とBという選択をした場合の人生について描いた映画があった(と思う)のだけど、それに似た話

          忘れがちな【経験を買う】こと