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世界の一流エリートでさえチンパンジーよりも間違える!?世界を正しく見る方法を示したファクトフルネス

世界は自分たちが考えている以上に良い方向に向かっている。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣の中で筆者は幾度となくこの事実を主張している。

本書では最初に、世界の事実に関する13問3択形式の問題が出題されている。例えば下記のような質問だ。

Q. 世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?

A. 約2倍になった
B. あまり変わっていない
C. 半分になった

この問題の正解は、Cの「半分になった」。

あなたは正解しただろうか。

筆者が数十年かけて、何千もの人々から得た回答の正答率は7%。我々はチンパンジーにすら遠く及ばないのだと言う(チンパンジーはランダムに選択するので、正答率は33%に近くなるという比喩表現)。しかも、僕のような一般人だけでなく、投資銀行のエリートやグローバル企業の経営者、政界のトップ、著名な科学者ですら同じ結果になってしまう。

私たちのほとんどはメディアやネットから情報を断片的にしか捉えておらず、世界がどう変化しているかを正確に理解していないのだ。それだけならまだしも、メディアは悪いニュースばかりを取り上げるため、私たちは本能的に世界は実際よりも怖く、暴力的で、残酷だと考えてしまうようになっている。

そこで筆者は下記のような疑問を投げかけた上で、誤った思い込みが生まれる理由を人間が持つ10個の本能を取り上げて示して見せた。

間違った知識を持っている政治家が世界の問題を解決できるだろうか。世界を逆さまに捉えている経営者が正しい経営判断ができるだろうか。世界のことを何も知らない人たちが、世界のどの問題を心配すべきかについて気づけるはずがない。

全てあげると長ったらしくなるので、僕が読んで興味深かったセクションを3つ抜粋してみた。全文が気になる人は是非手に取って読んでみて欲しい。

1. 世界の人口の多くは貧困国に住んでいるという誤解!分断本能

人は様々な物事を2つのグループに分けないと気が済まない生き物で、その2つのグループの間には決して埋まることのない溝があると思い込んでしまう。これが分断本能。多くの人は世界が「金持ちグループ」と「貧乏グループ」に分かれていると考えてしまうのだ。

冒頭で示した下記の質問に答えることができないのは、分断本能によるものと言えよう。

Q. 世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?

A. 低所得国
B. 中所得国
C. 高所得国

答えはBの中所得国で、中所得国と高所得国を合わせると世界人口の91%にも上る。中所得国が世界の75%を占め、貧乏でも金持ちでもないグループに属す。グローバル企業にとっては世界に約50億人もの見込み客がいると考えることもできるので、未だに貧乏グループに属していると考えているうちはみすみすビジネスチャンスを失うことになってしまう。

2. 世界の人口はひたすらに増え続けるという誤解!直線本能

次の質問はどうだろう。

Q. 国連の予測によると、2100年にはいまより人口が40億人増えるとされています。人口が増える最も大きな理由は何でしょう?

A. 子供(15歳未満)が増えるから
B. 大人(15歳から74歳)が増えるから
C. 後期高齢者(75歳以上)が増えるから

答えはB。世界の人口は100億で頭打ちし、そこから先の人口の伸びは緩やかになる。

なぜか。

子供の数が増えないからだ。多くの人が貧困から抜け出し、中所得に移行するにつれて女性ひとりあたりの子供の数が減っている。いや、子供をたくさん産む必要がなくなったといった方が正しいだろう。子供に労働を強いたり、病気で亡くなったりさせずに済むようになった。貧困レベルにいた時は、6人産んでも数人は亡くなっていたのが、今は3人産めば適切な医療や教育を提供し、3人とも安全に育てることができる。

増えている事象に対しては、無意識のうちにこれからも同じように増えていくと思い込んでしまう(直線本能)。しかし、事実は異なる。ということは人口に限らず身の回りでも頻繁に起こっているのではないだろうか。

増えている事象に対しては、無意識のうちにこれからも同じように増えていくと思い込んでしまう(直線本能)。しかし、事実は異なる。この思い込みは人口に限らず身の回りでも頻繁に起こっているのではないだろうか。

3. 「すべてはあらかじめ決まっている」という誤解!宿命本能

数十年前、グローバル企業の幹部は西洋が当然これまでと同じように発展すると思い、多額の資金を投資してきた。しかし、現実は違った。IMF(国際通貨基金)はリーマン・ショック以降の西洋の国々の予想経済成長率を3%としたが、5年連続で予想には届かず、遂には2%に引き下げる事態となった。一方で、アフリカのガーナやナイジェリアは平均5%を超える成長率を遂げていたのだ。中国に関してはここ10年で別の国にでもなったかのように変化している。

アジア・アフリカは西洋に追いつくことはできないという思い込み(宿命本能)が、大きな事業機会の損失につながったことは言うまでもない。今どの市場に目を向けるべきかは一目瞭然のはずだ。

常にマクロな視点を持って、世界がどう変化しているのかを理解しておくべき

普段仕事をしていると経営者でもない限り自分の業界、ミクロな視点ばかりで見ようとしてしまいがちだが、自分の市場価値を上げたいと考えるビジネスマンにとってはマクロな視点こそが重要になるのではないか。ミクロとマクロで見た場合、自分が今どんなポジショニングをすべきか変わってくるからだ。例えばIT業界で働いていて、今より自分の市場価値を高めたいと考える人がいたとする。ミクロ目線であれば、日本国内の伸びそうなスタートアップに転職したり、新規事業を任される環境へ行きたいと考えるかもしれない。これがマクロ目線になれば、中国籍の企業に行ったり、中国支社のある企業に入社して、中国語を身につけながら、国レベルで急成長している環境で仕事をする経験を積もうと考えるかもしれない。

自分が見ている世界が全てではないということを改めて気づかせてくれる一冊だった。


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