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「デビュー作を出版に導く出版エージェント」~商業出版で人生が変わった人たち(番外編)~岩谷 洋介さん前編

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今回は、本を出したい人と出版社の仲を取り持つエージェント、岩谷さんへのインタビューです。10年で500冊以上の出版を決めてきた実績があります。現在、出版を目指す多くの人が出版エージェント(プロデューサー)にまず相談するというパターンを取っています。エージェントの視点から「どうすれば本を出せるのか?」を知り、俯瞰して自分を見つめることで商業出版への道が開ける可能性があります。前後編でお送りします。

出版エージェントになったきっかけは?

―――岩谷さんが出版エージェントになったきっかけは、ホームページに記載されていますね。「自分の思いや経験、夢やビジョンを伝えたいという人の多くの方々が本を出版したいと思っていることを知り(中略)、良い新人作家を探している出版社との橋渡しをするコーディネーターを始めることにしました」と。

もっと簡単に言うと、騙されたようなものなんですよね(笑)。

―――そうなんですか?

ある人から出版関係の仕事をしないかと誘われて興味を持ったのがきっかけです。でも、誘った当人が逃げてしまったのです。それで1人で何とかしようと、当時知り合いになった有名経営者の2人に相談をしてみました。すると「ちゃんとした出版社から本が出て書店に並ぶんだったら、あなたにお金を払う人もいる」と2人から同じように言われた。それで著者と出版社のマッチングサービスを始めようと思ったわけです。

―――最初は苦労されましたか。

最初は全然お客さんがいませんし、まったくうまくいきませんでした。それでも当初からベストセラー作家と言われた人と知り合いになって一緒に動いていたので、出版社の人に会うことはできたのです。しかし、その彼が体調を壊してしまい……結局頓挫し、いったん出版ビジネスから離れました。

―――そんな経緯があったのですね。

全然違う業界で派遣として働き始めました。10年前の3月から6月頃です。残念ながらいい結果が出せずに延長はなし。そこでやはり出版ビジネスでやっていこうと再起を決意しました。

―――軌道に乗り始めたのはいつ頃からですか。

すぐにというわけではないです。再開したばかりの頃に、ビジネス交流会で老舗出版社の経営者の血縁である人と知り合いました。その人に、「ちゃんとした出版の企画書を作れる編集者かライターを紹介してほしい」とお願いしたのです。そうしたらアポが取れたのですが、面白いこともあるもので、アポの数日前に別の場所でその人に偶然会ったのです。「2日後に会う予定の岩谷さんですよね」と言われました(笑)。

――運命的な出会いのようですね。

その編集者と組んでから、僕のなかの出版の概念がガラッと変わったんですよ。出版というものは企画がなかなか決まらないし、決まるといっても1年ぐらいは余裕でかかる場合もあると思っていました。しかし、この人と一緒にやったら1カ月くらいで出版企画が決まってしまったのです。

―――それはすごいです。

3人で共著を出したいという人からエージェントの依頼が来たことがあります。それも3人が共著の書籍の企画なんて通るのだろうか?と思っていたら、その彼がある出版社へ持ち込んで採用されたんです。しかも1万5000部くらい売れました。

―――その人はフリーの編集者ですか?

出版社を経てフリー編集者として活躍していた人です。一時は彼とがっちり組んでたくさん本を出しました。「君のおかげで全然休みがない」って嫌味いっぱい言われていました(笑)。「その代わり儲かっていますけど」とフォローしてくれましたけどね。細木数子さんの六星占術本などを手がけた人です。今はライターとして依頼することが多いですね。

年間どのくらいの本をプロデュースしているか

―――岩谷さんの出版エージェントという仕事は、具体的にはどんなことを提供しているのでしょうか。

出版をしたい人に対して、企画の立案や編集のお手伝いをして、出版社との交渉、ライターの紹介、マッチング、原稿完成までのフォロー、出版完了までのサポートをしています。つまり、出版へのフルサポートです。

―――1年間で何冊ぐらい出版を実現しているのでしょうか。

2020年は20冊ほどでしたが、一番多い年は90冊を超えていました。少なくなってしまったのは、出版業界のシュリンクの影響もないとはいえません。出版社は厳選した本だけを出版する傾向が強くなっており、新人著者に対しては慎重になっています。新人の場合は売る努力を含めてコンサルやサポートする人がいないと厳しいなと感じます。

―――新人著者のプロデュースが中心ですか?

基本は新人著者です。2冊目以降を出す著者のエージェントを行うこともありますが、そういった人は出版業界を知った気になり素直さがなくなってしまう場合も多いので、新人にこだわっています。

―――出版したい人からの問い合わせはホームページからがメインですか?

ホームページからの問い合わせはそれほど多いわけではありません。新型コロナウイルス騒動の前は、パーティーや交流会、セミナーなどいろいろな場所に出歩いていたました。そうすると本を書きたいという人と出会うんですよ。その他には、これまでのお客さんが紹介してくれることが多いです。

―――本のジャンルとしてメインは何系が多いですか?

ビジネス・自己啓発が多いです。あとは健康本ですね。

―――今まで携わった本は合計何冊ぐらいですか。

このビジネスを始めたのが10年前で、今までで500人以上は決めています。最初の2年は模索状態でほとんど実績がなかったのですが、平成23年の11月に知り合った人と組むようになってからビジネスが大きく拡大しました。ついにご飯が食べられるようになったという感じです(笑)。

―――その人は先ほどのフリー編集者ですか?

いえ、また別の人です。その人は顧客をたくさん抱えていて企画書も書けるのですが、出版社への売り込みが苦手というタイプでした。自分がブラッシュアップした企画書に出版社からあれこれ言われるのを嫌っていましてね。その点、僕は彼の企画を売り込む役割。僕は企画書を書いていないので何を言われても気になりません。彼は僕みたいに、出版を決めてくる人を求めていたので役割分担がばちっとはまったわけです。彼と組んで急に月の売上が100倍以上になって驚きました。

――節目節目で人との出会いが転機につながっているのですね。

企画の案内の方法は?

―――ところで、売り込み先の出版社とのパイプはどうやって構築するのでしょうか。

出版した人が出版記念セミナーやパーティーを開催することがありますが、そこに参加して知り合うことが多いです。出版記念パーティーは著者が主催するケースがほとんどですが、よほど多忙でない限り版元(出版社のこと)の編集担当は来ますから。そうすると、まず編集担当と名刺交換できます。その編集者と仲良くなれば、同じ出版社の別の担当者や、他の出版社の知り合いを紹介してもらうこともできます。そうやって輪を広げていきます。

出版社の社員、特に編集者は他の出版社に転職するケースも珍しくありませんから横のつながりはけっこうあります。

―――そうして知り合いになった編集者に対して、出版したい人から預かった企画書を提案するわけですね。企画書を何社ぐらいに案内しますか。

決まるまで何社も案内します。僕は基本的に、企画書を多数の編集者に一斉メールすることはありません。1社に案内して数日で反応がなければ次の出版社へ案内していくという方法です。もちろん途中で手直しをすることもあります。多数送ってもあまりにも反応が悪い場合は、5、6社にまとめて送ったり、大幅に手直ししたりもします。

―――「こんな人だと出版が決まりやすい」という傾向はありますか?

プロフィールが興味を引く人ですよね。僕が最も重視しているのは著者のプロフィールです。しっかりしたプロフィールの人だと出版社も話をきちんと聞いてくれます。

例えば、「この人は面白いプロフィールをお持ちですが、このテーマよりもこんなのがいいのでは…」みたいに、編集者がアドバイスをくれることもあります。こちらが「仕事術」のテーマで出しても、著者の持つスキルを前面に出したテーマのほうがいいよね、といった感じで企画を考えてくれることもあります。プロフィールに興味を持ってもらえないと、そうはなりません。

―――プロフィールの重要性はよくわかります。

自分のプロフィールをきちんと書ける人はなかなか少ないですね。そこで僕はプロフィール作成サービスも始めました。出版社に売り込むプロフィールを自分で書くと、単なる職務経歴の羅列みたいになってしまい、相手に響きません。しかし第三者として客観的に話を聞いていくと「そこは面白いじゃないですか!」みたいな掘り下げができるので、興味深いプロフィールを作ることができます。

―――では反対に出版まで行き着かない人は、プロフィールがいまいちな人ともいえますか。

そうですね。それから「餅は餅屋」じゃないですが、プロに任せようとしない人は決まりづらい傾向はあるのではないでしょうか。つまり出版エージェントである僕に依頼して、出版社と接点をつくっておきながら、僕たちプロの意見をあまり聞かず著者としての自我を通そうとする人です。例えば、「印税はどうしても20%欲しい」と要求してくるとか。こういう人はたまにいますが、「それならどうぞ自費出版でやってください…」という話になってしまいますよね。

後半へ続く

PROFILE
岩谷洋介(いわや ようすけ)
H&S株式会社 代表取締役 出版エージェント
大学卒業の年に父急死の為、経営していた、アミューズメント施設とレストランチェーンの経営者となる。10年目の節目を迎え、オーナーという立場になり、新しい仕事に挑戦しようと決断する。セミナーや勉強会に出席することで、自分の思いや経験、夢やビジョンを伝えたいという人の多くが出版したいと思っている事を知る。たまたま出会った、出版業界の方より、本が売れない時期である為、キャラが立ち、熱い思いのある方の本を厳選して出したいというニーズを知る。
そこで、本を出したい個人と良い新人作家を求めている出版社との橋渡しをする出版エージェント業を始める事となる。

H&S株式会社
https://hs-1.jp/

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