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「デビュー作を出版に導く出版エージェント」~商業出版で人生が変わった人たち(番外編)~岩谷 洋介さん後編

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今回は、本を出したい人と出版社の仲を取り持つエージェント、岩谷さんへのインタビューです。10年で500冊以上の出版を決めてきた実績があります。現在、出版を目指す多くの人が出版エージェント(プロデューサー)にまず相談するというパターンを取っています。エージェントの視点から「どうすれば本を出せるのか?」を知り、俯瞰して自分を見つめることで商業出版への道が開ける可能性があります。今回は後編です(前編はこちら)。

どの出版社から本を出せるといいのか?

―――本を出せるとしたら、どこの出版社がいいのでしょうか?

例えばビジネス書ならば、ダイヤモンド社や東洋経済新報社から出したいと著者は考えがちです。自分のブランディングにはとてもいいですよね。それが実現できたら素晴らしいのですが、非常にハードルが高いです。それに書店・オンライン書店で買う読者は、出版社名で本を選ぶと思いますか?

―――それはないと思います。

ですよね。多くの人はこの意見に賛同してくれると思います。タイトルやテーマ、著者のプロフィールを見て「面白そうだな」と思って読んでみようと思うのです。だからこそタイトル、テーマ、プロフィールは本当に大事だなと思うんです。したがって、特に新人著者に限っては、どこの出版社から出したいというこだわりは持たない方がいいというのが僕の持論です。

―――名のある出版社から出しても売れない本は山のようにありますしね。本の発売後、プロモーションに力を入れてくれる出版社とそうでない出版社の差を感じることはありますか。

あるといえばありますが、大きくはないと思います。どの出版社の営業担当も、発売された当初は積極的に書店営業に行ってくれますが、最初だけということが多いです。初動の動きが良いことがわかったら、本腰を入れて営業を強化したり広告を出してくれたりします。つまり売れている本だけに絞って販促するというのが普通です。

ただ、なかには地道な販促に力を入れて結果を出している出版社もあります。かなり少数ですが。富山県在住の著者がいて、地元の大型書店で派手に陳列してもらうことがありました。書店員に聞いたら、その出版社の営業担当が熱心に営業に来てくれたからだそうです。東京から定期的に営業に来るのはその出版社だけだと言っていました。

原稿は自分で書くと熱が入る

―――本を出したい人からよく「原稿は自分で書いた方がいいですか?」と聞かれます。これについてはどうお考えですか。

僕は自分で書いた方がいいと思うんですよ。多くの人は2冊目、3冊目を出すことを想定していますが、最初の1冊が最後の1冊になるかもしれないわけです。1冊めから全力でいかないと、2冊目、3冊目なんてあるわけないのです。自分で書いて出版できるレベルに達していなければライターに依頼してリライトするという手もあります。僕のサービスのなかでは、最初からライターの方を紹介することを前提にしていますが、本来は自身で書くのが一番いいと思います。

―――なるほど。自分で書いた方が熱量も伝わるかもしれません。2冊目、3冊目を出せる人の特徴はありますか。

まずは1冊目が売れないと話になりません。重版がかかるのは必要条件だと思います。初版で割れても(初版で終わってしまうこと)、きっちり売り切った状態になっていることです。増刷するくらいなら新しい本を出した方がいいと考える出版社も存在します。

―――1冊目が売れないと2冊目を出すのは相当に難しいということですね。

難しいですね。出版物全体が売れない時代なので。1冊目は一生懸命いい本を作って、それを一生懸命自分で売る努力をすることが大事だと思います。出版社が売ってくれるのが当たり前と思ってはいけませんね。1冊目の本は自分の名刺代わりでしょう。名刺を自分から配らない人が広く世間に顔を売れますか? それと同じです。キャンペーンをしたりセミナーを開いたり、売る方法はいろいろあります。

書店へ挨拶に行くときは注意が必要

―――自分で売る努力といえば、著者自ら書店へ挨拶回りをするという方法もあります。あれは効果があると思いますか。

昔はあったかもしれませんが、今は場合によります。地方であればいいかもしれません。小さな出版社であれば営業担当の数も限られていますから、地方は回りきれないことが多いです。そんな場合、地方在住の著者が、地元大型書店に挨拶に行くのはいいかもしれません。地元の著者に対しては優しく対応してくれて、著者名を大々的に掲げて「○○○○フェア」みたいなことをやってくれる書店もあります。

ただし、その際に大事なことは、挨拶回りに行くとしても出版社の営業の許可を必ず取ること。許可を取らずに書店に挨拶に行くのはご法度です。出版社の営業の人も本音では嫌がると思うんです。自分の仕事を否定されているようなものじゃないですか。また、書店の方も忙しいですから突然アポもなしで来られても困るわけです。著者が書店に許可もなく挨拶回りに行き、書店から出版社へクレームが入ったという話も何度か聞いたことがあります。

本を出したいなら…

―――ところで岩谷さんが今まで手がけた本で最も売れた本は?

坂戸 孝志さんの『9割の腰痛は自分で治せる』(中経出版/2011年6月)です。28万部までいきました。その続編となるカラーにした本は4万部で、合計32万部です。坂戸さんと会ったのは偶然でした。あるセミナーに参加したときに、たまたま隣に座っていたというのが最初の縁でした。出版後、坂戸さんのビジネスは大きく伸びましたよ。

―――デビュー作でそこまで売れると、まさに出版によって人生が大きく変わるでしょうね。

ある女性の著者は、私のサポートで本を出したところけっこう売れたのですが、その内容が業界を否定するようなものだったので、同業者から叩かれたことがあります。しばらくは精神的に落ち込んだようです。ただその本のテーマに賛同してくれる人もいて、全国から公演に呼ばれるようになりました。今では「女性の生き方」みたいな別の角度からの講演依頼も来るようになったと喜んでいました。

またある著者は、本を出すのにあまり乗り気ではなかったのですが、私がぜひにと勧めて本を出させた。すると10万部くらい売れてしまい、ビジネスへの大きな効果を実感したというケースがありますね。

―――本を出すお手伝いを通して、いろいろな人の人生の転機にかかわっているんですね。

本はやはり強いと思いますよ。「本を出して失敗した」なんて言っている著者はいませんね。たとえ売れなかったとしても、家族や知人が喜んでくれて、「すごい」と褒められて、自己重要感が満たされるという効果もあります。

―――最近の商業出版の傾向は?

ここ数年は新人著者の企画が決まりづらくなってきた、というのが正直な感想です。これは僕もなかなか困っているところです。「人がなぜ本を出したいのか」を突き詰めていったときに、「自分自身を多くの人に知ってもらうため」とか「信頼感を高めるため」といった目的があります。その目的が実現できるのであれば出版以外の方法を提案してもいいのではないかと思うようになりました。出版を軸にするとしても、別のかたちで出版希望者のニーズを満たせるサービスが提供できないのか考えているところです。

―――本が売れない時代ですからね。

本を出すことによって形成される著者の価値は今でも大きなものはあります。電子書籍は市場を拡大していますが、電子書籍では紙の本の権威性にはまだまだ追いつかないでしょう。しかし、先ほどお話したように新人著者が本をすぐ出せるという状況でもないので、これから本を出したい人で予算があまりない場合は、まずは電子書籍でデビューするというのも現実味のある話だと思いますよ。

―――最後の質問です。本を出したい人にアドバイスをお願いします。

自分でやれることを全部やるしかないですよね。では、やれることって何だ?となりますよね。そうした思いがあるけれど何から始めていいかわからない人に、出版する方法を教えていくのも僕の役割かなと思っています。「人は誰でも1冊の本は書ける」ってよく言われますよね。

―――聞いたことはあります。

本を書くのに、その分野で一番すごい人である必要はないんです。みんながみんな、すごい人から教わりたいと思っているわけじゃないから。だからトップクラスの人じゃなくても、その道である程度実績を重ねた人なら本1冊くらい書けるし、その人から読みたいという人もいるはずです。だから誰でも本は書ける。書けるけれど、出版するには何をどうすればいいかわからない。そのギャップを埋めてあげたいのです。

PROFILE
岩谷洋介(いわや ようすけ)
大学卒業の年に父急死の為、経営していた、アミューズメント施設とレストランチェーンの経営者となる。10年目の節目を迎え、オーナーという立場になり、新しい仕事に挑戦しようと決断する。セミナーや勉強会に出席することで、自分の思いや経験、夢やビジョンを伝えたいという人の多くが出版したいと思っている事を知る。たまたま出会った、出版業界の方より、本が売れない時期である為、キャラが立ち、熱い思いのある方の本を厳選して出したいというニーズを知る。
そこで、本を出したい個人と良い新人作家を求めている出版社との橋渡しをする出版エージェント業を始める事となる。

H&S株式会社
https://hs-1.jp/

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