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本が売れる3つの理由

すべての本は、売れることを期待されている

すべての本は、売れることを望まれて刊行されています。

著者はもちろんのこと、その本に携わった編集者・デザイナー・イラストレーター・カメラマンといった制作スタッフ、営業部や広報部など本を販促する人々は、本が売れると信じて仕事をしています。
また、出版社の総務・労務・経理部や倉庫の管理部のような人々も、本が売れることを願っています。

さらに、その本を仕入れた書店や取次(本の問屋さん)といった出版業界の関係者や、その本の印刷所・製本所・紙屋さんなどハード面の本作りにかかわった方々も、その本が売れることを期待しています。

このように出版されたすべての本は、関係者から売れることを期待されています。

もちろん、「売れた!」の数は、本ごとに違いがあります

50万部・100万部のような大きな部数を目指し、初版から10万部を刷るような、多くの本好きな読者を狙って刊行される本もあるでしょう。

一方、ターゲットを絞り込み、総ページが400ページ・500ページもあって価格も5000円以上するような専門書は、たとえば3000部を目標に初版1000部から始めるというケースもあります。

このように目標に違いがあったとしても、かかわった人は、本が売れてほしいと期待していますし、一人でも多くの読者に読んでほしいと願っています。


では、売れる本とはどのようなものでしょうか。


本が売れる3つの理由

本が売れる理由には、いろいろありますが、私が編集している実用書の場合、大きく分けると、次の3つになるでしょう。

  ①プロフィール力
  ②企画力
  ③営業力

著者や監修者が著名で、その“ネームバリュー”によって本が売れるのが「プロフィール力」。
本の内容が良くて売れるのが「企画力」。
そして「営業力」とは、文字通り、いろいろな販促活動を行って本が売れることをいいます。

本の売れ行きは

  ①プロフィール力 × ②企画力 × ③営業力

という計算式の表すことができるのです。

この3つは、私が出版業界に入った頃、先輩から教えていただいたことで、私がキャリアを重ねていくにつれ、「まさに、その通り!」であると実感しています。


では、この3つの理由を、ひとつひとつ詳しく見ていきましょう。


①プロフィール力

まずは「プロフィール力」。

本屋さんにて、自分の興味があるコーナーにたどり着いたとき、たいていの人は、自分の知っている方によって書かれた本に気づきます

テレビやインターネットでよく見かける人や、自分が関係している業界内の著名人、あるいは以前、ある本を購読したときに、楽しく読めた、役に立ったなどの記憶の残っている本の著者が刊行した新刊などは、手にしてみようと思うものです。


「プロフィール力」について、もう少しわかりやすい例をいくつかあげましょう。

たとえばここに、「肩こりを治す本」が2冊あるとしましょう。

ひとつは、テレビでもお馴染みのお医者さんが書いた本。
レギュラー番組以外にも、さまざまな番組に出演し、SNSでも話題になっている方です。

一方、もう1冊は、無名のお医者さんが書いた本。
先生のことを知っているのは、患者さんと周囲の関係者くらいです。
自身の診察に基づく「肩こりの治し方」が書かれています。


この情報だけを見て、あなたは、どちらの本を読んでみたいと思うでしょうか?

おそらく、無名の著者が書いた本に興味をひかれる方は、さほど多くないでしょう。

知らない人の本より、いつもテレビで見ている先生の本のほうが、親近感がわき、信頼性を感じるからです。


同じように、「テニスのスキル」について書いた2冊の本があるとします。

1冊は、松岡修造さんが書いた本で、もう1冊は、私(ゴファン)が書いた本だったとしましょう(じつは、私は若い頃にテニスコーチをして生計を立てながら、全国のトーナメントを回っていました)。
あなたは、どちらの本を手にするでしょうか?


たとえ、私が書いた本のほうがすぐれた内容で、多くのプレーヤーを上達させる本だったとしても、ほとんどの人は松岡修造さんの本を選ぶはずです。
(もちろん、実際も松岡修造さんのテニススキル本のほうが、絶対にすぐれています!)

なぜなら、当たり前のことですが松岡修造さんのほうが断然、知名度が高いからです。
テニスの実績も申し分ありません

「プロフィール力」によって本が売れるというのは、こういうことです。

②企画力

次は「企画力」です。

これは、内容がすぐれていたり、インパクトのあるタイトルがつけられることで、本が売れるケースです。

本屋さんへ行くと一目瞭然ですが、世の中には、同じような内容の本が数多く出版されています。

その中で、ユニークな切り口であったり、読者のニーズ・ウォンツをしっかりとつかんだ本が、売れるのです。

「切り口」とは、簡単にいうと「ターゲット読者」です。

同じテーマの事柄を、「『誰に』読んでほしいか」を明らかにする。これが切り口です。

たとえば、「株投資」の本。
このテーマを扱った本は、まったくの初心者向けの入門書をはじめ、儲かる株の見つけ方、高度なテクニックの指南書、実際に儲かった人の成功法則など、たくさんあります。

入門書でも、テキスト中心の読み物や、図解したものなどさまざまです。

さらに、図解にもいろいろあり、硬めの教科書的な印象を与える図解や、かわいらしいイラストを使ったもの、先生と生徒でやりとりするもの、マンガを使ったものなど、本当にいろいろな種類があります。

これらは「『誰に』読んでほしいか」によって、変わります。

「マンガが好きな株の初心者」でも、マンガのタッチにより、ターゲットが変わります。
20代の女性が好むタッチと50代男性が好むタッチでは、同じマンガ好きでも大きく異なるからです。

また、同じ初心者向けでも、ターゲットによって構成が変わります
リスクを低くして、長期間かけて着実にお金を増やしたい人なのか、3年で1億円のような一攫千金を狙っている人なのかなど、初心者にもさまざまなタイプがいるからです。

このようにターゲットを変え、その人に一番ぴったりの本にすることが、切り口を変えるということです。
そして、その切り口にマッチする読者が多ければ、本が売れる。つまり、企画力がすぐれていることになります。


企画力に含まれるものとして「タイトル」もあります。

タイトルが魅力的であるかどうかは、本の売れ行きに大きくかかわるからです。

実際、ビジネス書や実用書を出版している、すべての出版社はタイトルに力を入れていますし、タイトルを決定する「タイトル会議」を設けている出版社も少なくありません。

タイトルの善し悪しは、本の売れ行きに大きな影響を与えるのです。

③営業力

本が売れる3つめの要因は「営業力」。

これは、基本的に出版社や著者がどれだけ行動するかにかかっています。

具体的には、

  ・書店のいい場所に並べて、多くの人の目に触れる
  ・POPやポスターなどで、本の存在を周知する
  ・SNSやホームページなどで、多くの人に告知する
  ・マスコミやインフルエンサーに取り上げてもらうためにアプローチする
  ・新聞やSNSなどに広告を出す

などです。


その人が知らないもの=その人にとって『存在しないもの』」です。

ですから、まずは本の存在を知ってもらうことに力を入れ、その後、購入いただけるようにさまざまな工夫をしているのです。

こうした販売促進活動が、「営業力」となって、本の売上を大きく左右します。

出版社や著者が積極的に売ろうとするか、しないかでは、大きく結果が違ってくるのは当然でしょう。

以上の3つが、本が売れる主な理由です。

それぞれがかけ算となり、

  ①プロフィール力 × ②企画力 × ③営業力

にて、本の売れ行きが決まるのです。



文/ネバギブ編集ゴファン


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