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本の編集って、どんな仕事なの? たとえるなら「本の監督さん」です。

 「本の編集者」のイメージって、ありますか?
 
誰もが知っているレベルでいえば、国民的アニメ「サザエさん」に登場するノリスケさんの職業が出版社に勤める編集者。普通の人であれば、作家の伊佐坂先生の家に「原稿を受け取りに行く人」くらいのイメージしかないですよね?

 プロの編集者である私も、最初は「先生、原稿まだですか?」くらいのイメージしかありませんでした……。

 でも、編集者といっても、扱う媒体によって仕事の内容は大きく異なります。ノリスケさんの場合は、いわゆる「文芸編集」というカテゴリー。小説やエッセイといった作家先生ありきの本なので、内容の構成&表現のチェック、著者のケア、新人作家の育成などが主な業務内容。作家ありき、という点では、「マンガ編集」も似た側面があると思います。

そして、編集にはこのほかにも主に次のようなカテゴリーがあります。


◎実用書編集…
健康、料理、スポーツ、資格系など、いわゆる実用的な媒体を扱う編集者。

◎ビジネス書編集…
ビジネスジャンルを扱う編集者。内容としては文芸編集に近い。

◎雑誌・ムック編集…
雑誌やムックを扱う編集者。主に短いスパンでチームを組んで制作にあたる。

◎広告PR系編集…
企業や行政などのPRに関わる編集者。プロデュースに近い業務も多い。

◎デジタル媒体編集…
デジタル系媒体を扱う編集者。広告系に近いが、数値やデータに基づいたコンテンツづくりが特徴。


 まだまだ、細かく挙げればキリがないほど、編集の仕事は多岐にわたります。
ちなみに、現在の私が属するのは「実用書編集」。過去には「文芸編集」以外、上記のカテゴリーすべてに関わった経験があります。

 いろいろ細かい業務内容は媒体によって異なりますが、職業としてのイメージを端的に表現するならば……

 「本の監督さん」つまり、「ブック・ディレクター」と表現したほうが実際のイメージに近いと思います。
 
 映画監督は、映画をつくります。脚本家がいて、役者さんがいて、裏方にはカメラマン、照明さん、音声さん……多くのスタッフを取りまとめ、ひとつの作品に仕上げていきますよね?
 
 本の編集者も同じです。著者や監修の先生がいて、モデルさん、カメラマン、ヘアメイク、スタイリスト、イラストレーター 、さらに文章を手がけるライターや、誌面のレイアウトを考えるエディトリアル・デザイナーなど、多くのスタッフの手を借りながら、一冊の本をつくり上げていきます

 よく「映画は監督のもの」といいますが、実は、本というのは「編集者」の作品といっても過言ではありません

 それなのに! 本の編集者は日陰の存在。映画監督のファンはいても、編集者にファンはいません
 
 本来なら、書店にも著者別のコーナーがあるなら、編集者別のコーナーがあってもいいのに……。

 というのも、編集者によって、つくる本には個性があり、色があります。実はお気に入りの本が同じ編集者の本だった、ということもあるかもしれません。

 たかだか一冊の本。されどその一冊の裏には、多くの人の思い、そして、編集者のこだわりが込められています。

 これから、【シュッパン前夜】では、プロ編集者の視点で、これまであまり注目されたことがなかった「本の知られざる魅力」を紹介していきたいと思います。

パッと見ではわからない、知られざるプロの技と本づくりの裏側。

これを知ることで、本の楽しみ方がもっと広がるのではないか? 
ひとりでも多くの方々に伝えることができればいいなと考えています。

「シュッパン前夜」。

斜陽といわれる出版界に、明るい未来という夜明けが訪れることを願いながら。

編プロのケーハクさん

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