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月刊 編プロのケーハク

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シュッパン前夜メンバー、編プロのケーハクの記事まとめ。出版界のあるある、新人ライター&編集者向けのスキル解説、出版界の問題や課題について。
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#出版業界

新人ライターや編集者に教えている「その企画の根本に熱量はあるか?」

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 先日、私の数少ない友人に、とある映画プロデューサーがいるのですが、彼と久々に飲みに行きました。 「最近の映画市場ってどうなの? 配信の影響とか受けてない?」と聞いたところ、それほど変化はないとのこと。 映画というのは、いつの時代も若者が友達に会うきっかけだったり、デートに誘うきっかけだったりするので、変わらず若者が劇場に足を運んでいるのだとか。 なるほど、劇場に行くのは、映画のコンテンツだけがきっかけではないわけですね。出版人

後世に残したい出版編集の技術アーカイブ「ラフは原寸で描く!」

今宵、本の深みへ。 この度、独立してフリーになることになった、編プロのケーハクです。 おそらく、編プロ所属で書くのは今回で最後になるかと思いますが、今後も「ひとり編プロ」として出版編集業務は継続していく所存ですので、「編プロの」はそのまま据え置きということでお願いします(どうでもいいですよね?)。 さて、今回は「後世に残したい出版編集の技術」ということで、「ラフ」をテーマに解説していきたいと思います。 最近は、生成A Iが猛烈なスピードで発達してきて、すでに誌面のデザイ

原作をリメイクする場合に「改変」はどこまで許されるのか?

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 年明け最初の記事になりますが、年始からいろいろと暗いニュースが多くて、(多くの皆さんがそうだと思いますが)心が少し「しんどい」です。 年度末に向けた忙しさもあるのでしょうが、社会全体のネガティブな雰囲気に晒されつづけると、マインドがそっち方向に引きずられてしまって、なかなかよろしくないような気がします。 スポーツくらいですよ、明るいニュースは(前田穂南選手、本当にありがとう!)。 さて、漫画原作のドラマ化問題で、最悪の結果とな

出版業界が「改革前夜」っぽい雰囲気になり始めているような気がする件

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 なんとも歯切れの悪いタイトルですよね? 今回は、出版業界にまつわる“ポツラポツラ”とした最近の話題にふれ、なんとなく感じた「変革の雰囲気」について、極めて個人的かつ、正直な思いを綴りたいと思います(笑)。 無人書店「ほんたす」がオープン東京メトロと取次大手の日販、そしてディスプレイ業界大手の丹青社が組んで、溜池山王駅に9月にオープンした無人書店。 冷凍餃子とかの無人店舗はよく見かけますが、ついに無人の書店が登場。店舗面積は約1

発信者目線で「面白いだろう」と捻り出した本は売れず、こんな本が「必要だよね?」とユーザー目線でふんわり生まれた本ほど売れる問題

今宵、本の深みへ。 編プロのケーハクです。 主に実用のジャンルですが、これまでたくさんの本を企画したり、つくったりしてきました。 出版社からのオーダーを受け、企画立案から制作までマルっと一式請け負うわけですが、最近は「とにかくヒットする本をよろしく!」的な恐るべき依頼が増えてきました……。 特にはじめて取引をする出版社の場合は期待が大いに膨らんでいるようで、「すでに成功する気満々」で依頼してくることがほとんど。 こちらも継続的な受注がかかっているため、失敗が許されない

今の出版界に必要な人材は「優れた編集者」より「最強の商人」!?

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 正直、日本のコンテンツ制作力は、すごいと思います。 日本の書籍は、中国や台湾をはじめとするアジアでも人気。たとえば、日本で重版していないのに中国版のオファーが来たり、東洋医学の翻訳本をそっちが本場であろうはずの中国からオファーされたりします。 これは一例に過ぎませんが、とにかく、書店に並ぶ多彩なラインアップを眺めていると、きめ細かいこだわりが詰まった日本の書籍編集力はすごいな〜と、同業ながら感心しています。 書籍に限らず、漫画

美容・健康書でおなじみのビフォア&アフター表現をやめたい話

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 ああ、もうやめたい……ビフォア&アフター。 そうです。ダイエット商品や、健康・美容書でよくある「こんなに変わりました!」っていう比較表現のこと。 ダイエット本などは、かなりの高確率でやらされます。そう、文字通りやらされるんです(笑)。私は毎回、反対してるので……一応。 美容・健康書の場合、ビフォア&アフターは、出版社のオーダーでやることがほとんど。制作サイドから「やらせてくだい!」っていうことはほぼない、と思いますけど……(あ

編集者は本のアンチレビューに傷ついている

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 本がある程度売れてくると、「アンチレビューが増える」のは仕方のないことなのかもしれません。気にするものではないとわかってはおりますが、作り手としてはやはりそういうのを見ると傷ついてしまいます。 批判的な感想であっても真っ当な意見なら「なるほど、次に活かそう」と、しっかり参考にさせていただいておりますし、むしろ感謝しております。 しかし! ただただマウントを取りたがっているような方々の発言には、いけないことだとはわかっておりますが

新人ライターや編集者に教えている 「取材の返しはYesよりNo」

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 前回、「新人ライターや編集者に教えている短文のススメ」というライティングの初歩的なコツ(あくまで持論です)を書かせていただきました。その後、メンバーからぜひ続編を、とのリクエストをいただきましたので、僭越ながら今回も新人さん向けのテクニック(持論です!)をご紹介します。 第2弾のテーマは「インタビュー」。 インタビューと言っても、考えなければいけないポイントってめちゃくちゃ沢山ありますよね? 自分が取材中になにを考えているのか

新人ライターや編集者に教えている「短文のススメ」

 今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。  ところで、私が所属する編集プロダクションには、毎年ライターや編集者を志望する新人さんが何人か入社してきます。  そのほとんどは未経験者。出版社の場合、そもそも募集枠が少なく、中途採用者には即戦力を求める傾向が強いので、未経験者は業界への足掛かりとして編プロを選択する方が多いように思います。  さて、右も左もわからない「真っ白なキャンバス」状態で入社した新人編集者さん。初期段階で身につけるべきスキルとは、一体? 原稿が書けな

「インフルエンサー本」が激増しているのはなぜ?

 TwitterやInstagram、YouTubeなどで多くのフォロワーから支持されるインフルエンサー。彼らの存在は今、出版界にも色濃く影響しています。  いわゆる「インフルエンサー本」というもの。ひと昔前はTwitterのまとめ本ブームなどもありましたが、現在はインフルエンサーを著者とした本が、ほとんどのジャンルで出版されるようになりました。  たしかに、多くの固定ファンを擁するインフルエンサーの本は、出版社側にも魅力です。著者がひとたび告知をするだけで、発売前であっ

書籍にもアカデミー賞的な賞がほしい件

 先日、2021年本屋大賞が発表され、町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)が大賞を受賞しました。中央公論新社さんの社内はお祭りムードだったそうで、シュッパン前夜のメンバー、同社に在籍する塚Bさんも「巨人軍優勝のような歓喜」と、さすが読売グループらしいコメントを寄せてくれました(笑)。 ジャンルごとに一応賞はあるけれど……  しかし、文芸編集者ではない私にとってはちょっと不満。だって、日本には文学賞がたくさんあるじゃないですか!? 小説だけ華やかな賞レー

これ、出版業界のタブーかも!? 世の中に「パクリ本」が多いのはなぜ?

 書店に行くと、皆さんも気づきませんか? 「この本、あの本と似てるな……」と。 そうです。今回のテーマは、いわゆる「パクリ本」です。どの業界でも“パクり”(と思われる)商品はあると思いますが、出版はなかでも特に多く見られる傾向にあるように思います。 しかも、出版界は「パクリに寛容」な部分もあると、個人的には感じます。そこには明確な理由もあるので、今回は正直に(笑)、その辺りをわかりやすく紐解いてみようかと。 「着想パクリ」は日常茶飯事 ベストセラーといわれる本。たとえば

「編プロ」って知っていますか? 出版社と編プロの編集者の違いとは?

私、「編プロのケーハク」と名乗っておりますが、そもそも「編プロ」ってご存知ですか?    編プロとは、「編集プロダクション」のこと。かろうじて認知されている(であろう)一般的なイメージとしては、出版社から委託されて本や雑誌を実際に制作する(手を動かす)外部の(アウトソーシング)制作会社というところでしょうか?  まあ、その通りなんですが……(笑)。出版社からの制作依頼を引き受けて、納期までに完成データを納めるっていうだけが仕事のすべてでもないんですよね。否、制作依頼を待っ