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書籍にもアカデミー賞的な賞がほしい件

 先日、2021年本屋大賞が発表され、町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)が大賞を受賞しました。中央公論新社さんの社内はお祭りムードだったそうで、シュッパン前夜のメンバー、同社に在籍する塚Bさんも「巨人軍優勝のような歓喜」と、さすが読売グループらしいコメントを寄せてくれました(笑)。

本屋大賞

ジャンルごとに一応賞はあるけれど……

 しかし、文芸編集者ではない私にとってはちょっと不満。だって、日本には文学賞がたくさんあるじゃないですか!? 小説だけ華やかな賞レースがあって、テレビのニュースとかで流されたりしているのを見ると、正直「うらやましい……」と思ってしまいます。

 たしかに小説以外の賞もあります。ビジネス書だったら「ビジネス書大賞」「読者が選ぶビジネス書グランプリ」、料理本であれば「料理レシピ本大賞」など。実は、あまり知られていませんが、実用書にも「実用書ブックフェスタ大賞」というのがあったりします。

 でも、正直にいえば、これらの賞って、どれがどれくらいすごくて権威があるものなのかよくわかりません。出版業界内の人間であれば、それはどんな賞であっても評価されることはうれしいです。しかし、一般的な読者の立場からすると、「へえ〜、そうなんだ〜」で終わりそうです……。

実際、こんなことがありました。

 私が担当した本が、2年前に実用書ブックフェスタ大賞の準大賞に選ばれたという連絡を版元担当者の高橋ピクトさんから受けました。受賞したのはその年の2月末で、連絡を受けたのは3月も終わりの頃

「え?」

 うれしい連絡ではあったんですが、授賞式はすでにひっそりと終えられていたそうで、担当編集の高橋さんですら知らされていなかったとか(笑)。

 そのような賞があることを恥ずかしながら知らなかった私は、慌ててネットを検索したところ、ちょっとした記事がたしかにありました……(非常に小さい記事)。
 
 で、早速会社に報告したところ……ああ、そうなの? おめでとう。

「リアクション、薄っ!!!!!!」

 編プロの編集者であっても、この賞の認知度は低かったのでした(涙)。

賞を一本化して権威や認知度を高めてほしい!

 そんな経緯もあって、本にもアカデミー賞的な賞がほしいと思ったわけです。「受賞したよ!」「え〜すごい!」「やった〜!」みたいなお祭りムード、私も体験してみたいです……。

 で、勝手に思っているのが、「本屋大賞」のジャンル拡大案。大手取次の2社いずれかだけとか、一部の大手出版社だけとか、主催する会社に偏りが出ないよう公平を期したいですね。できれば、全出版社協賛と行きたいところですが、各社の事情があって難しいということであれば、やはり書店さん主体が公平ではないかと。

  現行の本屋大賞が一番注目度も認知度も高いですし、それにバラバラだった各ジャンルの賞を集約して一本化するのが一番実現しやすいのではないかと。そして、全出版社ドキドキの年一回の大イベントを開催します(笑)。

「国内小説部門」「翻訳小説部門」「ビジネス書部門」「料理レシピ本部門」「健康書部門」「ノンフィクション部門」「エンタメ・スポーツ書部門」「児童書部門」「専門書部門」「マンガ部門」etc. こんな感じで各部門の大賞を選出。

 書店においても全ジャンルで大きなキャンペーンが展開できるので、普段は書店に足を運ばない新規読者も獲得できるチャンスが広がります。

 賞の権威と知名度を上げれば、出版とは無関係の友人や家族に報告しても「へえ〜」で終わることなく、きっと祝福してくれることでしょう(笑)。

 出版界全体を盛り上げるためにも、本のアカデミー賞の創設、いかがでしょうか? 考えていただけませんでしょうか?

文/編プロのケーハク



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