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フードエッセイ『アイスクリームが溶けぬ前に』#19 ONIYANMA COFFEE(札幌)

シーンに応じ、まるで七変化のように寄り添ってくれるコーヒーの存在の大きさを、コーヒーが飲めなかった6年前に想像することはできなかった。


他人と飲むコーヒーは、その時間に彩りを添える存在になり、前日疲れた体を切り替えさせて新たな1日をスタートさせたいときに飲むコーヒーは、体の隅々に染み渡り、気持ちが落ち着く感覚にさせてくれる精神安定剤になってくれる。

今回の主人公・札幌の大通公園近くにある「ONIYANMA COFFEE」のオニヤンマブレンド。ホームグランドを離れ、北海道にたどり着き、いつもとは異なる環境に気を張り巡らしていたのか、前日は想像の倍以上疲れていた。その翌朝、友人から薦められていたこのコーヒーに出会うことが出来た。まさか忘れられない食体験になるとは思わなかった。


深煎りながら、苦い…!ということのない、心地良く感じる苦味。鼻を抜けるコーヒーの香り。そして店内に響く豆の砕音。五感を刺激する1杯のコーヒーの味に全集中している瞬間こそ、ご褒美タイムだ。昨日は(今日は)がんばった、これからもう少しがんばろうと自分に言い聞かせながら。



コーヒーを自分で淹れるようになり、「美味しかった1杯を、今度は自分で淹れたい」誰かと分かち合いたいという気持ちが生まれると、お土産に(そのお店で飲んだ)珈琲豆を買い始めた。オニヤンマブレンド、誰かの心を満たす一杯になればいいな。そんな願いを持ちつつ、帰宅したら早速淹れてみよう。冷凍しておいたドーナツと共に。


今日もごちそうさまでした。

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