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フードエッセイ「アイスクリームが溶けぬ前に」 #24 ふ定食屋(恵比寿)


のれん、置き物、提灯(ちょうちん)、行燈(あんどん)、竹灯り、ネオンサイン、看板。お店の入り口にオリジナリティが溢れていると、訪れようと思っていない場所でもふと立ち止まったり、写真を撮りたくなってしまうのはなぜだろう。


恵比寿にある「ふ定食屋」も、そのひとつ。

赤富士をイメージしたであろう暖簾に、信楽焼のたぬき。恵比寿というと、敷居の高そうなお店が多いイメージや、エビスビールに重ね合わせて居酒屋を連想していたが、「ふ定食堂」は少しお店の入り口が空いていて、店内を覗ける余白があって、このお店とは初めましてだけど仲良くなれそうな場所だった。

たぬきの信楽焼が「いらっしゃい」と言っているような入口。


お店のシステムを理解するのに時間を要したが、入店して席に荷物を置いたら、一度外に出てお店の入り口に再び回るというのが正解なようで。それから、メイン料理(この日は生姜焼き、唐揚げ、鱧(ハモ)フライ、アジフライ、焼き鮭、魚の煮付け、刺身盛合せ)を1つ選び、豊富すぎる小鉢から食べたいものをチョイスしていくスタイル。

メインの料理の札を選んでいく

和食のオールスターの勢揃い

肉じゃが、鶏のトマト煮というメインにも匹敵するメニューまで

刺身になめろう、もずく、明太子、冷奴、生卵。
あったらいいなが揃ってるショーケース

どれも手作りで、お金というストッパーさえなければ全制覇したいと思いながら、誰かと一緒に行ったらなぜこの小鉢を選んだのかを会話のネタにしたり、お裾分けあいっこ出来るなぁと考えていた。


そして最後に、ご飯を白米か雑穀米、汁物をノーマル味噌汁かアサリの味噌汁のどちらかからチョイスする。昔給食で1年に1回の楽しみだった「リクエスト給食」のように、自分で献立を作り上げるシステムに面白さ・ワクワクでいっぱいになる。

躯体(鉄筋コンクリート造)をそのまま活かし、
墨さえ残る味のある壁。そこに並ぶメニュー表。席に座りながら頼める。
墨に○印されているのも、建築に携わる者として燃える光景。
「ふ定食屋」って平日は7時半から空いているのか。近くに住んでいたら毎朝通いたくなる。

定食屋でのオーダーの傾向に、自分が作れるか、他でも食べれるかというチェックポイントを頭の中に思い浮かべていて、そのチェックに入らなかったものの中で今食べたいものを選んでいる気がする。食を決めるにも、変わり者気質が出てしまってるぞ。

外が蒸し暑かったこともあり、「バテるな自分…!」ということで、豚の生姜焼きをメインに、和で固めるラインナップ。雑穀米があればオーダーするこだわりもチラ見せして、オリジナルの生姜焼き定食がセッティング完了。

絵面が強すぎ。食べる前から美味しいやつ。

少し厚めのお肉と生姜焼きのタレが絡み合い、ご飯と千切りキャベツが進む。そこにひじきの煮物、ポテサラという安定感抜群のおかずが脇をかため、癒しの大学芋が堂々といてくれる。ご飯と味噌汁合わせた6皿がプレートいっぱいに広がり、ひとつの絶景を作り出していた。


ショーユ、ソースが並ぶポールダンス会場。
奥にある花瓶と花が、食を彩る。

暮らしている場所が離れている友人とのランチが、こんなにもドラマチックな食体験になるなんて。「ふ定食屋」に出会わせてくれた信楽焼のたぬきに感謝の気持ちを込めて、今日も手を合わせて言葉にする。

ごちそうさまでした。

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