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ひとはけの白い雲

灼熱の太陽はどこを照らしに行ったのか。

一息ついたような、さっとひとはけの白い雲。

女は旅に出ようとしている。

一生懸命働いた、自分へのご褒美としての、豪華な船旅。

そうだわ、あの洋服屋さん、私が欲しかった服を探してくれたかしら。

お嬢さん、これで如何でしょう?

違うわ! 

私が求めていたのはもっと光り輝くものよ!

もういいわ!

 これだけ世間に愛を尽くしたのに、私の欲しいものなんて手に入らないのよ!

女はデッキに手をかける。

船はまもなく離岸する。

ちょっと待って! 

 君が求めていたものはなかった!

だから君だけに特注で作ったものだったんだよ!

思ったように出来なかった!

つまらないものさ!

でも精一杯作ったんだ!

船主が言う…

どうしますか? 

のせてあげたら如何ですか?

でも、切符がないの。

一等席が一枚きり…

お客さん、今なら二等席二枚と交換致しますが?

それならご好意に甘えてもいいかしら?


人が人と出会う
心と心があたたまる
心に元気の灯が灯る

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2016年9月9日 五島秀一

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