高円寺と、ロック。
高円寺に、おれは住む
ロックが好きでした。とにかく、とことん。
中学の頃から『ロッキンオン』やら『クロスビート』やら音楽雑誌を読み漁り、将来は「音楽雑誌の編集者になろう」と心に決めていました。
上京して住む町は、もちろん「高円寺」。だって、あのバンドのボーカルだって、あの雑誌の編集長だって、みんな高円寺に住んでいます。当然、自分も高円寺に住む以外の選択肢なんて考えられませんでした。
でも、住んだのは
それから数年後、地元の編プロで働き、心ばかりのスキルを身につけて、いよいよ上京。住んだ町は……「松戸」(千葉県)でした。
お金がなかったのです。高円寺に住みたかったですが、とにかくお金がなかったのです。松戸にいた友人の家に転がり込むのがやっとだったのです。
それから、ようやく念願の高円寺に住めたのは上京してから1~2年が経った頃でした。
高円寺での唯一の楽しみ
憧れの地・高円寺での生活はというと、もうそれは、それは慎ましいものでした。
飲み屋をはしごして朝まで飲み明かして……みたいなロッカーな日々を過ごしたかったんですが、クソ下っ端の自分にそんな自由時間は与えてもらえません。バカ騒ぎする夜なんてごくたまに。ほどんどは夜中帰ってきてソッコー寝て、朝から出かけて……をループする毎日。
そんな暮らしの中、唯一「あぁ、高円寺いいなぁ」と思うのは散歩をしているときでした。
ほかのどの町のそれとも違う、アングラ感たっぷりの商店街。レアな雑誌がもの恐ろしく雑に扱われている古本屋。誰が着るの?って尋ねたくなるアバンギャルドな服がそろった古着屋。爆音でパンクロックを流すパチンコ屋。
――そんな街の雰囲気は、中学の頃に憧れていた"ロックな街・高円寺"そのものでした。
もう高円寺を離れて、10年ぐらい経ちましたが、今もたまに散歩にいきます。
今も高円寺は、ロックしてます。
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