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英「エコノミスト」誌が厳選「2022年に実用化が期待される22の新たなテクノロジー」【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.204】

新型コロナウイルス・ワクチンが驚異的な速さで開発され普及したことは、科学技術には世界を変える力があることを再認識させるものだった。テクノロジー業界で言われているように、一夜にして成功を収めるには、何年もかかる。

では、次はどんな新技術が飛び出してくるのだろう? 

太陽ジオエンジニアリング

世界が暑くなりすぎているのなら、日陰を作ってあげたらどうだろう? 

火山が高層大気に放出する塵や灰は、冷却効果があることで知られている。たとえば、1991年のピナツボ山の噴火は、4年間で0.5℃も地球の気温を下げた。「太陽放射管理」の呼び名でも知られるジオエンジニアリングは、これと同じことを人工的にやろうとしている。

このアイデアを試す実験は、政治家や活動家から猛反対されている。しかし、ハーバード大学の研究グループが、遅れに遅れた「SCoPEx」と呼ばれる実験を2022年に実施したいと望んでいる。この実験は成層圏に気球を打ち上げ、2キロの物質を放出し、それがどのように太陽エネルギーを散逸させ、反応し、散乱させるかを測定することを目的としている。

ヒートポンプ

冬に建物を暖かく保つことは、世界のエネルギー消費量の約4分の1を占めている。暖房の大半は、石炭やガス、石油を燃焼することでまかなわれている。

ヒートポンプは外側に熱を放出して冷やす代わりに、外側から熱を取り込んで暖める。既に存在する熱を移動させるだけなので、非常に効率がよく、1キロワットの電力を消費するごとに3キロワットの熱を供給でき、電気ラジエーターよりもランニングコストが安くあがる。また、ヒートポンプを逆稼働させると、暖房ではなく冷房になる。

水素燃料で飛ぶ航空機

道路交通の電化は進んでいるが、航空機の電化となると別問題だ。バッテリーでは、小型飛行機が短距離を飛行する程度の電力しか供給できない。しかし、水しか排出しない水素燃料電池を使えば、長距離フライトも夢ではないのでは? 

2022年に水素燃料電池を使用した試験飛行を予定している旅客機として、オランダのデルフト工科大学で製作中の2人乗りの航空機がある。カリフォルニア州に本拠を置くゼロアビアは、座席数20の航空機の試験飛行を完了予定で、今年中に同社の水素推進システムの認証取得を目指している。

同じくカリフォルニア州のユニバーサル・ハイドロジェンは、2022年9月に座席数40の航空機の試験飛行にのぞみたいとしている。

垂直農法

新たなタイプの農業が成長している。垂直農法は、密閉され管理された環境の中で、積み重ねたトレイの上で農作物を栽培する。電力コストの負担はあるものの、効率性の高いLEDライトを使うことで省エネを実現している。

消費者の近くに施設を作れるため、輸送コストや排気ガスを削減できる。水の使用量を最小限に抑えられ、防虫できるため、農薬も必要ない。

イギリスでは、ジョーンズ・フード・カンパニーが1万3750平方メートルという世界最大規模の垂直農場を2022年に開設予定だ。アメリカのエアロファームズは、バージニア州デインビルに同社最大の垂直農場をオープンする。

そのほかの農場も規模拡大に乗り出している。ノルディック・ハーベストはコペンハーゲン郊外の施設を拡張し、ストックホルムに新施設を建設する予定だ。カリフォルニア州のプレンティは、ロサンゼルス近郊に新しい屋内農場をオープンする。

垂直農法では主に高価な葉野菜やハーブを栽培しているが、トマト、ピーマン、ベリー類の栽培に乗り出した施設もある。目下の課題は、経済効率も高めることだ。

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