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タリバンの「違法」な収益源は「合法的」な製薬会社にも影響がおよぶかもしれない【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.150】

タリバンがアフガニスタンを支配することで、アヘンケシの栽培はさらに盛んになる。その結果として麻薬取引市場、特にメキシコの巨大な麻薬カルテルに大きな影響を与えることになるだろう。

世界のアヘンケシの約95%はアフガニスタン、メキシコ、ミャンマーで栽培されており、ヘロインなどの違法薬物が水面下で生産取引されるという。

実際、米国務省が2021年初めに発表した報告においても、アフガニスタンのアヘンケシ生産地のほとんどがタリバンの影響下にあると伝えられている。

米紙「ワシントン・ポスト」は、アフガニスタン国内の“アヘン経済”の規模は年間12億〜21億ドル(約1300〜2300億円)ほどと推定する、UNODC(国連薬物犯罪事務所)の報告を掲載。さらに、2015年ごろから国内に自生するハーブを利用して、メタンフェタミン系の違法薬物「クリスタル・メス」の生産も始めていると報じる。

一方で、タリバンが政権を握る前のアフガニスタンに対してアメリカが送った支援金は年間5億ドル(約550億円)ほど。タリバンにとっては、ケシの栽培のほうがはるかに“儲かるビジネス”なのだ。

ライバル同士でも結託の利点はある

アフガニスタンとメキシコの麻薬カルテルは地理的にも文化的にも離れているものの、その経済を麻薬取引に依存し、政治的な権力や領土を拡大するために過激な暴力を用いる点では共通する。

現在、メキシコで勢力をもっとも拡大している密売組織はシナロア・カルテルだ。同組織もケシの栽培によって莫大な利益を生んでいる。

鎮痛剤や麻酔薬の市場でも決定力を持つ可能性

タリバンが影響力を強める可能性があるのは、違法薬物の市場だけではない。「カンバセーション」が伝えるところでは、合法的な製薬会社は認可された生産者からアヘンケシを購入するが、近年ではアフガニスタンから直接材料の仕入れをしているインド企業から調達するケースが増えているという。

つまり、タリバンは世界中で使用される鎮痛剤や麻酔薬などの医薬品市場においても多大な決定権を持つようになるかもしれないのだ。

タリバンは表向きには、麻薬の原料となる植物の栽培や消費に反対している。タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は「新政府はアフガニスタンを麻薬国家にはしない」と約束し、アヘンケシに替わる農作物を困窮する国内の農家に提供すべく、国際的な支援を求めた。

しかし、彼らの重要な資金源である麻薬の原料生産をどのように禁止するのか、具体的な施策は説明されぬままだ。

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