グッドパッチで学んだ、PMFを目指す事業家に必要な10の観点
この記事はグッドパッチのアドベントカレンダー2021 21日目の内容です。
グッドパッチでは、今期からデザイナーを事業家に育成する社内プログラム「アントレパッチ」を始めました。
本記事では、アントレパッチを通して学んだProduct Market Fitを目指す事業家に必要な10の観点について記載していきます。
起業・新規事業立案にチャレンジしている方や、将来事業を立ち上げたい学生の方の参考になればと思います。
事業がPMFしている状態とは?
PMFの定義は個人・企業により様々ですが、今回は「手探りだった事業が顧客のニーズを捉えグロースできる確信に変わった瞬間」と捉えます。
画像引用:PMF に到るまでのステージ別指針集
では、PMFに必要な10の観点とは何なのか?
下記のような形で整理してみました。
マインドセット
1.事業作りは総合格闘技
2.ビジネス事例のインプットを元に、最適なアクションを選択する
3.長期的な目線で事業をとらえる
4.戦うマーケットのルールを理解し、前提を疑う
立ち上げからの事業の作り方
5.仲間集め=事業づくり
6.ファイナンス・資本政策にこだわる
7.目の前の顧客課題に寄り添い、大きなマーケットを発見する
8.経営陣がユーザー価値を追求する
9.グロースに向け組織ビジョンを設計する
10.勝ち抜くためにマーケティング・セールスは勝負どころを抑える
1.事業づくりは総合格闘技
アントレパッチでは、さまざまな企業のPMFを紐解きました。そこから分かったことは、「事業づくりとは総合格闘技である」というマインドで取り掛かる必要があるということです。
以下はアントレパッチの合宿にて、事業責任者の佐宗が話していた内容です。
また、アメリカのアントレプレナーシップ教育の名門 バブソン大では、アントレプレナーシップを次のように定義しています。
デザイナーと呼ばれる人材が事業家として事を成すには、自分がやってきた領域に固執しすぎず「事業成長のために何に注力すべきか?」という問いに向き合う必要があると考えさせられました。
結果として、事業家はプロダクトやデザイン、エンジニアリングの観点はもちろんのこと、組織や採用、セールス、マーケティング、PRなど、あらゆる分野の総合格闘技に挑むことになるのです。
2.ビジネス事例のインプットを元に、最適なアクションを選択する
私は前職の新規事業コンテストでは、見様見真似でリーンキャンバスを書いていました。
グッドパッチに入社してからは、闇雲にアウトプットをする前に、グロースに成功した事例の引き出しを増やし、自分やパートナーが同様の状況に立たされた際に最適なアクションを取ることが大事だと気づきました。
代表の土屋さんも日々大量のインプットをしており、大きく影響を受けました。自分でインプットが得やすい環境を構築することをオススメします。
3.長期的な目線で事業をとらえる
創業期は売上拡大・仲間集めなど苦しいことも多く、心が折れてしまう起業家も少なくありません。
アントレパッチのケーススタディでは、長期的な目線で事業をとらえる重要性をココナラ・南さんから学びました。
ココナラがサービス上で、500円のサービス価格設定を変更したのは創業から約3年後の2016年。
引用:ココナラ会社説明資料より
流通額の推移を見ていくと初期はキャッシュ状況が厳しかったと想像できます。「売上獲得のためにもっと値上げすればいいのでは?」という内部での議論もあったと想像しますが、約3年間、価格据え置き・自分で出品者を集める・レビューを貯め続けるというアクションは、事業家が持つべき「長期的な目線で事業をとらえる」視点だと感じました。
4.戦うマーケットのルールを理解し、前提を疑う
大手企業と比較しアセットの劣るスタートアップが勝ち残るためには、ユニークなビジネスモデルを構築したり、市場の論理の上で戦わないことが大事になります。
例えばGoodpatchも前職でWEB制作の業界で働いていた土屋さんが業界の当たり前を覆す戦い方で事業スケールをし上場を果たしたデザイン会社です。
ビズリーチもリクルートなど業界大手ができないユニークな解決方法で勝負をしており、業界の当たり前を疑い、他社が模倣できない取り組みは何か?バイアスを打ち破ることが大きなグロースのきっかけになっています。
5.仲間集め=事業づくり
事業フェーズごとに、事業にとって必要な人材をどのくらい集められるかがグロースに一番大きくレバレッジのかかるポイントです。
現在は約4000億の時価総額を誇るビジョナルも創業期は人探しに困り、
システムのリリースが全くできずに苦労した南さんが、エンジニアの竹内さんに頼み込んでシステムを刷新し、ビズリーチをリリースしました。
詳しいエピソードは「突き抜けるまで問い続けろ」を読んでみてください。
私は想いを持った言葉で仲間を集め、事業を作ることを学びました。
6.ファイナンス・資本政策にこだわる
資本政策の間違いは取り返しがつかないのですが、知見が得にくいことがあり後回しにしがちな印象です。経営権に関連するなど資本政策の誤りは取り返しがつかないため、知見は必須です。「起業のファイナンス」は必読書として有名であり、一度目を通して損はありませんので読んでみてください。
7.目の前の顧客課題に寄り添い、大きなマーケットを発見する
上場するようなグロースする企業の特徴は目の前の顧客の課題解決から、大きなマーケットに向かえるかどうかに分岐があります。
例えばユニコーンになったSmart HRも、想定顧客群ではない顧客からのニーズ発見により大きなグロースを実現できた事例です。
宮田さんはサービス開発まで約2年、100名以上へのヒアリングを行い、Smart HRを創業しました。
初期は50名以下の顧客をターゲットにしていましたが、リリースするとより大きな顧客からのニーズを発見し、事業拡大を成し遂げました。
目の前の顧客課題解決から、より大きな市場を意識した課題解決ができるかがスケールにおいて着目すべき観点だと言えます。
8.経営陣がユーザー価値を追求する
先述のSmartHRは初期から経営陣がユーザー価値にこだわり、プロダクト開発だけでなく他社に先駆けてCS体制を築いてきました。
この企業スタンスこそがグロースする企業の特徴と言えます。
別の観点ではMakuakeはクラウドファンディングというカテゴリの中で、ユーザーに対して提供できる価値は何か?というお題に、0次流通市場という「価値の切り口」をデザインすることでグロースした事例です。価値探索フェーズの中での「切り口」の事例としても参考に出来そうです。
9.グロースに向け組織ビジョンを設計する
組織が大きくなり30名以上になってくると、意思決定のスピード・組織のスケーラビリティを保つために、ビジョン策定・浸透施策への経営陣のコミットメントが必要になってきます。
特に現在の経営においては、人をモチベートする上で、心を動かす「Why」が必要不可欠になっており、重要性が高まっていることを感じます。
例えばメルカリの3つのビジョンを小泉さんがジョインした10名規模のタイミングで経営陣で策定していますが、これは小泉さんの前職mixi時代の組織拡大時の苦い経験からきていました。
またビジョンを作って終わりではなく、経営陣は浸透施策まで徹底的にこだわりました。例えば会話の内容でも、それって「Go Boldだよね」などと会話したそうです。これを10名ほど時期に実行できているのがメルカリの経営陣の凄さだと感じました。
10.勝ち抜くためにマーケティング・セールスは勝負どころを抑える
競争環境にあるマーケットにはいくつか勝負どころが存在します。例えば、メルカリも勝負どころの踏み込みでCtoCマーケットのシェアを獲得した企業です。
シリアルアントレプレナーの山田さんは大規模な資金調達を行い、初期からCM広告に大規模な投資を行い圧倒的にユーザー数を伸ばしていきました。
引用:メルカリが“日本で勝ち切る”ための戦略は、テレビCM・資金調達・カスタマーサポート拠点開設の3点セット
振り返ると、この取り組みがメルカリと他社サービスの明暗を分けることになり、同時期にユーザーに寄り添ったプロダクト開発を行なっていた「フリル」なども苦戦することになりました。
山田さんや小泉さんなど事業経験が豊富なメンバーが揃っているからこそ、初期の勝負所を見分けられたのだと思います。
また勝負どころで事業をスケールするためには、受け皿として業務の土台づくりを行うことも大事な観点で、経営陣が率先して業務を型化していくことが重要になります。実際に、Smart HRのCOO倉橋さんはこのような取り組みを手を動かし率先して組織の基盤を整えていました。
引用:ALL STAR SAAS CONFERENCE TOKYO 2021の内容
以上、いかがだったでしょうか。
私は以上のような観点を大切にして事業づくりに取り組んでいきたいと考えています。
最後に
Goodpatchは様々な得意領域があるデザイナー達とリスペクトし合いながら、サービス・事業づくりできる稀有な環境です。
Goodpatchではユーザーと事業、企業価値を網羅的に考えながらデザインに取り組みたい方も募集しています。
私自身、事業会社から転職し、上場企業の創業者から直接レクチャーを受けられる機会やクライアントワークで社運を賭けた0-1の事業機会などは、他の会社では得難い環境だと感じてます。
アントレパッチは今後も2期、3期と続いていくので、受講したい方はご応募お待ちしています!