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2022年上半期映画ベスト&ワースト

みなさんこんばんは。
今日は上半期最後の日ということでベスト10とワースト5を書いていきたいと思います。
ちなみに4月までのベスト&ワーストの記事はこちら↓

鑑賞した新作一覧

太字は劇場鑑賞、()内は特集上映または配信媒体

スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム
ユンヒへ
ハウス・オブ・グッチ
コーダ あいのうた
マーシー・ブラック(未体験ゾーンの映画たち)
マザーズ(未体験ゾーンの映画たち)
フレンチ・ディスパッチ
スターフィッシュ(未体験ゾーンの映画たち)
前科者
ウエスト・サイド・ストーリー
ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス(未体験ゾーンの映画たち)
ドリームプラン
シラノ
ナイル殺人事件
愛なのに
ザ・バットマン
ザ・ユナイテッド・ステイツ vs ビリー・ホリデイ

ウィークエンド・アウェイ(Netflix)
ナイトメア・アリー
ベルファスト

涙の塩(JAIHO)
アーフェリム!(JAIHO)
TITANE/チタン
モービウス
チェチェンへようこそ -ゲイの粛清-
アネット
ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密

TOMMASO/トマソ(JAIHO)
TUBE 死の脱出(未体験ゾーンの映画たち)
ニトラム/NITRAM
ハッチング -孵化-

愛のように感じた(JAIHO)
I Was at Home, But…(MUBI)
アンラッキーセックスまたはイカれたポルノ
ふたつの部屋、ふたりの暮らし
カモン カモン

ホワイト・ホット アバクロンビー&フィッチの盛衰(Netflix)
ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス
恵まれた子供たち(Netflix)
荘園の貴族たち(JAIHO)
死刑にいたる病
BEGINNING/ビギニング(JAIHO)
インフル病みのペトロフ家
スラック・ベイ(JAIHO)
流浪の月
笑いの王(イタリア映画祭)
小さなからだ(イタリア映画祭)
アメリカ・ラティーナ(イタリア映画祭)
内なる檻(イタリア映画祭)
言葉と行動(EUフィルムデーズ)
MONSOON/モンスーン
ロスト・ボディ 消失(シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション)
老人(EUフィルムデーズ)
ワン・セカンド 永遠の24フレーム
アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド
落とし穴(EUフィルムデーズ)
ベイビー・ブローカー
ニュー・オーダー

以上58作品を対象とします。

ベスト10

①TITANE/チタン
②BEGINNING/ビギニング
③愛なのに
④ハッチング -孵化-
⑤落とし穴
⑥ふたつの部屋、ふたりの暮らし
⑦ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス
⑧スターフィッシュ
⑨ベイビー・ブローカー
⑩ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス
次点 : ハウス・オブ・グッチ、ニュー・オーダー、ナイトメア・アリー

10位 『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』

 基本的には僕、MCUをベストに入れるということはあまりないんですが、これは例外的にすごく好きだったので入れました。
 もちろんMCUの一作品としても面白いのですが、監督のサム・ライミの作風が炸裂していて非常に素晴らしかったですね。グロ、人体破壊、外連味たっぷりの画面構成と本当に観ていて楽しかったです。
 またスカーレットウィッチを演じたエリザベス・オルセンの独壇場でもあり、いい役者さんだなあと改めて認識させられました。

9位 『ベイビー・ブローカー』

 是枝監督待望の新作、カンヌで二冠ということで期待していましたが、その期待通りの傑作だと思います。
 確かに否定派の言っていることも分かるのですが、やはり是枝監督のそれはそれは端正で誠実な演出が光り感動的な人間ドラマとなっています。
 本作は『万引き家族』と裏表のような作品であり、ペ・ドゥナとIUが対峙するシーンは特にそれを彷彿とさせました。

8位 『スターフィッシュ』

 世界の終わりに何をするか、というままあるプロットではあるのですが、この監督のセンスがとにかく魅力的。
 SF、ホラー、人間ドラマをミックスし、様々な演出方法を駆使した映像表現は一見の価値ありです。世界の終わりと一人の女性の内面を重ね合わせる手腕は見事でした。
 確かにそれぞれの要素が物語としてちゃんと機能しているかというと微妙なところもありますが、その要素一つ一つが飛び抜けていいのでそこはあまり気にならなかったです。

7位 『ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス』

 本作はホラー映画ですが、なんと第94回アカデミー賞のハンガリー代表作品に選ばれました。三大ファンタ系映画祭と言われるシッチェス、ファンタスポルト、ブリュッセルの全てに出品され、ファンタスポルトでは監督賞と脚本賞を受賞しました。
 まず設定が面白く、「遺体写真家」というのが不気味でいいですよね。遺体をまるで生きているかのように写真に収めるという行為自体のシュールさと不気味さが面白いです。
 そして下手したら笑ってしまうようなホラー表現が非常に素晴らしいと思いました。欧米にありがちなびっくり系ではなく、あくまで静謐に進んでいくのだけど、どんどん恐ろしいことになっていくというのが新鮮でした。
 そしてなにより映像がほんっとうに美しい。まるで絵画が動いているかのような世界観の虜になりました。

6位 『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』

 こちらは第93回アカデミー賞のフランス代表作品です。高齢女性同士の恋愛をスリリングに、そして切実に描き出した傑作です。
 この作品を思い出すだけで胸が張り裂けそうになります。確かに監督は本作が長編デビュー作ということで演出の拙さは気になるところではありました。
 しかしこの二人の周りには理解されない純粋な愛に陶酔せずにはいられません。結末も決して穏やかなものではありませんが、二人の幸せそうな表情に少しだけ救われました。

5位 『落とし穴』

 これは一般公開は今のところ決まっておらず、EUフィルムデーズで上映されました。ラトビアの新人女性監督による作品で、期待以上に素晴らしかったので入れてしまいました。
 軸としてある少年が疎まれつつも成長していくという物語があり、そこにスリラー的要素を加えた演出が巧みでした。
 この少年が素晴らしいのはもちろんですが、「水兵」と呼ばれる登場人物に胸を打たれました。マイノリティが差別され不平な扱いを受ける保守的なコミュニティの恐ろしさがつまった人間ドラマです。
 最後にできあがったステンドグラスは美しいだけでなく、「水兵」の純粋でひたむきな愛を痛ましいほどに感じました。

4位 『ハッチング -孵化-』

 フィンランドのホラー映画で、これも新人女性監督による作品です。
 新人ということでやはり拙い部分はありますが、強烈なビジュアル・設定に負けない推進力を持ったストーリーテリングは見事でした。
 『ヘレディタリー』のような家族ホラーでもあり、『RAW 少女のめざめ』のような女性の身体に起こる現象を象徴的に描いた作品とも言える、実に多面的な語り口を持った作品です。
 誕生してしまう怪物のビジュアルも恐ろしいですが、それ以上に恐ろしいのはお母さんですね。あの演技はすごい。こんな人がいたんだという発見でもありました。

3位 『愛なのに』

 今回唯一の日本映画です。監督の城定秀夫さんは昨年の大傑作『アルプススタンドのはしの方』が記憶に新しいベテラン監督で、『愛がなんだ』などの恋愛映画の旗手今泉力哉さんが脚本を担当しました。このプロジェクトで逆の監督今泉力哉、脚本城定秀夫でつくられた『猫は逃げた』は残念ながら劇場公開を逃してしまいましたので配信で観たいと思っています。
 監督と脚本、なるほどこんな組み合わせがあったかと唸らされる実に見事な作品でした。双方に共通する「色々な愛のかたちがあってもいいじゃない」というフラットで優しいスタンスが心地よい一作です。
 主演の瀬戸康史さんの佇まいが絶品、一方的に告白してくる女子高生、憧れの存在である女性など本当に色んな人がいて、それを全て肯定し、しかもときにユーモラスに、ときに緊迫感を持って演出するこの職人技にしびれました。
 たぶん今年の日本映画ベストはこれで決まりです。

2位 『BEGINNING/ビギニング』

 これは劇場公開はされておらず、JAIHOで配信された作品です。第93回アカデミー賞ジョージア代表作品です。
 こんなに静かなのにここまでガツンとくらうとは思ってもいませんでした。衝撃的でした。こんな映画作家がいたなんて。
 女性のレイプシーンがあるので観る際は注意してください。
 美しいフィックスの長回しが多用され、それがとても美しくも残酷で惹きつけられるんです。特に川でのシーンですね、本当に辛いですが周りの風景は本当に美しく素晴らしいんです。
 ある女性の苦難を描いた作品ではあるんですが、聖書や民話に題材をとっているのであろうテーマが多層的で興味深いですね。ラストシーンは聖書のロトの妻が塩の柱になったエピソードからとられているのかなとか思ったりしました。
 静かで美しく、しかし残酷で観るに堪えない強烈な作品でした。他のところでも公開、配信されることを願っています。

1位 『TITANE/チタン』

 やはり1位はこれですね。ジュリア・デュクルノー、ついにここまできたかと。カンヌでの批評家の反応は決して絶賛という訳ではありませんでした。しかしやはり本作を観てみると作家性が強烈で、これはパルムドールあげたくなるわという納得するしかない感じでした。
 過去作では女性の身体の変化を描いていたのですが、本作ではそこから更に進んで変化した女性から誕生した新人類という領域まで踏み込みました。これは下手すると説得力のないものになりかねないのですが、やはりそこはデュクルノー、かなりの力業でそれをしっかり成り立たせています。
 『2001年宇宙の旅』と肩を並べるといっても過言ではない、崇高な領域にまで達している傑作だと思います。

ワースト5

①『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
②『モービウス』
③『シラノ』
④『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs ビリー・ホリデイ』
⑤『TUBE 死の脱出』

 これに関しては冒頭にあげた記事と変わっていないのでそちらを読んでいただければと思います。
 それ以降はそんなにヒドい映画に当たらなかったんですよね。
 あえていえば『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』はチャン・イーモウにしては説明過多でくどく、著しくダイナミズムが失われた残念な作品でした。またイタリア映画祭のオンライン上映で観た『笑いの王』は退屈な伝記映画で、美術や衣装は素晴らしいけどそれ以外に見所がない映画でした。


ということで今回はここまでです。
明日は『リコリス・ピザ』に『わたしは最悪。』などが控えているのでかなり変わるかも?
9月あたりにまた暫定ベストを出す予定なのでお楽しみに!

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