見出し画像

コロナ禍で国境を3回越える夜行バスーモンテネグロ、アルバニア、コソボ、北マケドニア

◇コトル(モンテネグロ)~スコピエ(北マケドニア)の夜行バス◇

2020年2月8日。まだヨーロッパにはコロナが流行りだす前で、中国や日本の方が危険視されていた。我々はモンテネグロの世界遺産の町・Kotorからアルバニアコソボを経由して北マケドニアの首都・Skopjeに11時間以上をかけて走る夜行バスの乗客になっていた。

そこらへんの人しか乗っていない夜行バスに、遠慮なく乗り込む、コロナの広まりつつある日本から来た中国人日本人。バスの運転手は冗談ではなく「コロナじゃないよな?」と聞いてくる。コロナを水際で防ごうと国境はピリピリとしていて...。

◇コトル(モンテネグロ)◇

アドリア海に面し、入り組んだ入江にあるKotorはその地形を活かして港湾都市として栄え、「コトルの文化歴史地域と自然」として世界遺産に登録されている。

画像1

画像2

コトル湾沿いに走るバスからは、湾にすぐに迫る山々の麓に張り付くような家々が。Herceg Novi側から来るバスは湾に沿ってΩの字を描くように進むしかない。こんな景色をずっと眺める。

画像3

Kotorの町もすぐに山が迫る。小さな可愛い町。

◇モンテネグロ◇

街の良さも伝えたいが本題に入ろう。

画像4

Get By Busのアプリ上での時刻表はこの通り。Herceg Novi始発でKotorは18時発。どこで食料を買えるか、夕飯を食べる時間はあるのか、何もわからないから近くのスーパーで水と若干の食糧を買い込み、小さなバスターミナル(Autobuska stanica Kotor)へ。

画像5

18時10分頃、バスターミナルにバスが入り込んできて、バスターミナルの事務所のおっさんが「スコーピエ!スコーピエ!」と叫ぶ。

4列シートの大きなバスに10人弱しか乗客はいない。Podgoricaでどの程度乗ってくるのかわからないが、比較的快適に夜を過ごせそうだ。自由席のようだから前後に客のいない席に落ち着く。11時間強、3つの国境、4つの国を行くバスは淡々と出発した。

18時30分頃、時刻表上では経由してきたはずのTivatに到着。行先さえあってればいいけれどなんで?地図を見返すと明らかにTivatはKotorの後に通るはずだ。Get By Busがいい加減らしい。2月の日は落ちるのが早く、街灯もろくにないから月明かりが頼りになる。

5時過ぎに着くから早めに寝ておきたいと思い、寝始めるも、大きな道に出てから対向車の灯りが気になる。立って前のカーテンを閉めると運転手に怒られた。立ったことがダメなのかと思ったが、バスを停めてもっと怒りながらカーテンを乱暴に開けられた。なぜカーテンが付いているのか。

外国人だし、コロナのあるアジアから来ているのもあって、運転手とはできれば険悪になりたくなかったが、既にダメそうだ。

20時20分頃Podgorica。5~6人しか乗ってこない。全体で20人弱。旅行者らしい人もちょっといるが、ちょっとそこらへんまで行くというくらいの軽装の人もおり、全くどういう使い方なのかわからない。帰省とかだろうか。

なぜかこのタイミングで我々二人に向かって運転手が「コロナじゃないよな?」と真顔で聞いてくる。なんとなく周りからの視線も痛いように感じる。

5分も停まらずに出発し、20分弱走ってガソリンスタンド(Dekar Petrol)に停まり、トイレ休憩。何故かパスポートを回収される。海外でパスポートを預けるタイミングはよくあるが、唯一の身分証を預けるのはやはり緊張する。

"Ten minutes rest!"と運転手が伝える。トイレが一つしか使えず、待たないと入れない。間に合うのだろうか?他の客が、外国人をかわいそうと思ったのか先を譲ってくれた。先ほど周りからの視線が痛いと思ったのは思い込みだったようだ。

10分と言われたから早めにバスに戻ったが、運転手が全然戻る雰囲気なく、ガソリンスタンドで休憩している。結局20分以上停まっていた。既に時刻表から遅れてるのにいいの?

出発前にパスポートを返却。人数確認のために使っているのだろうか。もっと簡易なカードとかを渡してのものにして欲しい。

◇モンテネグローアルバニア国境◇

暗闇の広い道をどんどん進んでいき、21時40分頃、モンテネグローアルバニア国境(Hani i Hotit)に至る。モンテネグロ出国側でパスポートを回収され、そのまま入国側へ。返却されずにバスが動くのは心臓に悪い...。

コロナを水際で防がんとするアルバニア入国側で、彼女の中国パスポートが問題になったらしく、運転手が英語を喋れる現地客を探し、いつ中国に行ったかなどを説明することに。英語を喋れる女の子が名乗り出てくれ、聞いた内容をパスポートコントロールに伝えるためにわざわざバスを降りていく。なんともありがたい。

しかし面倒くさいことになってきた。日本に住んでおり、中国に行ったのも半年以上前でコロナなど全くなかった時期。流石に大丈夫だろうと思っていたが、戻ってきた女の子によれば、国境に医者を呼ぶとのこと。Oh...。

国境でバスが停められたまま、20分もかけて医者が呼び出され、国境の建物で検査とのこと。彼女だけが降り、建物へ。流石に緊張感が増してくる。行けるだろうか?

10分か20分しただろうか。けろっとした顔で若干笑いながら戻ってきた彼女の曰く、国境の人の勘違いらしく、日本に住んでいることを言うと念のため体温だけ測られて終わり。医者もこんな夜中に20分もかけて呼び出されたのにただの勘違いだったために完全に拍子抜け。

1時間ほど国境を抜けるのにかかったが、やったのは体温を測るだけ。何はともあれ揃って抜けられてよかった。この先が思いやられるが。

◇アルバニア◇

23時手前、国境を出発。アルバニアの道はあまり良くなく、Google mapsでは幹線道路の表記なのに、農道に毛の生えたような道をゆっくりと進む。モンテネグロもクロアチア国境側は道が悪かったけれど、アルバニアはもっと貧乏な感じがする。

◇アルバニアーコソボ国境◇

画像6

国境にはコソボの国章の入った警察の車が停まっている。

3時間ほど走って、日付をまたいで2時手前頃にアルバニアーコソボ国境(Morinë - Vërmicë)に到着。パスポートコントロールがバスに乗り込んできて、パスポートを回収。少ししてからコソボ側のスタンプだけ押されて返却。電子管理してるとも思えないのだが、アルバニアがスタンプ押さないのは問題ないのだろうか?パスポートをスタンプ帳と思っている人間としては少々寂しい。

因みに今回は中国パスポートもスルー。中国がコソボを独立国として承認していないこともあって、コロナだけじゃないことでも何かあるんじゃないかと結構身構えていたのだが、全然大丈夫だった。

画像7

コソボ入国スタンプ
北マケドニアと違い、EU加盟国の出入国スタンプに寄せる気が全然ない。

画像8

コソボに入ってすぐの Qebaptore Te Bisaというバーガー屋?で休憩。ここでも運転手は"Ten minutes rest"と言っているけれど、運転手が真っ先にバーガーを頼んでいる。もう騙されない。

我々もバーガーを注文。カウンターにバンズに挟むらしい様々な具材が並んでいるのだが、頼み方が全くわからないし、何の肉なのか見当もつかない。気を遣った店員と客が手伝ってくれながら、普通のものを頼むことに成功。ありがたや。

そういえばこの国は何の通貨を使っているのか知らなかったが、値段は全てユーロ表記になっている。EUに加盟しているわけでもないのに勝手にユーロを使っているらしい。

画像9

コソボのバーガー。チェヴァプの一種なのか?大きさが伝わらないけれど、指を広げた手よりちょっと大きいくらいにでかい。これでなんと2ユーロ。物価が崩壊してる。運転手や他の乗客は1人でこれ1つをぺろりと食べているが、我々は2人で1つで十分。運転手とかはPodgoricaの休憩でも食ってたのに。

こんな時間に店にいる客はバスの乗客と運転手だけのよう。一緒のバスで移動して一緒の食べ物を食べる。なんとなく一体感を感じてしまうのは自分だけだろうか。

案の定40分くらいここで休憩してから出発。Get By Busの時刻表と比べるともう2時間も遅れている。数時間おきに国境があるせいで、中々眠れないから、朝5時に降ろされるよりも朝7時に降ろされる方が楽かもしれない。

◇コソボ◇

コソボの道路は意外や意外、高速道路然としていて揺れが少なく、アルバニアを走っていた時よりも満足にスピードを出せる。抜かしてくる車もかなりのスピードだ。快適な走りの揺れで眠る。

コソボというと、コソボ紛争やあんまり多くの国からの承認を受けていないことばかりしか知らないものだから勝手に貧乏なものだと思っていたが、少なくとも高速道路を整備するくらいの状況ではある。よく日本について海外の人が抱くイメージが何十年も前の様子であることを聞くが、自分自身が海外について抱いているイメージも同じようであることを思い知った。貧乏は貧乏だろうが、もう紛争をしているわけでもない。どれほどの国が承認していなかったとしても180万人ほどの住民の日々の生活は確実にそこにある。

◇コソボー北マケドニア国境◇

4時30分頃、コソボー北マケドニア国境(Elez Han)に到達。なぜか時刻表通りの時間に戻っている。Get By Busの時刻表が結構いい加減らしい。

コソボ出国側で運転手がパスポートを集め、パスポートコントロールに持って行く。バスに乗ったまま北マケドニア入国側へ移動し、コソボと北マケドニアのスタンプが押されたパスポートが返却される。

アルバニアのせいで国境がアレルギーになっていたが、北マケドニアもアジア人が入って来ることを特に気にしていなかった。スタンプを見れば日本在住で中国にここ最近は行ってないことがわかるからだろうか。

◇北マケドニア◇

4時50分頃に出発し、北側からスコピエに入っていく。ヴァルダル川を渡り、丹下健三設計のスコピエ駅の下のバスターミナルに5時20分頃に到着。氷点下5度の凍える寒さ。駅の待合室で夜を明かす人。治安は良くなさそうに見える。

なんであんなに遅れていたはずなのに、ほぼ時刻表通りに着くのだろう。アルバニアの入国にかかった1時間はどこで帳尻があったのか。

バスから降りた客は足早にバスターミナルを去り、各々の目的地に向かっていき、5分もしたらもう誰もいない。我々もさっさとホテルへ向かおう。

画像10

早朝のスコピエ駅

ちなみにルートは恐らくこんな感じ。

画像11


スコピエについては以下の記事に続く
野犬、前歯のないおじさん、ガラスの散乱した博物館 スコピエ紀行①
物乞いの少年、張りぼての公共施設、隠れた鉄道ホーム、Vacation??? スコピエ紀行②
ぼろぼろの郵便局、街を見渡す城壁、モスク、市場 スコピエ紀行③

全国の美味しいお酒に変換します。