平日の昼間にガラガラの映画館の中で映画を見て1人号泣した話
今まで見た中で一番泣いた映画は何か?という質問があったら多分
「ミックス。」と答えると思う。
卓球映画である。
主人公のガッキーと瑛太が卓球のダブルスを組んで試合する映画だ。
確か蒼井優も出ていた。
主人公の2人が互いに色々な事情を抱え、社会でうまくやれていない感じ。
そんな2人が卓球でダブルスを組むことになり試合に出る。
内容はこれくらいしか覚えていない。
なのにこの映画を見て、平日の昼間にガラガラの映画館で1人号泣したことは今でも鮮明に覚えている。
正直に言って、もっと感動して泣ける良い映画はたくさんあると思う。
少なくとも、この映画は普通の精神状態で見た時に号泣する映画ではないはずだから。
俺は浪人していた。
そう、本来なら予備校に行き、勉強しているはずの時間に俺は映画館で1人号泣していた。
俺は地元の予備校に通っていたが、精神状態が不安定になりいけなくなった。
親が仕事の都合で都内にも家を借りていたので、俺はその近くの予備校に行きたいと無理をいって住ませてもらい、横浜にある同じ予備校に通わせてもらうことになった。
環境が変われば絶対に大丈夫だと思っていた。
全て忘れられる。
絶対に志望大学に入ってやるぞと。
親にもここまでしてもらったのだから、絶対に猛勉強して合格するんだと。
しかし場所が変わっても俺の精神状態はあまり変わらなかった。
だんだん予備校に行く回数が減り、予備校がある最寄駅までは何とか行けるのに、予備校に入ることができない日が増えていった。
俺はその間、知らない横浜の街をぶらぶら歩いたり、駅やスーパーのトイレにこもって動けなくなってしまったりしていた。
そして授業が終わる頃に家に帰った。
その時は親に申し訳ないという気持ちと自己嫌悪が半端じゃなかった。
独り言が増えた。
ほとんど毎日、「死にたい」と何回も呟いていた。
そんな予備校に行けなかったある日、近くに映画館を見つけた。
その映画館は横浜のど真ん中にあるのに、とても古い感じの映画館だった。
俺はなぜか映画を見ようと思った。
気づけば次に上映する映画のチケットを買っていた。
当時見たい映画などなかったし、どんな映画が上映されているのかすら知らなかった。
その時にたまたま見たのがミックス。だった。
未だにどうしてあんなに泣いたのかわからない。
中盤くらいでもう既に涙が止まらなくなり、ラストはずっと号泣していた。
涙を流すとうちに溜まっていたものが、外に出ていく感じがした。
見終わった後は気分が晴れ、背中を押された気がした。
何度も言うが、この映画が特別優れていたとは思わない。
でも当時の自分にとって見るべき映画は、この映画でなければならなかった気がする。
他のどんなに素晴らしい映画よりも。
だからこの映画は俺にとって思い入れのある映画である。
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