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僕がCallaway Golfから学んだこと<"Make a Story"編・その1>

"Make a Story"
小さな会社が素晴らしい製品を開発し発表したとしても、どれだけの人がその良さに気がついてそれを手にして購入まで至るかは重要な問題です。
広告宣伝費、販売促進費は先行する大手企業に比べれば微々たるものです。競合他社の製品に混じって市場で生き延びていくには、消費者に強く訴える何かがなければなりません。イリー・キャロウェイ(以後イリー)は次のように明確な差別化を戦略として使ったのです。

"Make a Story"
語るべきもの、ストーリーを創る
優れた製品を成功させるには唯一、最初のステップが肝心である
成功するには、競合との競争の中で
いかに「興味深いストーリー」を持つかである

この戦略こそが正しいPR(Public Relations)活動であり、広告宣伝とは大きく異なる部分なのです。
PRをマーケティング部門に組み入れて料金が発生しないただの広告と位置付ける企業が多いのですが、真実というニュース素材の価値をどれだけ正確にメディアに伝えられ、それが記事となって紙面やTVで報道され、その結果としてそれが"Story"となるかどうかが大きなポイントとなるのです。

「厳しいビジネス環境・市場の中で競合他社に競い勝ち、市場でアドバンテージを取るには、顧客にとって興味深いストーリーを持ち、それを伝えることである。
それは製品そのものであっても、販売の方法であっても、製造の技術であっても製品のバックグランドとして輝くものであればあるほど、顧客は興味を示し、それを選択して購入するだろう。価格競争や広告宣伝活動から離れたところでビジネスを展開できるからだ。
それだけに、戦略的にも強力なストーリーを創り出す必要がある」とイリーは力説し、最初の製品には特に力を入れ”Story"を創りあげたのでした。

起業したばかりの小さな会社が成功の階段を登っていくにはその製品に対するメディアミックス効果を得られるのであれば大きな力になります。
メディアが注目することでそれが記事やニュースとなって新聞や雑誌、TVそして口コミ、現代であればSNS、Youtube、twitterなどにニュースとして取り上げられることですが、そのためにも特にメディアが注目する<何か>が必要なのです。
今回はワインビジネスでどのような"Story"を作り出したのかを<その1>とし、ゴルフビジネスの"Story"は<その2>と分けて掲載いたします。

ワインビジネスにおける"Make a Story"
 起業したばかりの小さなそして無名のワイナリーがビジネス的に成功するには何が必要でしょうか?
その年の最高評価を得るようなワインを作り出すことです。しかし、初めてワインを出荷する中で、実績も経験もないところがそのようなことができるのか、ブランドも経験もある著名な数多くのワイナリーが満を持して評価を取りに来る中で、どうするかが鍵となります。

イリーのワイナリーには次のような課題がありました。
1、ワイナリーがナパという最適地ではなく、ワインには不適と思われてい
  る南カリフォルニアで作られたワインである点。
2、ワインの出荷が初めてで、全く実績がない点
3、広告予算も販売促進費用もほとんどなく販売のチャンネルもない点

まさに三重苦、逆境の中からのスタートです。このような状況を打破し、目的を達成するには正に逆転満塁さよならホームラン的な劇的な出来事があることが必須です。
広告予算も販促費もないに等しいのであればメディアの力を最大限活用する必要があります。これが本当のPR活動であり、ここに活路を見出したのです。
メディアが興味を持って記事にするものは…
*業界として初めてのもの
*賞を受賞するもの、No.1の評価を得たもの
*人々が興味を示す事実がある

さて、このような逆境を上手にそれをバネとして飛躍したのですが、イリーはどうやってそれを達成したと思いますか?

*No.1プライオリティ(最優先課題)ですが、まず<最高品質のものを創る>ことです。ワインは毎年その出来栄えが微妙に違うために、醸造家の腕前が大きく左右します。そのためにナパでトップと言われた人材を醸造の責任者として来てもらい、彼の手腕にかけたのです。
同時にその年のワインの評価を下すには著名なワイン評定者やワインの専門誌などの評価です。イリーは彼らがどのような基準でワインの良し悪しを決定るのかその傾向を調査して、彼らの好みの味、香り、色、ふくよかさを持ったものを狙って造ることにしてそれを実行したのです。
評価は公平を来する必要があるので、品評会に出展されたものはラベルを剥がした状態、ブラインドテストで行われるので、実績がないところでも品質がよければ正しく評価されるのです。
ここで高い評価を得たのです。

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賞を受賞するほど高い評価を得たワインは「誰がどこで作ったもの」か話題になります。老舗で著名なところであれば「なるほど、さすがですね」となりますが、ワイン醸造には不適と思われているところで最高レベルのワインができることは、ワイン業界にとって大きなニュースです。どうやってそんなところでこのような優れたものができたのだろうか、いったい誰がそれを達成したのか、ですね。

*初めてのもの、というハンディキャップを逆手にとったのです。
これがイリーのビジネスマンとしての才覚だと思うのですが、このようなことを見抜いての南カリフォルニア、テメキュラという土地でのワイナリーを開設した意味があるのです。事前に綿密な調査をしてナパに匹敵するブドウの育成適正地があり、まだ誰もそこでワイナリーを開設していない事実を掴んだ時、成功へのシナリオがイリーの頭の中でイメージできたのです。
もう一つ初めて、という要素に、ニューヨークのトップビジネスマンが、たった一人で、未経験のワインビジネスに参入した、という事実です。
大きなリスクを背負った中で「何が、彼をそうさせたのか」は誰もが知りたいところです。

これだけでも十分ニュース素材としての価値は十分あるのですが、イリーはワイン好きが高じてワイナリーを始めたのではなく、一つのビジネスとして全くの素人でもしっかりとした戦略、製品を持つことで実績を積み上げ、一定期間内にその業界においての然るべきポジションを獲得できればビジネスは成功した、ということを実証したかったのです。イリーはその期間を15年と見積もっていたのですがなんと9年で達成したのです。

PR活動に力を入れることを実践しているイリーは、評価を不動のものとするような決定的なニュース素材を絶えず探していました。それはかなりの著名人がキャロウェイワインを「これは凄い、素晴らしい出来だ」と評価することで大きなニュースになることを狙っていたからです。

ワインはまだヨーロッパ産が最高級レベルという評価の中で、イリーはヨーロッパの著名人、それもトップクラスの賓客が米国のワインの美味しさを認めることで、評価が変わる、それをキャロウェイのワインでできるならと考えていたのです。
いくつもの賞をとった後、外国の貴賓が米国に招待されて来る人物、日にちを調べていたのです。彼らが晩餐会や昼食会に招待された時米国製の最高品質のワインをお出しすることは、世界的にはまだ評価の低かった米国産のワインの評価を変える絶好の機会で、全米ワイン協会もこのチャンスを狙っていたのでした。
1976年英国のエリザベス女王陛下がニューヨークでの昼食会に招待された中でキャロウェイワインが米国を代表するワインとして選ばれたのです。

全米ワイン協会はその年賞を受賞し評価の高かったいくつものワインの中から「これが今米国ワインの代表として女王陛下にお出しすべきもの」としてキャロウェイワインを選んだのです。
そして、米国ワインの評価を高める戦略を練っていたのです。
女王陛下は昼食会の時はワインを飲まれるのですが、儀礼的に1杯だけと決めていたようです。そこで、サーブする人に「このワインはいかがですか?」と女王陛下に聞くように依頼していたのです。もし「とても美味しいわ」という評価を得たら、「もう1杯いかがですか?」とお勧めするように、と。
結果は「もう1杯いただくことにします」と米国製ワインを2杯お召し上がられたのです。
そして、昼食会の途中、女王陛下の動向を注視している多くのメディアが集まるメディアルームにサーブした人間に「昼食会はとても良い雰囲気で行われています。女王陛下は米国産のワインを大変気に入られたようでお代わりをなされました」と記者を前に速報的に状況を話したのです。
翌日のニューヨークタイムスをはじめとする新聞などが一面に「女王陛下、アメリカの無名のワインをお気に入り」という見出しでニュースとして報じたのです。   <New York Timesの新聞に掲載された写真>

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翌日、キャロウェイのワイナリーは何が起こったか想像できますよね。
これがイリーの考える"Make a Story"なのです。

最初にも書きましたがイリーが伝えたかったことは…
「厳しいビジネス環境・市場の中で競合他社に競い勝ち、市場でアドバンテージを取るには、顧客にとって興味深いストーリーを持ち、それを伝えることである。
それは製品そのものであっても、販売の方法であっても、製造の技術であっても製品のバックグランドとして輝くものであればあるほど、顧客は興味を示し、それを選択して購入するだろう。価格競争や広告宣伝活動から離れたところでビジネスを展開できるからだ」このことなのです。

現在は個人が一つのメディアでありSNSなどを使った口コミ効果がストーリーを作る環境ができていると思いますが、起業をするレベルであれば、しっかりと市場を注視し、消費者が何を求めているのか、それを作れば幸せを感じてもらえるのか、というポイントに焦点を当てて、どのような"Story"が消費者がそしてメディアが興味を持つかを塾考した上で戦略を立て、リスクをとって実行していく、ことが大切だ、と伝えています。

あなたは自分自身にどのような"Story"を用意していますか?

次はゴルフビジネスにおける<"Make a Story">を書きます。
お待ちください。

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