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大量の新製品を開発し続けるエレコムの常識破りの経営戦略とは?


世間一般には広く知られていないけれど、実は優れた業績を上げている企業は少なくありません。そうした高業績企業の裏には、必ず優れた経営戦略があります。

今回は、経営戦略の観点から、PC・スマホ周辺機器市場で高収益を持続的に実現しているエレコム株式会社を取り上げます。

エレコムの高収益体質

エレコムは、PCやスマートフォン関連の製品、アクセサリを販売するメーカーです。エレコムといえばマウスやキーボードが有名ですが、隠れた高収益企業の1つでもあります。

競合他社には、Buffaloブランドで知られるメルコホールディングスや、アイオーデータ機器があります。営業利益率で比較すると、エレコムが圧倒的に高収益であることがわかります。

PC周辺機器メーカーの営業利益率

なぜエレコムは高収益を維持できているのか、同社の経営戦略に迫ります。

キーワードは「多産多死」

エレコムの戦略をヒトコトでいうと「常に鮮度と競争力を保つ多産多死アプローチ」です。変化の激しい業界において、スピーディに市場の変化を捉えることを戦略のベースにしています。

PC・スマホの周辺機器市場の特徴は、製品ライフサイクルが極めて短いことにあります。新しい機器や規格が出てくると、既存の周辺機器はすぐに陳腐化するからです。たとえば新型のiPhoneが発売されると、古いスマホケースは途端に売れなくなってしまいます。

そのためエレコムは、年間で4,000程度の新製品を絶えず市場に投入し続けています。競合他社の新製品は年間300品目程度ですから、実に業界平均の10倍以上という驚くべき数で、わずか3〜4年で全製品を改廃しています。

エレコムの多産多死アプローチ

次に、多産多死アプローチを支えるポイントを整理します。

戦略を支える3つのポイント

多産多死アプローチを実現するためには、身軽さを追求することが不可欠です。投資が膨らんでしまうと、製品の改廃に見切りをつけることが難しくなるからです。身軽さを追求するエレコムの特徴は次の3つです。

第一に、エレコムは自社工場を持たないファブレスメーカーというポジションを選択しています。自社工場を持ってしまうと、自ずと工場の稼働率を維持することにリソースを割かざるを得なくなるからです。そうすると、製品の終売など工場の稼働率を下げかねない思い切った経営判断に踏み切ることが難しくなり、多産多死のアプローチは実現できません。

第二に、エレコムは製造委託先の企業との資本関係を結ばない方針を採っています。製品の鮮度と競争力を保つため、製造委託先についても柔軟に選択できるよう、固定的な関係を結ばないようにしているわけです。

第三に、エレコムは厳格な在庫管理を行なっています。平均在庫は1.5ヶ月程度に抑えられています。在庫が膨らんでしまうと、在庫消化に追われ新製品のスピーディな展開に支障が出てしまいます。ですからエレコムは競合他社の数倍以上の営業担当を配置し、家電量販店での販売促進策を進め、店頭在庫を低水準にコントロールしています。

まとめ

エレコムは、変化の激しい業界において、持たざる経営を追求することにより競争優位を獲得しています。

自らのヒット製品を陳腐化させることも厭わず、積極的な製品ラインナップの入れ替えるを進めることによって、持続的な高収益を実現しています。

今回は以上です。

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