#009 異色のドラッグストア「コスモス薬品」がキャッシュレスを導入しない理由
マツモトキヨシホールディングスとココカラファインの経営統合は、2021年10月を予定しています。両社の統合により、売上高1兆円を超えるメガドラッグストアが誕生する見込みです。
ドラッグストア業界の再編は、これまで大手企業が中小企業を買収する形で進んできました。マツキヨとココカラの統合は、ついに大手同士が統合するという意味で、業界再編が次のステージに入ったことを示すケースです。
前置きが長くなりましたが、そのような激動のドラッグストア業界で、極めて特徴的な戦略を採っている企業があります。それが、コスモス薬品です。
今回はキャッシュコンバージョンサイクル(CCC)の観点から、コスモス薬品の特徴を分析します。
キャッシュレスを拒否するコスモス薬品
上記はコスモス薬品と、ツルハホールディングス、スギ薬局のキャッシュコンバージョンサイクル(CCC)を比較した図です。
なんと、コスモス薬品のCCCは▲42.4日と大幅なマイナスになっています。
最も特徴的なのは、売上債権回転期間の差です。この背景には、コスモス薬品が原則キャッシュレス決済を導入していないことがあります。その結果、売掛金の金額は売上高の0.06%という驚きの低水準です。
また、コスモス薬品はEDLP(Everyday Low Price)という低価格戦略を採ってます。キャッシュレス決済を導入しない理由として、キャッシュフローの改善と、支払手数料などの販管費を抑える狙いがあります。
同社のWebサイトには、企業戦略が以下のように記載されています。
毎日安い「Everyday Low Price」戦略(現金正札販売)
あらゆるコストを可能な限り抑制し、良い商品を1円でも安くお客様に提供することで、地域のお客様に豊かな生活を提供してまいります。
ー コスモス薬品 企業戦略
運転資金の制約を受けないコスモス薬品
最後に、ドラッグストア各社のキャッシュコンバージョンサイクル(CCC)の推移をチェックします。
コスモス薬品が一貫してCCC▲40日前後を維持していることが分かります。ツルハHDやスギ薬局など競合企業が、CCC10日~20日で推移しているのと対照的です。
コスモス薬品は、キャッシュフローに強みがある為、運転資本増加の制約がありません。ですから、同社は有利子負債を増やすことなく年間100店舗近い新規出店を続けています。
今回は以上です。
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