武田薬品の大衆事業売却から見るDEレシオとは?
2020年8月24日に武田薬品工業が大衆薬事業の売却を発表しました。大衆薬事業を行う子会社の武田コンシューマーヘルスケアは、売上高608億円、営業利益128億円(営業利益率21.0%)と儲かっている事業ですが、なぜ売却したのでしょうか。
武田が大衆薬事業を売却した理由は、有利子負債の増加です。同社は2019年に同業のシャイアーを6兆円超の金額で買収しました。これは、過去に日本企業が行ったM&Aとしては最大規模でした。
シャイアーの買収により有利子負債が急増
上記は、武田薬品の純資産と有利子負債の過去20年間の推移です。
これを見ると、2000年代までは有利子負債がほぼゼロだったことが分かります。トレンドが大きく変わったのは、シャイアーを買収した2019年です。買収金額の多くを借入金で賄った同社は、6兆円近くの有利子負債を抱えることになりました。
企業の安全度を測る指標の一つに「DEレシオ」があります。これは、純資産の何倍の有利子負債を抱えているか?を表すものです。武田のケースで言えば、純資産の1.2倍の有利子負債を持っているということです。
DEレシオとは?
DEレシオとは、有利子負債を純資産で割ったものです。バランスシートでいうと調達サイド(右側)の構成を表す指標と捉えることもできます。
DEレシオの目的は、経営の安全度を測ることです。DEレシオをできるだけ低くすれば、倒産リスクを下げることができるからです。しかし一方で、純資産比率の高まりは資本コストの上昇にもつながります。
ですから、DEレシオは低ければ低いほど良いという単純なものではありません。
とはいえ、武田の経営陣はシャイアー買収後の有利子負債の大きさを経営課題と捉えていました。ですから、今回「非中核事業」に位置付けられた大衆薬事業の売却につながったわけです。例えそれが黒字事業だとしても、です。
今回は以上です。
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